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[記者手帳]柳京食堂に関する統一部報道官の答弁が変わった理由とは?

登録:2018-07-17 05:44 修正:2018-07-17 07:09
柳京食堂の北朝鮮従業員の入国経緯に関する質問に 
「自由意思で来た」から「従来の立場は変わらず」へと
トーマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別報告者が今月10日、記者会見で「(従業員のうち)一部はどこに行くのかも分からないまま韓国に来た」として、「独立的真相究明や調査、責任者の究明」を韓国政府に勧告している/聯合ニュース

 「政府の従来の立場に変わりはありません」

 朴槿恵(パク・クネ)政権時代に国家情報院などが“企画”したという疑惑が持ち上がっている、中国浙江省寧波の北朝鮮レストラン「柳京」から女性従業員らが2016年4月に入国した経緯に関する記者団の質問に、ペク・テヒョン統一部報道官は16日の公開ブリーフィングで、このように答弁した。「(国情院が)従業員らを連れて来れば東南アジアにレストランを開いてくれると説得した」という元「柳京」の支配人ホ・ガンイル氏の新しい主張をめぐる質疑応答だ。質問が殺到したが、ペク報道官は「これ以上申し上げることはない」とし、口を固く閉ざした。

 これに先立ち、トーマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権特別報告者が10日、記者会見で「(従業員のうち)一部はどこに行くのか分からないまま韓国に来た」とし、「独立的真相究明や調査、責任者の究明」を韓国政府に勧告した時、統一部の対応は全く異なった。ペク報道官は翌日の公開記者会見で「従業員たちは自由意思に従って入国したものと聞いている」とし、キンタナ報告者の会見内容に事実上反ばくした。

 なぜペク報道官は5日間で「自由意思による入国」から「従来の立場は不変」へと答弁を変えたのだろうか? 言葉を変えただけで、核心メッセージは同じだと単純に受け入れることもできる。

 しかし、事情はそれよりかなり複雑だ。統一部の「従来の立場」はこの一つだけでもない。昨年12月28日、統一部政策革新委員会(委員長キム・ジョンス)は、柳京食堂の女性従業員関連事案を「国情院の要請により、統一部が受動的に(発表)したもので、具体的な情報事項について統一部が知らなかった事実が確認された」と発表した。さらに、「脱北事案を公表発表しなかった慣例とも背馳する」として、問題も提起した。

 すでにこの時から、文在寅(ムン・ジェイン)政権の統一部は「同じ食堂で働く従業員が一気に脱北したのは初めて」だとし、対北朝鮮制裁の効果と関連づけて大々的に宣伝した朴槿恵政権の統一部とは距離を置こうとした。5月10日にホ・ガンイル氏がテレビ放送に出演し、「国情院にだまされた」と主張した直後には、「入国の経緯、自由意志などに対する支配人と一部の従業員の新しい主張がある。事実関係を確認する必要性がある」(5月11日ペク・テヒョン統一部報道官)として、再調査する方針を示唆した。統一部は早くは昨年末から、遅くは5月以降、「自由意思による入国」という朴槿恵政権の発表とは距離を置いた。「第3の道」の模索に向けた準備作業とも言える。このような事情からすると、今月11日の「自由意思による入国」という統一部報道官の答弁はむしろこれまでの流れとは異なるものだ。政府関係者は「(統一部が)なぜそんな風に答えたのか分からない」としながらため息をついた。彼は「この問題をどう解決すべきか、ジレンマに陥っている」としながらも、「とにかく、現時点で『自由意思による入国』という答弁は不適切だ」と指摘した。この事案に詳しい元高官は「官僚主義的な慣性がもたらした惨事」だとし、「手のひらで空を隠そうとしては、答えが見えてこない」と話した。ちょうど同じ時期に、チョン・ジョンベ議員(民主平和党)とソン・ガプソク議員(共に民主党)が真相究明と責任の追及などを要請した。統一部の遅きに失した公式答弁の調整が「第3の道」を開く糸口になれるかどうか、見守るべきだ。

イ・ジェフン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/853547.html韓国語原文入力:2018-07-17 00:14
訳H.J

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