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[ニュース分析]板門店から始まった平和の道程、そして“ハノイの春”

登録:2019-02-26 07:28 修正:2019-02-26 17:44
朝米首脳会談D-1 
戦争後米国と国交を結んだベトナムで 
朝米、首脳会談開き、“終戦宣言”について協議 
板門店-シンガポール-平壌の平和の旅 
ハノイは脱冷戦の新たな出発点に
戦争の危機からハノイの春//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員とトランプ米大統領が27~28日、ベトナムのハノイで再び会う。昨年6月12日、シンガポールで初めて顔を合わせて以来、8カ月ぶりのことだ。金委員長はシンガポールでトランプ大統領に「あらゆることを乗り越えて、ここまで来た」と述べた。シンガポールでの会談後、朝米が非核化と相応の措置をめぐり“冷戦”を繰り広げたことを考えると、ハノイでの再会も「あらゆることを乗り越えて」実現したと言える。

 ハノイにはもう春の知らせが届いている。昨年この時期に幕を閉じた平昌(ピョンチャン)冬季五輪は、朝鮮半島を覆った冷戦の氷を溶かし、「板門店(パンムンジョム)の春」(4・27南北首脳会談)をもたらした。平和の気運が「シンガポールの夏」(6・1朝米首脳会談)と「平壌(ピョンヤン)の秋」(9・19南北首脳会談)につながった。「ハノイの春」は朝鮮半島における冷戦の解体に向けたもう一つの出発点だ。

■ハノイの春、戦争の終息に向かう

 シンガポール首脳会談後、朝米が歩んできたのは平坦な道のりではなかった。互いに望むことを交換するには信頼が足りなかった。朝米は、新たな関係の樹立▽朝鮮半島における恒久的平和体制の構築▽朝鮮半島の完全な非核化という包括的目標に合意したが、後続協議で実質的な履行案を作りだすことはできなかった。

 米国では非核化に向けた北朝鮮の意志に対する疑問が再び頭をもたげた。シンガポール首脳会談から1カ月後、履行案を協議するために平壌を訪れたマイク・ポンペオ米国務長官は、核申告と検証を掲げた。北朝鮮はこれを「強盗的要求」と非難した。米国はポンペオ長官の後続訪朝を、前日になって突如取り消した。朝米交渉は膠着状態に陥った。

 ハノイは昨日の敵が今日の友になった地だ。ベトナムは15年間戦争を行った米国と、1995年に国交を結んだ。米国と共に参戦した韓国とも、1992年に国交を正常化した。金委員長とトランプ大統領の交渉テーブルには、非核化措置と共に、朝鮮半島の戦争状態を終わらせるための終戦宣言カードが並べられている。

■平壌の秋、朝米の膠着に突破口を作る

 朝米を再び交渉のテーブルに呼び寄せたのは、9・19平壌南北首脳会談だった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金委員長は、平壌で朝鮮半島の完全な非核化という目標を再確認した。非核化に対する金委員長の意志を疑う米国に向けた約束だった。文大統領は5・1競技場に集まった15万人の平壌市民の前で、「白頭から漢拏まで美しい我が山河を、永久に核兵器と核脅威のない平和の基盤にして、後代に残そう」と誓った。

 金委員長は、非核化措置でも具体案を提示した。「米国が6・12朝米共同声明の精神に基づき、相応の措置を取れば、寧辺(ヨンビョン)の核施設の永久廃棄のような追加的な措置を取る用意がある」と明らかにした。寧辺の核施設の廃棄という非核化措置を示すことで、米国の相応の措置を求めたのだ。寧辺の核施設の完全な廃棄は、朝米の非核化交渉で一度も踏み込んでいない禁断の領域だ。

 金委員長の提案は朝米交渉の再開につながった。ポンペオ長官が10月7日に平壌を訪れ、金委員長と再び面会した。シンガポールでの朝米首脳会談以来、4カ月ぶりに実現した高官級会談だった。ポンペオ長官はこの日について「非常に成功的な朝」だと語った。

 非核化に向けた金委員長の意志は、今年の新年の辞でも繰り返し強調された。金委員長は「完全な非核化に向けて進むというのは私の確固たる意志」だとし、「いつでもまた米大統領と向かい合う準備ができており、国際社会が歓迎する結果を作るために努力する」と約束した。金英哲(キム・ヨンチョル)労働党副委員長が数日後、ホワイトハウスを訪れ、トランプ大統領に金委員長の親書を届けた。トランプ大統領は翌日「我々は2月末にまた会うことにした」とし、2回目の朝米首脳会談の開催を公式化した。

■シンガポールの夏、炎と怒りを鎮める

 南北が平壌首脳会談を通じて2回目の朝米首脳会談を実現させたのは、シンガポールでの朝米首脳会談を控えて起きた状況とも類似している。トランプ大統領は昨年5月24日、「最近の談話文で明らかになった激しい怒りと公開的な敵対感を見る限り、今回の会談を行うのは不適切だと考える」と述べ、突然首脳会談の取り消しを宣言した。北朝鮮の外務省関係者が米国の「先非核化の要求」を激しく非難した直後だった。文大統領と金委員長は3日後、板門店で第2回南北首脳会談を開いた。南北は、朝米首脳会談の開催に向けた金委員長の意志を再確認することで、状況を元に戻した。

 北朝鮮と米国はシンガポール首脳会談の前まで、前例のない“言葉の戦争”を繰り広げた。米国が「最大の圧迫と関与」を公言し、軍事的選択の可能性を示唆したことに対し、北朝鮮は米国も決して無事ではいられないと対抗した。トランプ大統領が「炎と怒り」に言及してから、日を追うごとに険悪な戦争危機説が朝鮮半島を覆った。

■板門店の春、朝鮮半島における冷戦の解体を宣言する

 危機を鎮めたのは平昌五輪を平和五輪にした南北関係の進展だった。金委員長は新年の辞で、平昌五輪に代表団を派遣する意向を示した。金委員長は、平昌五輪期間に妹の金与正(キム・ヨジョン)労働党中央委員会第1副部長を特使として送り、文大統領はチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長を団長とする特使団を派遣した。南側特使団が非核化に向けた金委員長の意志を確認したことで、朝鮮半島情勢は対決から対話へと舵を切り始めた。

 文大統領と金委員長の4・27板門店首脳会談は、朝鮮半島における冷戦の解体に向けた巨大なドラマの始まりだった。両首脳は手を携えて、軍事境界線を軽々と超えた。そして「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」を通じて、「朝鮮半島に二度と戦争を起こさず、完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現する」と約束した。休戦協定締結65周年を迎え、年内に終戦宣言を行い、停戦協定を平和協定に切り替えるという共同目標も提示した。文大統領は金委員長の隣で「私たちは決して後戻りしない」と誓った。

ユ・ガンムン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/883565.html韓国語原文入力:2019-02-25 22:39
訳H.J

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