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[ニュース分析]朝米、首脳会談の議題めぐり神経戦

登録:2018-05-08 06:27 修正:2018-05-08 14:48
米国、北朝鮮の永久的非核化PVIDの要求に 
大量破壊兵器や人工衛星まで取り上げ 
北朝鮮の未来の核計画の遮断まで狙う 
 
北朝鮮外務省「情勢原点に戻そうとする試み」と批判 
朝米交渉力高めるための駆け引き
首脳会談の議題をめぐる朝米の駆け引き//ハンギョレ新聞社

 日時と場所は決まった。しかし、議題はまだ協議中だ。

 朝米首脳会談を控え、米国と北朝鮮が会談の議題をめぐって最後の駆け引きを行っている。会談のテーブルから互いが望むものをより多く持ち帰るための神経戦だ。米国は北朝鮮非核化の範囲と対象を拡大しようとしており、北朝鮮は米国の北朝鮮制裁の解除と関係正常化を優先順位に置きたがっている。会談が目前に迫ってきたことを知らせるもう一つのシグナルだ。

■米国の議題拡大…「核技術と生物化学兵器まで廃棄」

 マイク・ポンペオ新任米国務長官は2日(現地時間)、北朝鮮核問題解決の原則として既存の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)の代わりに「永久的かつ検証可能で不可逆的な非核化」(PVID)を掲げた。「完全な非核化」を「永久的な非核化」に変えたのだ。これが単なる“用語の変化”なのか、それとも“政策の変化”なのかは、具体的に説明しなかった。

 CVIDであれ、PVIDであれ、北朝鮮の完全な非核化という米国の要求は本質的には同じだ。ただし、永久的という言葉を用いたのは、非核化の範囲に核兵器を作れる未来計画まで含まれることを意味する。米国は2005年、「6カ国協議共同声明」(9・19宣言)を作る過程で、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化にこだわり、「すべての核兵器と現存する核計画」の放棄を主張した。米国は今回の朝米首脳会談でも「未来の核計画」の遮断を目指すものとみられる。核兵器を再び開発して製造できる技術と人材まで統制すると共に、核廃棄後、北朝鮮の平和的核利用の権利も認めないという意図もうかがえる。

 米国はこれに生物化学兵器も加えた。ホワイトハウスのジョン・ボルトン国家安保補佐官は4日(現地時間)、日本の谷内正太郎・国家安全保障局長と面会し、「すべての核兵器や弾道ミサイル、生物化学兵器と、これに関連するプログラムを含めた北朝鮮の大量破壊兵器の完全かつ永久的な廃棄を達成しようという共同の目標を確認した」と述べた。米国が非核化の範囲を大量破壊兵器にまで拡大していることを示している。日本人拉致被害者問題を議題にあげる可能性もあると見られている。

 米国はまた、5日、弾道ミサイル技術を利用した北朝鮮の人工衛星発射が国連安全保障理事会決議違反という点を再確認した。北朝鮮が先月20日、党の全員会議で決定した核実験と大陸間弾道ミサイル試験発射中止に、人工衛星の打ち上げの中断も含まれたものと規定したのだ。北朝鮮は人工衛星の打ち上げは、平和的な宇宙開発を目的としているため、制裁対象にはなり得ないと主張してきた。

■北朝鮮の警告…「原点に戻してはいけない」

 北朝鮮は米国の議題拡大に不快感を示している。北朝鮮外務省報道官は6日、朝鮮中央通信とのインタビューで、「米国が我々の平和愛好的な意志を“軟弱さ”と取り違え、我々に対する圧迫と軍事的脅威を引き続き追求するなら、問題の解決に役立たないだろう」と警告した。外務省報道官は「朝鮮半島情勢が平和と和解の方向に進んでいる今、相手を意図的に刺激する行為は、せっかく用意された対話の雰囲気に冷や水を浴びせ、情勢を原点に戻そうとする危険な試みとしか思えない」と主張した。朝米首脳会談の開催が可視化して以来、北朝鮮当局が米国を公開的に批判したのは今回が初めてだ。

 北朝鮮の警告は、朝米が議題を調整する過程で駆け引きを繰り広げていることを示している。チョ・ソンニョル国家安保戦略研究院首席研究委員は「米国が今回の朝米首脳会談の議題に非核化と中長距離ミサイルだけでなく、生物化学兵器や人権問題まで加えようとすることを容認しないという意思表示と言える。朝米が議題を調整する過程で意見の相違が露わになっており、これを調整する必要性が生じたようだ」と分析した。ある大統領府関係者は「PVID問題をめぐり、朝米間で意見の食い違いがあるものと見られる」とし、「それがどのレベルかは、まだ大統領府もよく分からない。見守っている」と話した。

 朝米の攻防が会談場で交渉力を高めようとする計算された行動だという指摘もある。北朝鮮の動向に詳しいある専門家は、外務省報道官の主張が過去と異なり、翌日の党機関紙である「労働新聞」に掲載されなかった点に注目する。ク・ガブ北韓大学院大学教授は「朝米首脳会談の議題調整がある程度終わったはずだが、対北朝鮮制裁の解除問題は議題にならなかったかもしれない。制裁の解除が切実な北朝鮮としては、そのつもりがない米国に、交渉に向けた警告を行ったものと見られる」と話した。

ユ・ガンムン先任記者、ノ・ジウォン、ソン・ヨンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/843640.html韓国語原文入力:2018-05-07 21:43
訳H.J

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