ムン・ジョンイン大統領府統一外交安保特別補佐官が、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長のソウル訪問について、「年内もしくは年明けにでも可能なのかは、朝米関係を踏まえ、少し見守らなければならない」と述べた。
ムン特補は10日午後、国家安保戦略研究院がソウルプラザホテルで開催した「非核化以降の朝鮮半島」国際カンファレンスで、「どの方向に進むかにかかわらず、補完的で好循環なものになると考えているため、これ(答礼訪問の時期)にあまりにも大きく意味づけする必要はない」と述べた。ムン特補はさらに「金委員長のソウル答礼訪問は世紀の決断といえる」とし、「1945年の分断後、北朝鮮の指導者が一度も南側を訪れたことがないため、実現すれば非核化と平和体制を越えて、南北関係において画期的な事件になるだろう」と強調した。
ムン特補は「当初、私たちの考えは、朝米が2回目の首脳会談を行って、それが成功すれば3者間で終戦宣言などを採択し、非核化と平和体制を同時に推進するということだった」とし、「その次に(金委員長が)ソウル答礼訪問をすれば、理想的なシークエンス(順序)になるだろうと考えた」と明らかにした。ただし、現在朝米関係において膠着状態が続いている中、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が第4回南北首脳会談を推進することになった状況は、それなりに“好循環”の役割を果たすことができるという分析だ。一方、ムン特補は「個人的には金正恩委員長がそのような(世紀的)決断を下し、ソウルを訪問すれば、役に立つだろう」と述べた。
この日学術会議に参加した他の専門家たちは、金委員長の年内答礼訪問には否定的な意見を示した。米国務省情報調査局北東アジア担当局長を務め、米国で最高の朝鮮半島専門家として知られるロバート・カーリン米スタンフォード大学国際安保協力センター(CISAS)客員研究員は、「(金委員長の答礼訪問の日程より)さらに重要なのは、なぜ金委員長が(答礼訪問を)ためらっているのか」だと指摘した。中国6カ国協議次席代表の楊希雨(中国国際関係研究所先任研究員)は「(朝米)両国が今(非核化-関係正常化交渉の)アプローチについてまだ妥協点を見出せずにいるようだ」と分析した。楊研究員は「非核化-検証-解体するという(米国の非核化ロードマップは)単純なロードマップ」だとしたうえで、これは北朝鮮が受け入れられないと主張してきた「古い方式」だと規定した。また、北朝鮮が提示した条件付き寧辺(ヨンビョン)核施設の永久廃棄案は「非常に革命的な象徴」だとしたうえで、「核心施設を解体して検証し、他の施設に移る過程で、相応の措置を取るのが公正だ」と付け加えた。
清華大学の楚樹龍教授も、朝米間の接点を見出せずにいる非核化・関係正常化の初期段階措置など、“順序”の問題について「行動が伴ってこそ信頼が構築できる」とし、北朝鮮がこの12カ月間核実験を中止したことは「真の非核化行動」だと強調した。また、北朝鮮が取った豊渓里(プンゲリ)の廃棄など一連の措置に対し、米国と国際社会が“インセンティブ”を提供すべきだと主張した。
一方、スタンレー・ロス元米国務省次官補(東アジア・太平洋担当)は「北朝鮮は信頼が少し必要だろう」とし、「非核化を望んでいるが、北朝鮮の完全な非核化は行われないだろう」と見通した。その一方で、非核化以降、朝米関係が正常化した場合、在韓米軍の駐留について「完全な撤退を意味するわけではないが、状況別に軍の態勢や同盟の方式も変わるしかない」と述べた。
米国側の専門家らは、これらの問題について話し合うためにも、朝米間の実務会談が必要だということで一致した。このような中、ムン特補は最近、朝米高官級会談と実務会談の開催が共に先送りになっていることについて、「(米国側では)チェ・ソンヒ外務副相や金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長に10回、20回以上電話をかけたが、平壌(ピョンヤン)から返事がないという。ニューヨークチャネルでも話しているのに、進展がない」と明らかにし、注目を集めた。
一時、朝米交渉の主要争点に挙げられた終戦宣言問題に関しては、楊研究院は「終戦宣言は北朝鮮の国内政治的に重要だ」とし、「終戦宣言をしてこそ、北側も『終戦になったから、経済開発に集中しよう』と住民と軍将官たちを説得できる。そうしてこそ、寧辺核交渉を始めることができる」と主張した。
この日会議に参加した米国と中国の専門家らは、口をそろえて現在を朝米関係や朝鮮半島の国際情勢において「歴史的な瞬間」と言いながらも、膠着状態が続いていることについて懸念を示した。カーリン研究員は「来年半ばまでに(朝米関係の改善を促す)十分なモメンタムが続かないかもしれない」とし、「この過程が後退する可能性もある。さらに努力を重ね、このモメンタムが維持されるようにすべきだ」と述べた。楚教授は「(現段階では)十分ではない」とし、「朝米間の信頼構築を通じてより多くの行動が必要だ。信頼構築のためには、具体的な措置が伴わなければならない」と述べた。