12日午後、大統領府で開かれた大統領主宰の首席・補佐官会議場に入った文在寅(ムン・ジェイン)大統領の表情は、いつになく明るかった。文大統領は、南北首脳会談と朝米首脳会談が開かれるこれから2カ月間、韓国が成し遂げることを「これまで世界が成功しなかった世界史的な大転換の道」だと評価しながらも、依然として慎重な態度を示した。「結果を楽観視することが難しく、過程でも慎重にならざるを得ないのが現実」という理由からだ。
しかしこの日、文大統領の発言は、今月6日にチョン・ウィヨン大統領府国家安保室長やソ・フン国家情報院長など対北朝鮮特使団から北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の「非核化のメッセージ」と4月の南北首脳会談開催合意などが含まれた訪朝結果を報告を受けた時とは明らかに違っていた。文大統領は当時、対北朝鮮特使団が予想外の大きなプレゼントを持って帰ったにもかかわらず、「ガラスの器を扱うように慎重を期すべき」だと述べた。ドナルド・トランプ米大統領が金正恩委員長の非核化メッセージを信頼して朝米首脳会談提案を受け入れるかどうかが、不透明だったからだ。
ところが、文大統領は同日の首席・補佐官会議で、朝鮮半島非核化や恒久的平和体制、南北共同繁栄の道を開ける大切な機会が設けられたと、現在の状況を高く評価した。彼はさらに「私たちが成功すれば、世界史的に劇的な変化が作られ、大韓民国が主役になるだろう」と強調した。彼は特に、敵対的な朝米が首脳会談のテーブルに座ることにした状況について、「決して偶然ではなく、その道が正しい道だから」とし、北朝鮮と米国を行き来しながら成し遂げた“仲裁外交”の成果に対する自負心ものぞかせた。
昨年までは誰も想像できなかった変化だ。昨年8月末、大統領業務報告に当たる「外交・統一部政策討議」で、文大統領は「今、北朝鮮の挑発で南北関係が行き詰っているが、統一部はこんな時こそ落ち着いて内実を持って準備しなければならない。厳冬の後には必ず春が来る。春が来た時、種まきができるよう、着実に準備してほしい」とし、「直接の当事者である韓国が主導的に問題を解決し、対処する姿勢が必要だ」と強調した。これに保守系野党と一部マスコミは、北朝鮮の相次ぐ核・ミサイル挑発とはかけ離れた安易な現実認識だとして、文大統領を批判した。文大統領の朝鮮半島の運転者論についても「コリア・パッシング」や「助手席にも座れない立場」だと嘲弄した。大統領府は当時、このような批判に不快感を示しながらも、公式的に反論しなかった。
大統領府関係者は「すべて打ち明けることはできないが、平昌(ピョンチャン)冬季五輪を機にわずかに見え始めた空間を大きく開くための文大統領の努力が、朝米の指導者の心を動かした側面もある」とし、「今日の文大統領の短い発言には、これまでの感慨と今後における覚悟などが込められていると思う」と話した。