本文に移動

ソウル高裁、アン前知事に懲役3年6カ月の実刑判決

登録:2019-02-02 06:43 修正:2019-02-02 11:58
ソウル高裁、「威力行使されなかった」という1審判決を覆す 
裁判所「アン前知事が権力的上下関係を利用して犯行」
アン・ヒジョン前忠清南道知事が今月1日午後、ソウル高等裁判所で開かれた2審の判決公判に出席するため、法廷に向かっている=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 道知事の地位を利用して秘書に性的暴行を加えた容疑で裁判にかけられたが、1審で無罪を言い渡されたアン・ヒジョン前忠清南道知事(54)が、2審で懲役3年6カ月の実刑を言い渡され、法廷拘束された。裁判部は「アン前知事が権力的上下関係を利用し、犯行を行った」とし、「業務上威力はあったが、行使されなかった」という1審の無罪判断をすべて覆した。

 ソウル高裁刑事12部(ホン・ドンギ裁判長)は1日、被監督者姦淫などの容疑で起訴されたアン前知事に懲役3年6カ月を言い渡した。裁判部は性的暴行被害者の反応は人によって異なる可能性があるという最高裁判所の「性認知感受性」の判例を引用し、「被害者の供述には主要部分において一貫性がある。非合理的だったり、矛盾する部分がない」として、このように判決を下した。裁判部は「被害者が抵抗しなかった」というアン前知事側の主張に対し、「反復的な性暴力犯行にもかかわらず、その事実を明らかにできない被害者としては、性暴力の事実が知られること自体に羞恥心を感じていたと思われる」と判断した。

 一方、裁判部は、アン前知事の供述について「信じがたい」と述べた。裁判部は「被告の地位や権勢は、被害者の自由意志を充分に制圧し得た。被害者が随行秘書として権力的上下関係に置かれており、積極的に抵抗できないことを利用して姦淫した」と指摘した。さらに「自分を抱きしめてほしいと言ったり、ベッドに連れて行く行為は、積極的な有形力行使と言える」と判断した。

 昨年11月29日の最初の公判準備期日からはじまり、裁判所は2回の公判準備期日、3回の公判期日を開いて双方の主張に耳を傾けた。被害者に対する2次加害を防止するため、裁判はほとんど非公開で行われた。被害者キム・ジウン氏を含め7人に対する証人尋問が行われ、1審ではなかったアン前知事に対する被告人尋問も進められた。

 検察は先月9日、アン前知事に1審と同じ懲役4年を言い渡すことを裁判所に要請した。「この事件は典型的な権力型性犯罪で、地位と権勢を利用して被害者の性的自己決定権を侵害したなら、処罰されるのが法の下の平等」だと、求刑の理由を明らかにした。キム・ジウン氏は弁護士を通じて、「いくら力の強い権力者でも、自分が持つ威力で人間が人間を搾取することが二度と起きないようにしてほしい」と訴えた。最終陳述に臨んだアン前知事は「道徳的、政治的責任を感じるが、私が経験した事実は告訴人の主張と相反するものだ。いかなる場合でも、自分が持っている力で相手の人権を奪ったことはなかった」と主張した。

 アン前知事の性暴力疑惑は昨年3月5日、キム・ジウン氏の告発で世に知られた。キム氏の告訴でソウル西部地検が捜査に着手した末、アン前知事は2017年7月から昨年2月まで、ロシアやスイスの海外出張地などでキム氏を業務上の威力を利用して4回姦淫し、1回醜行(セクハラ)しており、5回にわたって強制わいせつ行為をした疑いで裁判にかけられた。

 昨年8月14日、アン前知事事件を審理した1審裁判部は、アン前知事のすべての容疑に無罪を言い渡した。当時、ソウル西部地裁刑事11部(チョ・ビョング裁判長)は「アン前知事と被害者キム・ジウン氏が業務上の威力関係にあることは認めるが、アン前知事が威力を行使して姦淫したという証明が不十分だ」として、無罪と判断した理由を明らかにした。さらに、キム氏が積極的に抵抗しなかったことなどを根拠に、キム氏の供述に信憑性が欠けると判断した。これに対し、市民社会を中心に「威力は存在と行使を区分できない」、「裁判部が“被害者らしさ”にとらわれ、誤った判断を下した」などの批判が相次いだ。

コ・ハンソル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/880889.html?_fr=st1韓国語原文入力: 2019-02-01-22:52
訳H.J

関連記事