「一昔」と言われる10年以上の歳月が過ぎても、進展が見られなかった主な労働懸案が、ついに解決局面を迎えた。12年前に解雇されたKTX乗務員180人が正社員として採用され、職場に復帰することになり、ここ10年間、謝罪や補償の兆しが全く見えなかった「サムスン電子白血病」をめぐる対立も、仲裁案への合意を目前に控えた。長い歳月を街頭で、法廷で、時には高空座り込み場で挫折した人たちは、はじめて胸をなで下ろした。巨大な既得権の壁に挫折せず、最後まで戦い続けた結果でもある。
「(合意について)何か申し上げるのはまだはばかられますね」
サムスン電子が「サムスン電子事業所の白血病等職業病問題解決に向けた調停委員会」(調停委)の仲裁案を受け入れる立場を明らかにした22日、故ファン・ユミさんの父親ファン・サンギ氏は慎重な態度を示した。娘が白血病でこの世を去ってから11年の間に経験しなければならなかった数多くのことが頭をよぎったからだ。2015年7月に調停委がまとめた勧告案が最終的に決裂した後、彼を含めた「パンオルリム」(半導体労働者の健康と人権守り役)は、再びサムスン電子社屋前で1020日にわたる座り込みを続けなければならなかった。
ただし、今回はファン氏も長い闘いの終結を楽観視しているようだった。「娘の生前、病気がかかった原因を明らかにすると約束しました。ユミとの約束が発端となって始まったことがこれまで続いているのです」。もうその約束を守る日があまり遠くない。サムスン電子とのパンオルリムが共に2カ月後に発表される調停委の仲裁案に合意するという意向を示しているだけに、調停が成果なく終わる可能性は低い。調停委やパンオルリム、サムスン電子は24日午前、仲裁方法に合意する署名式を行う。
同日、サムスン電子の社屋前の座り込み現場は炎天下の中、息苦しいほどの熱気に包まれていたが、表情だけは悪くなかった。今年初めから「パンオルリム守り役」として活動中の労務士チョ・スンギュさんさん(27)は「強く抵抗してきたサムスン側がついに頭を下げるかもしれない」と話した。彼はさらに、「パンオルリムはすでに多くのことを変えた。これからサムスンの変化が始まるかもしれない」と期待した。サムスン側の関係者も「これまで10年間、白血病をめぐる対立が解決されない状況で、調停委が提案した仲裁方式を最後のチャンスだと判断したようだ」と伝えた。
「最初は『ろうそく政権』が誕生したのに、我々の状況だけは変わらないと恨んでいました。(もう)韓国社会が変化しているという希望を抱けるようになりました」
12年2カ月ぶりに職場に復帰することになったキム・スンハ鉄道労組KTX列車乗務支部長は21日午後、ソウル駅で開いた記者会見でこう感想を語った。ソウル駅のテント座り込み場でニュースを聞いた乗務員らは、4526日ぶりの勝利に抱き合って涙を流し続けたという。
彼女と同僚らは2006年以来12年間、1日たりとも穏やかに過ごした日がない。2008年夏には40メートルの高さのソウル駅の鉄塔に登って20日以上も高空座り込みを行い、2015年には最高裁判決に挫折した同僚が自ら命を絶つことを目の当たりにした。
キム支部長は2015年、最高裁判所(大法院)が下級審判決を覆し、使用者側の勝訴を言い渡したことを受け、これを悲観して自ら命を絶ったパク乗務員の話を切り出した。彼女は1・2審勝訴で受けた賃金と訴訟費用などを返却するのが難しかったという。キム支部長は「こんなに嬉しい瞬間に一緒にいられない友達に、それでも私たちが正しかったと、私たちが正当だったと話してあげたい。何も補償することはできないが、私たちが力を合わせて『司法壟断』を正すのがその友達のための最後の行動だと思う」と強調した。KTX乗務員らに対する判決は「ヤン・スンテ最高裁」の裁判の取り引き疑惑文書に登場しており、検察が現在、捜査を進めている。
長年の労働懸案が一つずつ解決され、10年以上続いてきた他の事案も注目されている。双龍自動車労働者の整理解雇問題が代表的な事例だ。2009年には大規模な整理解雇以降、双龍車解雇労働者と家族など30人が亡くなった。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は今月、インド国賓訪問の際に、双龍自動車の筆頭株主であるマヒンドラ・グループのアナンド・マヒンドラ会長と面会し、解雇者復職問題の解決を促したが、会社側の立場はまだ変わっていない。