1996年6月4日、ハワイ近隣海上で開かれた環太平洋合同軍事訓練(リムパック)に参加した日本の海上自衛隊護衛艦「ゆうぎり」の20ミリ機関砲が火を噴いた。1分間に3000発を連射する無慈悲な砲撃に米海軍の攻撃機が墜落した。航空母艦「インディペンデント」から飛び立ったこの攻撃機は、訓練用標的を吊り下げて接近中だった。ゆうぎりが、標的ではなく曳航機に向けて機関砲を連射したのだ。
日本海上自衛隊の“悪夢”と呼ばれる事件だ。韓国のネチズンが「自衛隊眼湿(気の毒なという意味)伝説」として、自衛隊のとんでもない失敗を集めたサイトに行けば、この事件が必ず登場する。日本のネチズンが「防衛不祥事」として自衛隊のあきれた姿を皮肉るサイトにも確実に上がっている。(日本のネチズンは、韓国軍のとんでもない失敗やあきれた事故をまとめたサイトに『韓国軍の法則』という名前を付けている)
さらなる悪夢が続いた。海上自衛隊は、ゆうぎりの射撃失敗に対する責任を避けるため、機関砲の自動射撃システムの欠陥の可能性を主張した。しかし、調査の結果、当初から機関砲が曳航機を照準するよう設定されていたことが明らかになった。真の問題は、火力管制指揮官のミスと中間でこれを正せなかった盲目的な命令服従体系にあった。真実を早期に告白しなかった海上自衛隊に対する信頼は一層墜落した。
日本海上自衛隊の哨戒機が昨年12月20日「広開土大王艦」から追跡レーダー(STIR)を照準されたと日本政府が抗議して火がついた韓日間の軋轢が、一カ月を超えて続いている。23日「大祚栄艦」が日本の哨戒機に威嚇飛行されたと国防部が発表してからは、紛争の水準に上がった。こうした状況なら、当時の作戦を指揮していた日本海上自衛隊と韓国海軍のうち、どちらかが真実を隠していることは明らかだ。
今までに両者が出した証拠を見れば、日本の説得力が劣る。日本防衛省は21日、哨戒機が捉えたという“火器管制レーダー探知音”を公開した。「ピー」という音が18秒ほど連続するこの探知音は、標的を指向する追跡レーダーの特性を持っている。しかし、そこには追跡レーダーをいつ、どこで、どのように探知したかという基本的な情報がない。国防部が24日に公開した大祚栄艦のレーダー画面写真は、それに比較すれば具体的だ。レーダー画面には、日本の哨戒機が高度60~70メートルで飛んで来て、大祚栄艦の右舷に540メートルまで接近したことを示す数値が鮮明に表示されている。
しかし、今回の紛争がどちらか一方の証拠提示で解決されることを期待するのは愚かなことだ。岩屋毅・日本防衛相は「韓国が公開した写真を見た」としつつも、哨戒機の威嚇飛行を否定した。証拠として認定しないという話だ。日本防衛省がこれに先立って韓国との協議を中断すると宣言したことから、証拠提示と検証を通じて事実関係を明らかにする意志はないというメッセージだ。犯行を証明する“スモーキング・ガン”が出て来たとしても、法廷に立つことはないだろう。
ゆうぎりの真実が明らかになったのは、被害者である米国が日本と共に直ちに現場調査を始めたためだ。米日同盟の要求が迅速な調査と平和的な収拾を導いた。しかし、今回の韓日紛争で韓米日協力の中心軸である米国は、観察者に留まっている。状況が悪化すれば偶発的衝突まで広がりかねないにもかかわらず、対話と協力という儀礼的な話さえしていない。2015年の韓日慰安婦合意や、2016年の韓日軍事情報保護協定締結過程で、韓米日を括ろうという意図を強く投射した米国の態度に照らしてみれば、驚くべき変化だ。
米国の世界地図は中国を狙って描かれている。北朝鮮核問題が外交的交渉過程に入り、北東アジア戦略の焦点も北朝鮮から中国に移す環境が整ってきた。対北朝鮮レベルで韓日関係を管理しなければならない負担がそれだけ減ったためだ。さらに、中国をグローバルレベルで牽制するためには、米日同盟をインド太平洋に拡張しなければならない。韓日紛争がこうした構想の限界を越えないならば、米国は忍耐力を発揮する公算が大きい。米国の“戦略的忍耐”の中で、韓日間に軍事的軋轢が突出し、証拠物が行き来しているが、信頼は容易に回復しない“紛争の時代”が来ている。