「マスターカードしかないので、現金を下ろしに行かなければ」
11日昼、KTX京江線の江陵(カンヌン)駅内にある平昌(ピョンチャン)冬季五輪公式ストア。ここで6000ウォン(約600円)の“スホランバッジ”(平昌五輪の公式マスコットである虎のバッチ)を買おうと財布を出したWさん(27)は、レジの前から引き返さなければならなかった。公式ストアでは、現金とVISAカードによる決済だけが可能なためだ。10万ウォン程度の記念品を購入したPさん(48)も「普段はほとんど使わないVISAカードを探して大変だった」として、不満を吐露した。VISAカードは、国際オリンピック委員会(IOC)から決済サービスの独占権を認められたワールドワイド・オリンピック・パートナーだ。
オリンピックの公式スポンサーは、後援支援金の規模により等級が分かれる。VISA、コカコーラ、サムスンなどのワールドワイド・オリンピック・パートナーは、全世界でオリンピック・マーケティングを展開できる独占権を保証される代価として、IOCに1000億ウォン(約100億円)以上を後援しているという。今回の大会に500億ウォン以上を支援した現代起亜自動車、KT、大韓航空などの公式パートナーは、開催国である韓国内でのみオリンピック・マーケティングを行うことができる。
公式スポンサーの独占供給にともなうあきれた問題もある。平昌郡大関嶺面(テグァンリョンミョン)横渓里(フェンゲリ)の大会組織委員会建物にあるオリンピック公式スポンサーのマクドナルドは、主力製品であるハンバーガーを販売していない。コーヒーと朝マックメニューの一部を販売するだけだ。マクドナルドは「組織委の要請で、ハンバーガーの代わりに簡単なメニューのみを販売することになった」と説明した。これについて組織委関係者は「狭い建物に入ったマクドナルドの売場に、ハンバーガーのパティを焼くオーブンなどを設置する場所がなく、メニューを減らしたと理解する」と伝えた。
公式スポンサーでない企業等が、オリンピックを活用して自社製品とブランドを広報して制止を受けるケースもある。大会の公式パートナーであるロッテと注文者委託生産(OEM)契約を結び、「平昌ロングダウンコート」を生産したシンソン通商は、広報権がないにもかかわらず製品と関連した報道資料を配布して組織委から警告措置を受けた。アンプッシュマーケティング(待ち伏せマーケティング)論議が起きたSKテレコム(SKT)の「平昌応援キャンペーン」広告も先月IOCから「See you in Pyeongchang」など一部の広告内容を修正するよう通知を受けた。