軍事機密を北朝鮮に渡した容疑などで拘束された顔認識技術企業代表のK氏(46)が、国家情報院がかつて自身に北朝鮮の主要人物の脱北と統合進歩党解体工作を要求した事実があると16日主張した。
キム氏の弁護団はこの日午後2時、ソウル市瑞草区(ソチョグ)のソウル中央地検前で記者会見を行い、K氏が書いた手紙を公開した。彼は手紙で、国家情報院の要員が今まで自身を絶えず管理してきたと明らかにした。彼は「北朝鮮の情報を要求し、自分を監視してきた(国家情報院要員)の『イ室長』、『クォン理事』、『チェ理事』の顔を鮮明に記憶している」として「イ室長は、さらに北朝鮮の金日成総合大学の情報センター高位関係者の脱北工作を提案したこともある」と主張した。
警察はこの高位関係者と電子メールで接触し、軍事機密を渡した容疑でK氏を拘束した。K氏の主張が事実であれば、国家情報院がK氏に脱北を誘導するよう要求した人物に、逆にK氏が軍事機密を渡したということになる。国家情報院の監視下にあったK氏が、国家情報院が注目していた北朝鮮人に不法に軍事機密を渡したというのは、常識的には納得し難いことだ。
また、K氏は手紙を通じて「(国家情報院が)汎民連、統進党をスパイが暗躍する組織という見方で規定し、私の過去の人脈に対する接近を要求した」とも明らかにした。国家情報院が統進党解体のためにK氏を情報部員として活用しようとしたという情況だ。K氏はこうした要求をかろうじて避けたと手紙に書いた。
K氏はまた、2014年1月ソウル市公務員だったユ・ウソン氏のスパイでっち上げ事件があらわれた以後、イ室長など国家情報院職員が「自分たちとの関係を秘密にするよう脅迫し(その事実を知らせた場合)民事・刑事上の責任を負うという誓約書を2014年に強要し書かせた」とも手紙で明らかにした。
K氏の主張の事実有無を立証するだけの証拠は出てこなかった。だが、ハンギョレと会ったK氏のある知人は「K氏が時々国家情報院の人と酒を一杯飲みに行くところだが、一緒に行こうと言っていた。だが、国家情報院の職員に会うということがちょっとためらわれて、一緒に行ったことはない」と話した。K氏と国家情報院との交流が実際にあったと推定できる内容だ。
キム氏は今月9日、ソウル庁の保安捜査隊に逮捕され、11日に拘束された。だが、ソウル庁保安捜査隊がK氏を拘束する過程で、K氏が送ってもいない携帯メールを「証拠隠滅の情況」として検察と裁判所に提出した事実が確認され、証拠ねつ造疑惑がふくらんでいる。問題の携帯メールには「7月22日午後3時にエアコン修理のため4時頃に自宅を訪問する予定です」などの内容が英語で書かれている。だが、ソウル庁保安捜査隊は、K氏が逮捕された後に夫人と連絡をしたいと言ってこの携帯電話を借りた間に、K氏がこういう「暗号」メールを共犯者に送り、証拠を隠滅しようとしたと疑われるという内容は、K氏の逮捕状請求書に含まれた。18日前に受信された携帯メールが、共犯に送った発信メールに化けたわけだ。警察はこの過程を「単純な錯誤」と明らかにしているが、K氏の弁護団は「意図的ねつ造」だと主張している。
この日、K氏の弁護団は記者会見で「検察は直ちにK氏の拘束を取り消すべきだ」と主張して、K氏の拘束過程で偽の証拠を提出したソウル庁保安捜査隊関係者を国家保安法の無辜ねつ造、偽計公務執行妨害、虚偽公文書作成、および同行使の疑いで告訴した。
K氏の弁護を引き受けたチャン・ギョンウク弁護士は「K氏が軍事機密を渡したと警察が明らかにした北朝鮮の高位関係者らは、K氏が2007年に統一部に公式に接触申告をした対象」と明らかにした。また「K氏はすでに2013年3月26日、ソウル中央地裁が発行した押収捜索令状により、自身の電子メールを押収捜索されている。ところがK氏の令状に指摘された犯罪事実は、すべてそれ以前のことだ。北朝鮮に渡したのが本当に軍事機密ならば、その時に押収された証拠を根拠に警察がすでにK氏を拘束すべきだった」と付け加えた。5年前に軍事機密が北朝鮮に伝えられたことを既に分かっていながら、今まで警察がじっとしていた理由を理解できないという趣旨だ。
こうしたK氏と弁護人の主張に対して、ソウル庁関係者は「捜査関連内容であるため具体的な事項を明らかにすることはできないが、捜査は手続きに則り進めてきた」と話した。