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[ニュース分析]型破りな金委員長…北朝鮮、53年ぶりに「国際外交舞台」の全面に

登録:2018-05-12 06:15 修正:2018-05-12 11:04
朝米首脳会談の場所はシンガポールに 
米国の提案受け入れ、4700キロの長距離飛行 
故金日成主席の1965年のバンドン会議出席以来初めて 
「社会主義圏外」の国際外交の舞台に
6月12日、シンガポールで歴史的な朝米会談を行うドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長//ハンギョレ新聞社

 「世紀の談判」となる史上初の朝米首脳会談の場所がシンガポールに確定し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の型破りの選択に世界の耳目が集まっている。北朝鮮の最高指導者が旧社会主義圏の外に出て国際外交舞台の全面に出るのは、金日成国家主席が1965年、インドネシアのバンドン会議10周年記念行事に出席して以来53年ぶりだ。

 「米国が提案し、北朝鮮が受け入れた。北朝鮮がシンガポールを選んだのは、金委員長の自信の表れだと思う」。ヤン・ムジン北韓大学院大学教授は、シンガポールで米朝会談が開かれることになったことをこのように解釈した。北朝鮮は最後まで平壌(ピョンヤン)開催を求めたが、トランプ政権の参謀陣がシンガポールにこだわったという。北朝鮮は一貫して平壌での開催を希望したが、マイク・ポンペオ米国務長官が9日に訪朝した際、結局、金委員長が米国の要求を受け入れる決断を下したものとみられる。

 金委員長が会談の場所として平壌から約4700キロメートル離れたシンガポールに合意したこと自体が、大胆な型破りだ。シンガポールが「中立地帯」を標榜しており、北朝鮮と外交的関係が悪くないとしても、金委員長の今回の選択は伝統的友好国である中国とロシアを除いて、なかなか海外を訪問しなかった父親の金正日(キム・ジョンイル)総書記とは明確な違いを示している。金正日総書記は2000年、史上初の南北首脳会談で金大中(キム・デジュン)大統領と約束したソウル訪問も、結局実行に移さなかった。一方、祖父の金日成(キム・イルソン)主席はもう少し活発な対外活動を行った。数十回にわたって中国を公式・非公式訪問し、1984年には46日間にわたり、ソ連と東欧8カ国の歴訪に乗り出したこともあった。金日成主席は1965年にインドネシアのバンドンで開かれたアジア・アフリカ諸国の非同盟国家会議(バンドン会議)10周年記念行事に出席するなど、国際舞台に比較的頻繁に姿を現した。ただ、バンドン会議の場合、米国とソ連が排除された非同盟国家の集まりだったという点で、金委員長が70年間「敵対関係」だった米首脳との談判を第3国で行うことを決心したのとは次元が異なる。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員は「金委員長が中国以外では初めて国際社会にデビューすることで正常な国家指導者の姿を示すため、米国の要求を受け入れた」と解釈した。

史上初の朝米首脳会談が開かれるシンガポールの金融街の全景/聯合ニュース

 事実、金委員長の破格ぶりはすでに4・27南北首脳会談で明らかになった。3月末、中国の習近平国家主席と初の首脳会談をしながら「隠遁の独裁者」のイメージを脱し始め、それから1カ月後、板門店(パンムンジョム)でも堂々とした「金正恩流」の行動で全世界の注目を集めた。北朝鮮指導者としては朝鮮戦争以来初めて訪韓し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の手を握ってまた軍事境界線を越えた。

 金委員長がシンガポールに会談場所を“譲歩”したのは、形式よりは実利を重視する統治スタイルが反映された結果だという分析もある。場所をめぐる駆け引きで力を消尽するよりは、米国の提案を受け入れることで会談に対する真摯さを示し、会談内容に力を入れるためということだ。

 ヤン・ムジン教授は「準備さえよくできていれば、シンガポールで自分が会談を主導できると判断したものと思われる」と話した。ある外交消息筋は「これまでの事前接触や高官級レベルの接触頻度、最近のポンペオ長官と金委員長の面会見る限り、両者がかなり満足できる合意が作られると思う。双方が一時的にウィン・ウィンできる合意案が出るかもしれない」と見通した。一方、米国が平壌開催を受け入れた場合、北朝鮮が非核化措置と関連した相当な譲歩を迫られるという点で、シンガポール会談が「スモールディール」になるという見通しも示されている。

 シンガポールが北朝鮮にとっても悪い選択ではないというのが専門家たちの大方の見解だ。ク・ガブ北韓大学院大学教授は「シンガポールが中立地帯を標榜するASEAN国家という点」に加え、「北朝鮮とシンガポールの関係がかなり良好で、米国も南シナ海など中国包囲という面でASEANを取り込む必要があり、双方の利害関係が合う場所」だと話した。北朝鮮は韓国より先立って1968年にシンガポールに通商代表部を設置し、1975年に公館を開設した。

 ドナルド・トランプ大統領は10日(現地時間)、ツイッターで「大変期待される金正恩(国務委員長)と私の会談がシンガポールで6月12日に開催される」と発表した。トランプ大統領はさらに、「私たち二人が会談を世界平和のための非常に特別な瞬間にする」と約束した。

 トランプ大統領は同日午後、インディアナ州サウスベンド遊説に出席するため出発する前、アンドリュー空軍基地でも「朝米首脳会談が成功すると思うか」という質問に対し、「そう思う。大きな成功(big success)になると思う」と答えた。ポンペオ国務長官の訪朝をきっかけに北朝鮮に抑留されていた米国人3人が釈放され、トランプ大統領が会談の成功をかなり楽観視していることがうかがえる。

キム・ジウン記者、ワシントン/イ・ヨンイン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/844286.html韓国語原文入力:2018-05-11 22:04
訳H.J

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