「ご飯を食べて出ようとした時、郵便配達人から『火事だ』と言われました。韓国人の同僚と一緒に駆け出しました。故郷の母を思い出しました」
スリランカ人のニマルさん(39)は16日、ハンギョレとの電話で、昨年2月に火事が起きた家に飛び込み、一人暮らしの90代のおばあさんを救った状況を思い浮かべながら、たどたどしい韓国語でこのように話した。普段、自分にあたたかく接してくれる町のお年寄りのことが思い出され、ためらわず炎の中に飛び込んだという。ニマルさんはおばあさんを救出する途中、重傷を負った。首や頭、手首などに火傷を負い、肺に煙が入って呼吸障害になった。2年近く経った今でも咳がひどく、薬を飲んでいる。
ニマルさんは2011年、非専門就業(E-9ビザ)資格で韓国に渡り、ガラス工場、メッキ工場などで働いた。母親のガン治療費を工面するためだった。2016年7月、滞在期間が終わった後は、慶尚北道軍威郡(グンウィグン)のあるりんご農場で働いた。いつ追い出されるか分からない“不法滞在者”だったが、果樹園近くの家で火事が起こったという話を聞いて飛び込み、おばあさんを救助したのだ。ニマルさんはおばあさんを救った功労で、韓国の永住資格を持つことになった。法務部は13日に開かれた「外国人人権保護および権益増進協議会」で、出席委員の満場一致でニマルさんに永住資格を与えることを決めたと16日発表した。出入国管理法施行令は「犯罪・災害・災難・事故などから国民の生命および財産保護に大きく貢献した人」に永住資格を与えるよう定めている。ニマルさんはこの条項が適用され、永住権を得た初の事例だ。法務部は「刑事犯罪に全く関わった事実がなく、政府から公式に義傷者に指定された点、救助中に負った負傷を持続的に治療しなければならない事情などを考慮し、永住資格を許可した」と説明した。
ニマルさんの善行が知られてから、昨年3月、LG福祉財団は彼に義人賞を授与した。同年6月、保健福祉部も彼を「義傷者」と認めた。
ニマルさんの母親は昨年夏に亡くなったという。スリランカには体の不自由な父親と妻、娘(12歳)、息子(8歳)がいる。いまも果樹園で働いているニマルさんは、永住権を得て出入国が自由になった。「病を患っている父に会いにスリランカに行ってきます」。彼は韓国でずっと働きたいと話した。「いい会社を探しています。永住権ありがとうございます」。法務部は世界移民の日である18日、大邱出入国・外国人事務所でニマルさんの永住資格授与式を開く。