中国Y-8系列の偵察機と推定される軍用機が26日、何の通報もなく韓国防空識別圏(Korea Air Defense Identification Zone、以下KADIZ)に入った。国防部が今年、外部に公開した進入回数だけでも、1・2・4・7・8・10月に続き7回目で、公開していない無断進入はさらに多いという。中国が偶発的な衝突の危険を甘受して何の告知もなくこの区域に何度も出入りする理由は何なのか。
防空識別圏は、一国が自国の領空を守るためにその外郭に設定する一種の緩衝地帯だ。韓国は同区域での偶発的な衝突や事故を防ぐために、他国の軍用機が進入する際、事前に通知するよう要請している。しかし、中国はKADIZに軍用機を送りながら一度も通知しなかった。韓国政府はこれを韓国の領空に対する潜在的な威嚇であり侵犯と考え、毎回F-15K、KF-16などの戦闘機を飛ばしたが、中国の行為は繰り返されている。
中国は韓国政府に、軍用機のKADIZへの進入が(1)定例化された演習であり(2)国際法的に問題はないと主張する。防空識別圏は国際法的根拠が弱いため、完全に間違った主張とは言えない。ただ、国防部や外交部関係者の説明を聞くと、中国が偶発的な衝突の危険を知りながら、ほぼ1カ月に1回ずつ通知せずにKADIZに進入する背景を推定することができる。
現在、韓国、米国、日本は互いの防空識別圏を認めているが、中国の防空識別圏を認めていない。中国も同様に韓、米、日の区域を認めずにいる。中国が今年、7回も韓国と日本の防空識別圏に無断で進入したのは、韓国のKADIZや日本のJADIZを無力化しようとする思惑がある可能性が高い。
中国の軍用機が今年1月から今月までKADIZに無断で進入して飛行した経路は、離於島(イオド)西南方上空から大韓海峡を通過し、江陵(カンヌン)東方、鬱陵島(ウルルンド)西方で、ほとんどが離於島付近の空域から始まる。離於島付近の空域は、韓国だけでなく中国、日本がそれぞれ宣言した防空識別圏が重なる地点にあるが、中国は韓国と違い、離於島を自分たちの管轄だと主張する。これまで韓中は離於島付近の海上排他的経済水域をめぐる隔たりを埋められずにいる。中国がKADIZに無断で進入する背景には、離於島に対する権限行使を通じて長期的に紛争地域化する布石があるという解釈もある。
中国が韓国と日本、米国(駐韓・駐日米軍)など朝鮮半島周辺国の戦力態勢などの情報を収集するため、韓国と日本の防空識別圏に偵察機を送り、平均2時間ほど飛行したともみられる。亜洲大学中国政策研究所のキム・フンギュ所長は「中国が米日・韓米同盟を念頭に置いて、有事の際に自分たちの活動領域を熟知する次元の訓練を行い、存在感を誇示しているものと思われる」とし、「特に離於島付近は、大韓海峡を経て日本に行く戦略的に重要な通路」だと指摘した。
中国のKADIZ無断進入問題を解決する方法はないのだろうか。チョン・ギョンドゥ国防長官は先月19日、第5回ASEAN拡大国防長官会議で中国の魏鳳和・国防部長官と会談し、「空軍防空実務会議の再開を通じた空軍間の直通網の追加開設」などについて話し合ったという。中国に空軍の直通電話を設置して、相手の防空識別圏への進入を義務的に通知することを要求したわけだ。しかし、いまのところ中国はこれに対して積極的な反応を示していないという。