「南北鉄道・道路連結事業には『東アジア鉄道共同体』という北東アジア多国間協力プロジェクトのビジョンがある。非核化と組み合わせる制裁緩和の相応措置というカードにおいて、南北経済協力に限られた金剛山(クムガンサン)・開城(ケソン)事業とは異なる強みがある」。北東アジア交通協力専門家のアン・ビョンミン交通研究院先任研究委員は、南北鉄道・道路連結事業についてこのように説明した。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領がドナルド・トランプ米大統領と電話会談で、「米国の負担を減らす道」だとして、「南北鉄道・道路の連結から南北経済協力事業まで求められるなら、その役割を引き受ける覚悟」を示したことに対する分析だ。キム・ウィギョム大統領府報道官は「トランプ大統領が(金正恩国務委員との談判で非核化の相応措置として)使うカードの種類を韓国が増やすことができるという意味」だとし、「観点の移動」だと述べた。
キム報道官は発表文に「鉄道・道路の連結」を明記した理由は明らかにしなかったが、そこには隠された狙いがある。文大統領は昨年の光復節記念演説で「鉄道と道路の連結は朝鮮半島の共同繁栄の始まり」だとしたうえで、「北東アジア6カ国と米国が共に進める『東アジア鉄道共同体』を提案する」と述べた。2回目の首脳会談を控えた朝米を含め、韓中ロ日など6カ国協議参加国を包括する多国間協力プロジェクトだ。
この“拡張性”が重要だ。「非核化と制裁緩和のパズル」で頭を悩ませている朝米双方に、解決策を模索する糸口になるからだ。米国は“国際制裁レジーム”を維持しようとしている。非核化圧迫の手段として有用性と共に、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の非核化への意志を疑う国内世論を意識したアプローチだ。一方、“経済への集中”を新たな戦略路線として採択した金委員長にとって、南北経済協力を越えて、中国など国際社会とも経済協力の道を開く糸口が切実だ。多国間協力プロジェクトに発展する可能性を秘めた鉄道・道路事業が接点になることもある。事情に詳しい消息筋は21日、「経済協力事業を制裁緩和カードに使う場合、金委員長の立場では、金剛山・開城よりも鉄道・道路事業がもっと魅力的だろう」とし、「南北中あるいは南北ロなど、北東アジア多国間協力の可能性があるからだ」と指摘した。
鉄道・道路事業を“制裁レジーム”の枠組みの外で進められる根拠もある。「非商業的で、利潤を創出しない公共インフラ事業」は「事案別に(対北朝鮮制裁)委員会の承認」を前提に可能だと規定した国連決議第2375号18条だ。「朝中水力発電インフラ事業」や「ロシア産石炭の輸出だけのための朝ロ羅津-ハサン港湾・鉄道事業」はすでに制裁対象ではない。鉄道・道路事業を「多国間協力プロジェクト」に発展させるために、「北東アジア全般の経済協力を拡大するのに有利な環境づくり」という「朝米共同コミュニケ」(2000年10月12日)という内容と「多国間経済協力の約束」という6カ国協議9・19共同声明(2005年)第3条を「国際的支持」の根拠として援用することもできる。
トランプ大統領は20日、ホワイトハウスで行った会見で「私は制裁を解除していない」としながらも、「私はそのように(制裁解除・緩和を)したいと思っているが、相手側(北朝鮮)が意味ある何かをしなければならない」と述べた。彼が「制裁緩和」の可能性を示唆したのは、第2回朝米首脳会談の日程が決まってから初めてだ。文大統領と通話会談直後という事実に注目する必要がある。政府高官は「制裁緩和や相応の措置と関連し、以前よりも幅が広がった言及」だと評価した。