昨年、南北が結んだ軍事合意によって、陸海空での敵対行為が止まった。非武装地帯にある監視警戒所(GP)の試験的撤収も終わった。ただし、多くの人々の関心を集めている民間観光客の板門店(パンムンジョム)の自由往来や南北軍事共同委員会の構成などについては、今のところ進展が見られない。先月初めに発表される予定だった韓米合同軍事演習の実施の可否についても、まだ確定していない。朝米首脳会談を控え、軍事的緊張緩和に向けた作業がスピード調整に入った格好で、首脳会談後に再び加速化するかどうかに関心が集まっている。
20日、韓国軍筋の説明によると、韓米軍当局は毎年4月に大規模で実施してきた合同野外機動訓練「トクスリ訓練」の規模を「大隊級以下」に調整し、年内に実施する計画だという。規模が縮小されただけに、北朝鮮が敏感に反応してきた米国の戦略資産が展開されないという点で、これまでの演習とは異なる。韓米が室内で「ウォー(war)ゲーム」方式で進めていた大規模合同指揮所演習(CPX)「キーリゾルブ」は、期間をこれまでの2週間から10日程度に短縮して実施される見込みだ。韓米当局が実施するコンピューター基盤の室内練習と野外訓練の期間と規模が共に調整されるわけだ。特に韓米は、北朝鮮を刺激しないために、「キーリゾルブ」演習とトクスリ訓練の名称を従来より中立的なものに変える案も協議している。国防部は「韓米が練習および訓練の規模や方法、期間を調整しており、適切な時期に発表する予定だ」と明らかにした。ハノイ首脳会談に及ぼす影響を懸念し、首脳会談後に具体的な演習計画を発表するものと見られる。
また、南北は9月の平壌(ピョンヤン)首脳会談当時、南北と国連軍司令部の3者協議体を構成し、共同警備区域を非武装化した後、民間人の自由な往来を認めることで合意した。南側の一般市民も、板門店(パンムンジョム)北側地域の板門閣(パンムンガク)や統一閣を自由に見学できるようになるかに関心が集まった。しかし、合意から5カ月が経っても何の知らせもない。共同警備区域の自由往来のためには、現在共同警備区域を管轄する国連軍司令部(米国)と実質的な管理を担当している韓国軍当局、そして北朝鮮軍当局が「共同勤務規則」に最終的に合意し、どのように合同勤務警戒所を運用して、民間観光客の自由往来を保障するかを決めなければならない。
これと関連し、軍事分野の合意履行に向けた南北協議状況に精通する軍関係者は「現在、南・北・国連軍司令部が共同管理機構を運営する方法について多少異なる立場を示している」とし、「共同勤務規則を最終調整中だが、それに合意しなければ、監視警戒所の運営方式と民間人の自由往来の動線も組むことができない。南・北・国連軍司令部がそれぞれ作成した守則案を提出したが、これを一つの守則にするため、文言を一つ一つ調整するのに時間がかかっている」と話した。
例えば、現在非武装地帯内にある共同警備区域に入るためには、国連軍司令部の承認が必要だが、今後民間人の自由往来のための承認を与える主体を誰にするのかなどについて、まだ朝米が意見の隔たりを埋められずにいるという。1953年の停戦協定締結後、原則的に国連軍司令部が共同警備区域を管轄しているが、事実上、南側の軍当局が同区域を実質管理しているだけに、北側は南北が主体になって民間人の自由往来を保障すべきという意見を示したという。「南と北、国連軍司令部が互いに少しずつ譲歩しなければ、問題を解決できない」というのが軍関係者の説明だ。2回目の朝米首脳会談がこうした対立を和らげる可能性もある。
一方、南北は昨年末まで監視警戒所(GP)の11カ所を撤収し、今後、非武装地帯内にある南北の監視警戒所をすべてなくすことを目標に定めた。9・19軍事合意で構成することを約束した南北軍事共同委員会で、同問題を論議するものと見られていた。ところが、国防部は「現在、軍事共同委の構成と運営について文書交換方式などで(北側と)協議を進めている」と発表しただけで、具体的な進行状況については口を閉ざした。こうした状況で20日、軍消息筋は「軍事共同委の開催時期が遅れれば、残りの監視警戒所の撤収問題は、南北が将官級会談などを開いて協議する可能性がある」と話した。国防部が、朝米首脳会談が終わり金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長のソウル答礼訪問が行われる直前に南北軍当局が会談を開く可能性も排除していないということだ。朝米会談の直後、南北が会談し、金委員長の答礼訪問の際に発表する追加の軍事的緊張緩和措置を話し合う可能性が十分にあるという意味でもある。