全員が立ち上がった。
ろうそくの形の(LED)ライトの波が、「アリラン」が終わるまで観客席に押し寄せていた。それは平和に対する念願と尊敬の印だった。
南北五輪選手団約180人が9日、江原道平昌五輪スタジアムに最後に入った瞬間、3万5千席を埋め尽くした観衆は全員が立ち上がり、拍手と歓呼で迎えた。韓国のウォン・ユンジョンと北朝鮮のファン・チュングムが共に掲げた統一旗を先頭に、共同入場した南北の選手らも手を振って応えた。表情は明るく、熱気は高まった。両側の団長が率いる共同選手団の前列は南北が交互に列をつくった。白い防寒服のユニフォームを着た選手団は、顔も言葉も同じ兄弟姉妹だった。自らの体で正直な勝負をする選手たちが作った「平和五輪」のメッセージは強かった。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領と夫人のキム・ジョンスク氏も席から立ち上がり、キム・ヨンナム北朝鮮最高人民会議常任委員長と金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の実妹のキム・ヨジョン労働党第1副部長と明るく笑いながらもう一度握手を交わし、キム常任委員長とキム第1副部長も笑顔で応えた。特に、キム第1副部長は子どものように無邪気に笑って選手団に向かって拍手を送る姿も見えた。
共同入場の列を準備した韓国選手団の関係者は「スタジアムの外で待機する時から選手たちは打ち解けていた。列を作る時もためらいもなかった」と話した。北朝鮮選手団の規模は36人程度で、韓国の3分の1ほどだったが、南と北を分けるのは無意味だった。互に足りないものは補い、余るのは分け与える一つの心だけが存在していた。
南北選手団の国際スポーツ行事共同入場は、2000年のシドニーオリンピック以来10回目のことで、2007年の長春冬季アジア競技大会以来11年ぶりだ。政治状況によって集まっては散らばり、紆余曲折も多かった。今回はトーマス・バッハ国際オリンピック委員会(IOC)委員長の強力な主導のもと、新たな転機を作った。バッハ委員長は演説で「共同入場は平和を知らせる強力なメッセージ」だと強調した。北朝鮮の平昌五輪招待のために4年間に力を注いだためか、平昌には歴代最も多い92カ国が参加し、3千人近い選手らが集まった。
韓国の地で開かれるオリンピックに北朝鮮が参加し、史上初めて南北女子アイスホッケー単一チームを構成したのは、韓国スポーツ史に記念すべき出来事になると見られる。しかし、スポーツ平和の夢はこれからがより重要だ。大韓体育会関係者は「平昌五輪に北朝鮮が参加する過程で、IOCから様々な形で支援を受けており、韓国には国際スポーツ界に対する借りがある。今後、南北スポーツ交流の火種を生かしていくことが国際社会に恩返しすること」だと話した。
種目別の交流は直ちに実現できる。アイスホッケー単一チームの訓練で、北朝鮮の選手らは韓国の指導者の教えを急速に吸収しており、韓国のショートトラックのコーチングスタッフは、北朝鮮のチョン・グァンボム、チェ・ウンソンにワンポイントレッスンをした。8月のジャカルタアジア競技大会は、平昌以降南北スポーツが迎えるさらなる試験台だ。朝鮮体育会創立100年になる2020年を迎え、南北が共同でスポーツの歴史やルーツを発掘する作業や学術大会の開催、京平サッカーの復活などを進めることも考えられる。今は大きな政治的合意よりも小さいものから実践する時だ。