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相手が拒否示したのに性関係がなされれば処罰「ノー・ミーンズ・ノー法」要求が再燃

登録:2018-08-16 09:30 修正:2018-08-16 15:40
安煕正、一審無罪判決の悪影響 
被害者が逆に「拒絶の真正性」を立証しなければならない状況に 
 
「相手が拒否した性関係を強要した場合は処罰」 
立法化を求める声が高まり 
米国の一部と欧州ではすでに法制化
性暴力容疑で起訴された安煕正前忠清南道知事が一審で無罪判決を受けた14日、ソウル麻浦区のソウル西部地裁前で「安煕正性暴力事件の合同対策委員会」が記者会見を開き、裁判所の無罪判決を糾弾している=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 「(秘書として)仕事をしている時、断ったり嫌だとは言えないので、私がその時もじもじしながら困ると言ったのは、私にとっては最大限の防御だった。最大限の拒絶であり、知事はそれを知っていたはず」

 安煕正(アン・ヒジョン)元忠清南道知事から性暴力被害を受けたと訴えたキム・ジウン氏(33)が、3月に放送に出演し、自分は安前知事の指示を拒否できない権力関係に置かれていたと打ち明けた言葉だ。キム氏の言葉は拒絶の意思表示だろうか、そうではないのだろうか?

 安前知事に無罪を言い渡した裁判部は「被害当日夜、一緒にワインバーに行き」、「帰国後に安前知事と同じ美容院に行った」などの状況をあげ「最大限の防御」をしたというキム氏の供述を受け入れなかった。被害者が「拒絶の真正性」を立証しなければならない状況に追い込まれ、結局キム氏は立証に失敗した。

 14日、ソウル西部地裁刑事11部(裁判長チョ・ビョング)が下した安前知事への無罪判決は、権力型性暴力を判断する韓国の司法体系がいかに脆弱で後進的かをそっくり示して見せた。

花火フェミアクションのメンバーが14日午後、ソウル麻浦区のソウル西部地裁前で集会を開き、安煕正前忠清南道知事に対する無罪判決を糾弾している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 裁判部は、核心争点だった「業務上威力」が行使されたかを判断しながら、通常の性暴力事件のように被害者の拒絶がどれほど確固としていたのか、安知事が具体的にどのような威力を行使したのかに注目した。強姦容疑は「抗拒不可能」状態になるほどの暴行と脅迫がなければならず、準強姦は酒に酔って「気を失えば」認定されるといった判断と大差なかった。持続的な権力関係が性暴力につながる可能性がある事案に対して、図式化された「物理的抵抗や被害の立証」を要求したわけだ。「ならば銀粧刀(朝鮮時代に女性が護身用に身に着けた懐刀)でも抜くべきだったというのか」という女性界の批判が絶えない理由でもある。チャンイム・ダヘ韓国刑事政策研究院副研究委員は「裁判部は『威力』という行為手段を解釈するにあたって、無形の威力は見ず有形の威力である暴行・脅迫だけで判断した」と指摘した。

 裁判部が「現行法では安前知事を処罰しがたい」とし、法体系の不備を指摘したことをめぐっては「立法部まかせ」という批判もある。司法部が積極的な法解釈で判例を変更し、変化を引き出す場合も多いのに、特に性暴力犯罪には狭小な見解を維持しているという指摘もある。

 今回の判決をきっかけに、女性界では「ノー・ミーンズ・ノー(No Means No)法」の立法化が急がれるという意見が提起されている。保守的な司法部の法解釈が「MeToo運動」が追求した性平等の指向性を妨げているため、もっと根本的な解決策を模索しなければならないということだ。「ノー・ミーンズ・ノー」は、どんな環境かを問わず、相手が拒否の意思を示したにもかかわらず性関係が成立した時、これを処罰する内容だ。米国の一部の州とカナダ、欧州の国々は性的暴行犯罪について「ノー・ミーンズ・ノー」をすでに法制化した。「イエス・ミーンズ・イエス(Yes Means Yes)」は一歩進んで、相手の積極的同意がない性関係を強姦として処罰する規定だ。スウェーデンは最近、「MeToo運動」の影響で明示的な同意のない性関係を強姦とみなす内容の法案を通過させた。

 職場内セクハラ被害者を弁護しているある弁護士は「性関係の途中でも相手がやめてほしいと言った時に中断するのが性的自己決定権を尊重する態度」だとし、「ノー・ミーンズ・ノー法が立法化されれば、物理的で積極的な抵抗だけが抵抗ではないという認識が広がるだろう」と話した。韓国性暴力相談所付設研究所ウルリムのキム・ボファ責任研究員も「相談を受けていると、できるかぎりの拒否の意思を十分に明らかにしたにもかかわらず、加害者が無視する場合が多い。相手の拒絶の意思表示に必ず耳を傾けるのが常識にならなければならない」と、ノー・ミーンズ・ノー法の立法化を力説した。

 政界でも今回の判決後、関連法律である刑法改正の動きが広がっている。民主党のソン・ギホン法制司法委員会幹事は「現在の法では(威力による性的暴行を)証拠として認めるのが難しい構造」だとし、「すでに提案された刑法改正案があるので、不合理な点は早く改正するなど、立法的に解決しなければならない」と話した。自由韓国党も法改正に同意している。ユン・ヨンソク党代弁人は「安前知事の判決には、現行法が不備のため処罰は難しいという趣旨が含まれており、法的な不備を補完する」とし、「変化する時代の状況に合わせて女性の人権を保護し、性暴力・セクハラを防ぐ方向に、法制司法委員会・女性家族委員会など常任委で法改正が議論されるだろう」と話した。正しい未来党は刑法第297条の改正に向け、国会立法調査処に依頼書を提出した。キム・スミン議員は「刑法の強姦罪に該当する範疇に『明示的な同意なしに』あるいは『相手の不同意の意思にもかかわらず』などを追加し、『強姦』という言葉の代わりに『性的暴行』と表現を変える方向で改正案を提出する計画」だと明らかにした。現行の刑法297条は、暴行または脅迫で人を強姦した者は3年以上の有期懲役に処するとされている。

しかし、似たような内容の法改正案は「MeToo運動」が活発だった上半期にもあった。3月にチョン・ジョンベ民主平和党議員が非同意の姦淫に対する解釈を幅広くできるようにした刑法(第303条)改正案を、4月には同党のチェ・ギョンファン議員が強姦罪の成立範囲を拡大解釈できるようにした刑法(第297条)改正案を発議した。しかし、これまで当該常任委である法制司法委員会で十分な論議はなかった。

これに先立ち、3月にチョン・ヒョンベク女性家族部長官は国会女性家族委員会に出席し、刑法の改正を約束したことがある。チョン・ヒョンベク長官はキム・スンヒ自由韓国党議員が「同意なしに性行為が行われたら強姦罪か」という質問に対し「強姦の範疇を広く規定して、犯罪とみなさなければならない」とし、「今後は積極的に法改正を推進する予定だ」と明らかにしている。

法務・検察改革委も6月「『暴行または脅迫』を強姦罪の成立要件と規定した刑法297条は、不平等な権力関係の中で発生する被害の状況と脈絡を看過しており、被害者の権利保障を妨げる」とし、「『被害者の拒否意思』を強姦罪の処罰基準にする案を積極的に検討しなければならない」と指摘したことがある。

チャン・スギョン、イ・ジョンフン、キム・テギュ、ソン・ギョンファ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/857764.html韓国語原文入力:2018-08-16 07:19
訳M.C

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