「こんなに(大統領府に)簡単に入ることができたのに、何でもないことだったのに…3年も野宿や断食もしてどうか会ってほしいとお願いしました。今、そのしこりはみんな解けてしまうようです」。大統領府迎賓館に入った「ユミンのお父さん」のキム・ヨンオさんの目には、とうとう涙が浮かんだ。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は16日昼1時半から110分間、大統領府迎賓館でセウォル号惨事被害家族や生存者たちと会って慰労し、「遅くなったが政府を代表して頭を下げて謝罪と慰労の言葉を申し上げたい」とし、直接謝罪した。この場にはチョン・ミョンソン4・16家族協議会運営委員長をはじめ、207人の被害者家族らが参加した。チャン・ハソン政策室長とチョン・ビョンホン政務首席、ハ・スンチャン社会革新首席など大統領府関係者をはじめ、「セウォル号弁護士」と呼ばれた共に民主党のパク・ジュミン議員や京畿道安山(アンサン)が選挙区の同党のチョン・ヘチョル、キム・チョルミン議員も出席した。
同日、被害者家族たちの前に立った文大統領は、目元と鼻の先を赤らめたまま10秒余りの間言葉を始められなかった。震える声で「セウォル号をいつも忘れずにいました」と口を開いた文大統領は、「未収拾者の収拾が終わったらセウォル号の家族たちを大統領府に一度迎えなければと思っていたが、思ったよりも時間がかかるため、捜索作業をしている最中にこのようにお迎えすることになった」と話した。また、「最後の一人を見つけるまで最善を尽くす」と約束した。
文大統領は、第2期セウォル号特別調査委員会の設立を支援し、徹底的に真実究明をすると約束した。第2期特別調査委員会が設立するためには、国会の特別法が可決されなければならない。文大統領は「政府が対応において無能で無責任だった。国民の間を割き、遺族に大きな傷を残した。当然の責務である真実究明も回避し、妨げるという非情な姿を見せた」と指摘しながら「遅くなったが、政府を代表して頭を下げて謝罪と慰労の言葉を申し上げる」と謝罪した。また、「今日ここまで来るのに時間がかかりすぎた。遅ればせながらもうけたこの席が、皆さんの慰めになり、希望を与える場になってほしい」と述べた。
同日、黄色い服を着て大統領府迎賓館に入った出席者は全体的に明るい雰囲気だったが、一部は涙を隠せなかった。参加者らは文大統領の発言が続く間、できるだけ淡々とした表情でいるよう努めた。子どもを失ったある母親は、文大統領にセウォル号の犠牲者の子どもたちの写真を入れた額を渡しながら涙を流したりもした。チョン・ミョンソン運営委員長は「朴槿恵(パク・クネ)政権が違法で不当に行った捜査妨害と隠ぺい・ねつ造行為が再び起こらないよう、そのいかなる影響も受けない強力な法的調査機構をきちんと作ってほしい。第2期特別調査委員会を再建してほしい」と話した。これに文大統領は「(特別調査委員会設立に向けた)特別法は国会をちゃんと通ることと信じ、また(大統領府も)努力する」と答えた。この他にも被害者家族らは、セウォル号の船体捜索期限を定めず捜索すること▽セウォル号の船体を保存し安全教育館として活用すること▽セウォル号の犠牲者の名誉回復と安山追悼公園の建設などをお願いした。同日、セウォル号惨事被害者家族たちは、安山から大統領府警護室職員の案内を受けて大統領府が提供した車に乗って移動した。パク・スヒョン報道官はブリーフィングを通じて「家族たちを乗せた車は、この3年間家族たちが最も多くの涙を流した国会前と光化門広場、青雲洞事務所を通り、一般訪問客が利用する出入り口ではなく大統領府の正門を通って入った」と伝えた。