ソウル高裁刑事7部(裁判長キム・デウン)が30日、ウォン・セフン元国家情報院長の破棄差戻し審の宣告で、この事件の核心争点である「大統領選挙介入」と関連し、「国情院のサイバー世論操作活動は明白な選挙介入」と判断した。裁判部は2012年の大統領選挙候補の出馬宣言後、国情院の職員らが書いたインターネットの書き込みが一貫して与党を支持し野党に反対していたと見た。ウォン元院長が「野党が勝てば国情院がなくなる」と話すなど、全部署長会議で選挙に関連する発言を繰り返したのも、大統領選介入の重要な判断根拠となった。
■一貫した朴槿恵支持、文在寅誹謗
国情院のサイバー世論操作が政治介入であるだけでなく、大統領選介入と認められた理由は、心理戦団サイバーチームの職員らが上げた書き込みの内容が明白で一貫しているためだ。まず、裁判部は2009年2月から2012年12月まで行われた国情院サイバーチームの活動範囲を「今日のユーモア」(掲示板サイト)の書き込みの賛成・反対クリック1214件、インターネットの掲示文とコメント2124件、ツイッターの書き込み29万5636件など、計29万8974件と見た。裁判部は、最高裁判所の破棄差戻しの趣旨通り国情院の世論操作活動の範囲を大きく広げた国情院職員の電子メール添付ファイル(”425旨論”・セキュリティファイル)を証拠に採択しなかった。しかし、サイバー世論操作活動と見ることができるツイッターのアカウントを、1審(175件)より多い391件まで認めたため、サイバーチームの活動範囲は縮小しなかった。裁判部は「特定政党や政治家を直接支持・反対する旨が明確であれば、国情院法が禁止する政治関与に該当する」とし、全体29万8974件のうち29万2153件(98%)が、当時李明博(イ・ミョンバク)大統領と朴槿恵(パク・クネ)セヌリ党大統領候補、セヌリ党を支持・擁護し、野党の文在寅(ムン・ジェイン)民主党大統領候補、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領などに反対する書き込みと判断した。
2009年2月から続いてきた国情院のサイバー世論操作は、大統領選の選挙運動が事実上始まった2012年6~9月、各政党の候補の出馬宣言日後にも続いた。これに対して1審は「継続的・反復的に行ってきた同一業務が、選挙の時期になったからといって当然に選挙運動行為になるということは到底受け入れ難い」とし、無罪を宣告した。だが、今回裁判部は2審のように「その内容が特定候補者の当選または落選のためのものであれば選挙運動と見ることができる」と、異なる判断をした。裁判部は「国情院職員らの書き込みは、朴槿恵候補を露骨に擁護・支持したり、民主党と文在寅候補、統合進歩党とイ・ジョンヒ候補、無所属の安哲秀(アン・チョルス)候補に反対し誹謗するものがほとんど」だと指摘した。その結果、各政党の候補らの出馬宣言後、国情院サイバーチームの職員らが書いたツイッターなどインターネットの書き込み17万5926件のうち、特定候補を支持したり反対する書き込み10万7609件(61%)が選挙運動として認められた。
■検察の追加証拠も有罪の根拠に
文在寅政府発足後、国情院側から遅れて検察に提出された「全部署長会議の録音文書」完成版と追加の文書なども有罪判断の根拠として活用された。裁判部は「ウォン元国情院長が特定選挙と特定の候補者への支持を明示的に指示はしなかったが、全部署長会議で数回選挙に関連する発言をし、さらに『野党が勝てば国情院がなくなる』という趣旨の発言までした」と指摘し、「事実上選挙に影響を及ぼす活動をすることを国情院全体に指示した」と判断した。ウォン元院長は毎月、国情院1~3次長、企画調整室長、本部室長・局長幹部と全国の支部長が出席する「全部署長会議」を開いたが、朴槿恵政府時代の国情院は捜査と裁判の当時、主要な内容を隠したまま録音文書を提出したことがある。削除された部分は、国情院の積弊清算タスクフォースTFが発足した後、7月になってようやく裁判所に提出された。
検察が同じ時期に追加で提出した文書も役割を果たした。裁判部は「国情院から大統領府に報告したと見られる『2040世代の政府に対する不満要因の診断と考慮事項』文書には、再・補欠選挙の与党の敗北の要因を分析し対応策を模索する内容が、『SNSの選挙影響力の診断および考慮事項』文書には、与党が野党・左派に圧倒的に占領されたSNSの主導権を掌握して民心の歪曲を遮断しなければならないと書かれていた」とし、「国情院は普段、各種選挙で与党の勝利を目指して活動し、18代大統領選挙活動もその延長線上で行われた」と指摘した。
■2審よりさらに高まった量刑
無罪を主張し反省しなかったウォン元院長の態度は量刑に反映された。裁判部は、ウォン元院長が指示した国情院のサイバー世論操作が「正当な北朝鮮対応活動ではなく、特定の政治勢力への支持・反対」だと釘を刺し、「憲法と法令の違反程度がきわめて重大で、国民に大きな衝撃を与えた」と評価した。それでも「反省する様子を一度も見られなかった」とし、検察が求刑した懲役4年をそのまま宣告した。破棄差戻し前の2審が2015年2月に宣告した懲役3年よりも1年長い。