リビアで韓国人を拉致した武装団体の正体はまだ確認されていない。拉致の動機や要求事項も明確ではない。武装団体が掲載したとみられる動画でも、これと関連した言及は出ない。ただし、韓国人を含む4人の人質が全員救助を訴えているという点で、一旦は交渉を通じた解放に関心を持っているものとみられる。「武装団体が近いうちに要求事項を提示すると予想している」という外交部当局者の発言もこのような推定を裏づける。
リビア政府は、武装団体がイスラム国(IS)やアルカイダのようなイスラム主義勢力というよりは、地域を掌握した部族勢力の統制を受けている武装民兵隊である可能性に重きを置いていると見られる。外交部当局者は「リビア政府が武装団体の性格、隠れ家と関連し、一貫した説明をしている」とし、「武装団体が潜伏した部族勢力を説得しているものと聞いている」と話した。部族の元老や親戚などを通じて武装団体に圧力をかけているものと見られる。
武装団体が特に韓国人を標的にした可能性は高くなさそうだ。韓国人男性は動画でフィリピン人の人質に続き、二番目に登場して救助を訴えている。武装団体が韓国人の人質を前面に出しているようには見えない。武装団体が乱入した外国人キャンプにはフィリピンなど他の国籍の労働者たちが主に泊まっていた。拉致された韓国人男性は20年以上もリビアに滞在し、現地の事情に詳しいという。
動画によると、韓国人男性はひげが伸びており、素足にサンダルを履いて、緑色のボーダーのシャツを着ていた。のどが渇いたのか、プラスチック容器を持ち上げて水を飲む場面もあった。救助を訴える声もはっきりしており、健康に深刻な問題があるとは思えない。動画が掲載された「218ニュース」のフェイスブックアカウントは、フォロワー数が70万人にのぼるという。武装団体が動画の拡散を望んでいることを示している。
リビア政府は国家最高委員会に副首相が指揮する特別委員会を構成するなど、人質の救出に積極的に乗り出しているという。外交部当局者は「リビア政府は、大水路の事業に貢献した韓国に特別な責任感を持っているものとみられる」と話した。政府は、拉致勢力とは直接交渉しないという原則に基づき、リビア政府の役割に期待している。
リビアではアルカイダなどと連携されたイスラム系武装団体を含めて1700以上の武装勢力が活動しているという。中央政府の統制を受けない部族勢力の武装民兵隊も多数が活動しており、拉致が頻繁に起きている。昨年11月には、リビア南西部の水力発電所建設現場でトルコ人従業員たちが拉致され、7カ月後に釈放された。2014年1月にはハン・ソグKOTRA(大韓貿易投資振興公社)貿易館長がトリポリ市内で武装グループに拉致され、3日後に開放されたこともある。
政府は韓国人が拉致された直後、清海部隊を付近の海域に出動させるなど総力体制に入った。国民の生命に関わる事案だとして、マスコミにはエンバーゴ(一時的な報道猶予)を要請した。外交部当局者は「リビアが旅行禁止国であり、現地に居住する韓国人が多いうえ、清海部隊の移動が知られれば、標的になる恐れがあるため、エンバーゴを要請した」とし、「動画が公開された以上、これを維持できなくなった」と説明した。