大統領府がキム・ドンヨン経済副首相兼企画財政部長官のサムスン訪問と関連して、政府が財閥に投資・雇用を乞うような姿を見せるのは望ましくないという憂慮を伝えたことが確認された。これを受け、企財部は先日のLG、SK、現代自動車、新世界の4グループ訪問時とは違い、当日サムスン側から投資・雇用計画を渡してもらい、直接発表はしないことにした。
3日の大統領府・企財部・サムスンの関係者たちの話を総合すると、大統領府は最近、キム・ドンヨン副首相が6日に京畿道平沢(ピョンテク)のサムスン電子半導体工場を訪問する際、サムスンの投資・雇用拡大計画を企財部が直接発表するのは望ましくないという考えを伝えた。キム副首相は「現場疎通懇談会」の一環として、昨年末からLG、SK、現代自動車、新世界の4グループを訪問したのに続き、6日にサムスン電子を訪問する計画だ。大統領府関係者は「政府関係者がサムスン電子の工場を訪問すること自体は何の問題もないが、キム副首相が訪問する当日にサムスンの投資・雇用拡大計画を発表すると、まるで政府が財閥に圧力をかけたり物乞いしているかのように国民が誤解しかねない」と話した。
これを受け、企財部はキム・ドンヨン副首相の訪問当日にサムスンの投資・雇用計画を発表するという当初の計画を変え、しないことにした。企財部はLG、SK、現代自動車、新世界を訪問したときは、当該グループの投資・雇用計画を受け取り直接発表している。企財部の関係者は「投資は企業が決定するものだが、まるで政府が要請して行っているような誤解があり、訪問当日にサムスンの投資・雇用計画の発表はしないことにした」とし、「革新と雇用の主体は企業であり、政府はパートナーの役割をするもの」と説明した。サムスン電子も「企財部が(サムスンの投資・雇用計画を)直接発表しないようだ」と事実上認めた。これに先立って、大半のメディアはSKが80兆ウォン(約8兆円)の投資を約束したことを根拠に、サムスンがキム・ドンヨン副首相-イ・ジェヨン副会長の会合に合わせて100兆ウォン(約10兆円)規模の『投資袋』のひもを解くだろうと先を争って報道したが、いずれも誤報となったわけだ。
大統領府のブレーキは、キム副首相のサムスン工場訪問とイ・ジェヨン・サムスン電子副会長との会合を進めるにあたり、文在寅(ムン・ジェイン)政府の「サムスン求愛」という批判が提起され、政府がサムスンに投資・雇用拡大を乞うことで財閥改革がゆるむのではないかという懸念が出ていることを意識したものと解釈される。市場では、国政壟断勢力に賄賂を渡した疑いで1・2審で有罪判決を受けたイ副会長の最高裁裁判に影響を与えかねないという指摘も提起されている。
キム副首相は、最初は大統領府のブレーキについて「むだな杞憂」という強行意思を示したが、結局受け入れる方向に急旋回した。これは最近、最低賃金の引き上げの速度調節論を提起して大統領府との摩擦を見せたのに続き、再び“抗命”するような姿を見せることに負担を感じているものと解釈される。代わりにキム副首相は前日(2日)、ソウルで開かれた革新成長関係長官会議に先立ち、「私が民間企業を訪問することに対する一部の見方について遺憾を表す」とし、「大統領がひとこと言ったり、私を含めた政府当局者が企業を訪問したりして、企業の投資計画が急に作られるということは理屈に合わない」と公開的に不満を示した。
これをめぐって、文在寅政府が大統領選の時に約束したように、財閥に依存して成長と雇用を成し遂げるという考えを捨てるべきだという指摘が出ている。文大統領は「財閥改革こそ、少数の財閥だけでなく中小企業や街角の商店街、家計がともに成長し、国民の成長を築く新たな成長動力」と強調したことがある。
サムスンがキム副首相の訪問当日に企財部の代わりに自ら投資・雇用計画を発表する可能性は低い状況だ。企財部の関係者は「サムスンは当日発表しないだろう」とし、「ただし、イ・ジェヨン副会長がインドで文在寅大統領と会った時、国内の雇用創出に努力すると約束しただけに、自主的に投資・雇用拡大策を出すのではないか」と見込んだ。サムスン電子も「これまで準備をしてきたから、発表の時期が問題のようだ」とし、キム副首相の訪問と時差をおいて自主的に投資・雇用計画を発表する可能性を残した。
企財部の方針変更により、イ・ジェヨン副会長が当日キム副首相と会うかも不透明になった。サムスン電子は「(イ副会長が出席するかどうかは)まだ決まっていない」と話した。
これと関連し、キム副首相はこの日午後、ハンギョレ記事に関連した立場文を通じて「サムスン電子の訪問計画と関連して、意図せず論議が引き起こされているのは遺憾だ」とし、「これまで大手企業に4回会ったが、投資・雇用計画に干渉したことはなく、政府は過去と同じ方法で大企業に頼ったり投資・雇用を増やそうとする意図も計画も、全くない」と明らかにした。政府省庁の長官がメディアの記事と関連して個人の立場を発表したのは異例なことだ。