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与野党共に「すべての子どもに児童手当を」... 普遍福祉の火種が生き返る

登録:2018-11-05 09:33 修正:2018-11-05 11:12
予算戦争のなか児童手当に接点 

昨年は削減を主張した韓国党 
「少子化克服」掲げ全面支給に転換 

政府・与党・大統領府も「法改正で100%に拡大」
今年6月、ソウル西大門区南加佐1洞の住民センターで、ある夫婦が9月から児童1人当たり月10万ウォンずつ支給される児童手当を申請している//ハンギョレ新聞社

 「“金の匙”にまで児童手当を支給することはできない。予算の無駄遣いだ」

 自由韓国党のこのような主張に、共に民主党と国民の党も退いた。昨年12月4日のことだ。当時、与野党3党の院内代表は「所得水準90%以下の世帯」の満0~5歳の児童に限り月10万ウォン(約1万円)の児童手当を支給することで電撃的に合意した。当初、政府は満6歳未満のすべての児童に児童手当を支給しようとした。大統領選挙の時も、全党が児童手当てを公約に掲げていたところだった。しかし「普遍福祉」に向けた足取りは後退した。

 「小学校6年生(満12歳)まで所得水準とは関係なくすべての児童に児童手当を与えよう。3年以内に月10万ウォンを30万ウォンに引き上げる」。2日、自由韓国党は予算案関連の記者懇談会で、児童手当の全面拡大支給を宣言した。1年たって手のひらを返すように党の立場を変えたのだ。しかも、1年前より児童手当ての支給年齢と支給額まで大幅に拡大する案を持ち出した。

 自由韓国党予算決定特委幹事であるチャン・ジェウォン議員は「少子化問題を放置すれば、国の存廃問題とつながる可能性がある」と述べた。1年前と判断が変わった理由を記者が聞くと、自由韓国党のキム・ソンテ院内代表は「昔の話を取り出しては何も改善できない」とし、「少子化の克服を来年度予算執行の優先順位に置く」と説明した。

 続いて4日に国会で開かれた共に民主党と政府、大統領府間の高位協議会で、児童手当を現在の「所得水準の90%以下」から「100%」に拡大する法案を今定期国会で処理することで意見をまとめた。この場で民主党のホン・ヨンピョ院内代表は「自由韓国党のキム・ソンテ院内代表が児童手当の支給範囲を100%に拡大することを提案したことに対し、高く評価する」とし、「国家的課題である少子化問題を野党と十分に論議する用意がある」と述べた。民主党のホン・イクピョ首席代弁人は「ハンギョレ」との電話インタビューで「児童手当法を改正し、来年1月からすべての児童に支給させる」とし、「もし改正案の成立が遅れても、支給時期を来年1月に遡って適用する内容を法案に含めることにした」と明らかにした。

 これにより、来年から児童手当が「すべての児童」に拡大支給される可能性が高まった。児童手当は子育てに必要な費用の一部を国が負担し、子どもが健康に成長できるよう支援する所得保障制度の一種だ。「児童の基本権の保障」という側面からドイツ、スウェーデンなどではすべての児童に普遍的に児童手当を支給している。

 与野党が1年ぶりに意見を合わせるようになった背景がある。9月、初の児童手当支給を控えて世論がざわついた。所得上位10%を抽出するのに膨大な非効率を招いたためだ。国民は自らの所得と資産を証明するために多くの書類を出さなければならなかった。京畿道烏山市(オサンシ)に住むある子どもの親は、132件の書類を提出した。地方自治体の公務員は過重な業務に苦しんだ。

 韓国保健社会研究院などの推算によると、児童手当の支給対象となる所得90%以下(現在約220万人)を割り出すのにかかる行政費用(最大1600億ウォン=約160憶円)が、所得上位10%(約14万人)に追加で月10万ウォンの児童手当を支給するのに必要な予算(1230億ウォン=約123億円)よりも多い。これに対して城南市は、独自予算を投じて満6歳未満のすべての児童に子ども手当を支給した。

仁川市東区万石洞の勉強部屋「線路の横の小さな学校」で、子どもたちが勉強している。普遍的な児童手当の支給は「児童の基本権保障」という側面からアプローチされなければならない=カン・ジェフン先任記者//ハンギョレ新聞社

 国会で児童手当ての普遍的支給が合意される可能性が高まったが、児童手当の支給年齢と支給額をどの程度まで拡大するかは与野党が意見を集約しなければならない。政府は来年度予算案に満0~5歳の児童手当支給(所得水準90%以下基準)の予算として1兆9271億ウォン(約1940億円)の予算を確保した。自由韓国党は、満12歳以下の児童に月10万ウォンの児童手当てを支給すれば、来年にも約2兆3千億ウォン余りの予算が追加で必要になると推算している。

 東亜大学のナム・チャンソプ教授(参与連帯社会福祉委員長)は「自由韓国党が先頭に立って作った異常をようやく正常に戻しながら、雇用予算と南北経済協力予算を削減して児童手当に使おうという主張は厚顔無恥だ」とし、「野党の主張通りに小学6年生まで児童手当を3年以内に月30万ウォンずつ与えるには関連予算は年間13兆ウォンが必要だが、その金をどこで用意するのか、自由韓国党が政府・与党とともに増税論議に積極的に取り組まなければならない」と指摘した。紆余曲折の末、来年1月からは全国のすべての家庭に児童手当てが支給される制度が実施されることが確実と見られる。「普遍福祉」への道が遅まきながら開かれた。

ファン・イェラン、キム・ギュナム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/868791.html韓国語原文入力:2018-11-04 22:25
訳M.C

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