日本の市民運動家である白石孝氏(68)が、2016~2017年の韓国の大規模ろうそく集会を見守ったのは外信を通じてだった。最も近い隣国で、現職の大統領を退陣させ政治状況が急変する市民革命が起きていたが、日本のマスコミは報道に消極的だったためだ。「2016年秋と冬に20回も開かれた韓国のろうそく集会を、日本のマスコミはほとんど報道しなかった。韓国の状況が気になる人々は、米国のCNNや英国のBBCのような海外放送に依存しなければならなかった」
彼は3月30日、『ソウルの市民民主主義―日本の政治を変えるために』を出版した。今月23日にソウル市庁を訪問し、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長に本を手渡した白石氏は「韓国のろうそく革命を日本に知らせなければならない」という思いで本を出すことになったと説明した。
大統領を退陣させた韓国の大規模集会
日本のマスコミの消極的報道のため「外信で」
「日本の市民社会に知らせなければならないと決心」
『ソウルの市民民主主義』出版し
数百万人の平和集会・ソウル市が支援「評価」
「安倍スキャンダルなど腐敗改革運動が必要」
「日本に朝鮮半島研究者は多いが、ソウルの“ろうそく革命”について本を書いた人はまだいない。日本の政治家や公務員に、ソウルの市民民主主義が持つ意味を知らせたくて本を書いた」
公共部門の非正規職問題を扱う市民団体であるワーキングプア研究会の理事長を務める彼は、2012年からソウル市政を研究してきた。本では韓国の市民民主主義と市民の意見が反映されたソウル市の政策を紹介した。
白石氏はまず、韓国のろうそく集会の規模について驚きを隠せなかった。「日本は過去10年間、市民がいくら努力しても集会に10万人集まったのが最大だ。だが、日本より人口の少ない韓国では、一回のろうそく集会に100万人以上が集まった」
彼はまた、ろうそく集会が腐敗した政権を変えるほどの強力な力を見せながらも、ケガ人が出ない平和集会であった点を高く評価した。「“ろうそく革命”の時、20回の集会が開かれたが、一度も負傷者の出る衝突がなかった。集会に集まる市民の便宜のために、ソウル市長が自ら立ち上がって支援したことにも驚かされた」。彼はさらに「東日本大震災以後、日本でも毎週市民が集まって原発反対集会を開いているが、政府の政策を変えるだけの強い影響力は示せずにいる。この頃は安倍政権が“私学特典スキャンダル”のような腐敗疑惑に苦しんでいるが、社会を変化させる程の市民参加はない」と残念がった。
白石氏はろうそく革命だけでなく、ソウル市で市民の意見が福祉・住居・労働政策に反映されている点も高く評価した。「『松坡(ソンパ)三母娘事件』、『九宜(クイ)駅キム君事件』(外注業者修理士が駅ホームドア修理中に事故で死亡した事件)のように、数年間にわたりソウルで悲しい事件があったが、ソウル市民はこれを哀悼するにとどまらず、政策の補完を要求した。また、ソウル市はそれを受け入れて、九宜駅キム君事件後に外注に出していた一部の安全関連事業を直営化するなど、制度の改善過程を調べた」。彼は「日本にも似た事例がないか」という質問に「日本でも基礎生活保護受給者になれずに自殺したり餓死した事件があるが、それを市長や政治家が自己の責任と考えて市民に政策的に対応したことはない」と答えた。
「日本で市民の希望が多い福祉政策を挙げてほしい」という質問には、ソウル市の青年手当て政策のように、日本の地方自治体が実施している青年政策に対する満足度が高いと答えた。かつて少子化・高齢化で人口が減り代案を悩んできた日本の地方自治体では、都市の若者が地域に移住して農作業をするなど1次産業に従事すれば「1次産業就職優待政策」で支援している。白石氏は「求職難に陥った都市の若者と、人口減少に悩む地方自治体が互いに“ウィンウィン”できる政策だ。多くの若者が都市を離れても仕事場を見つけて新しい人生を始めた」と話した。
ただし、彼は個別的には価値がある日本の地方自治体の政策は、社会全体を変える変化までは広がりえないと吐露した。さらに最近、安倍首相をはじめ日本の官僚社会の不正腐敗に対する市民の怒りが沸き上がっているものの、韓国のように意味ある市民・社会の運動にまで広がれずにいると指摘した。白石氏は「日本社会にも全般的な改革のために韓国のろうそく革命のような市民民主主義の力がどうしても必要な状況」と話した。