「2000年代以降、在韓米軍地位協定(SOFA)の改定と付属合意書などを通じて、米軍の環境保護責任を明文化した規約は改善されてきました。問題はこのようなものが死文化しており、無力であることです」
京畿道議会のヤン・グンソ議員は最近、ハンギョレとのインタビューで、米軍の駐留による住民被害を保護する実質的手段がない現実にもどかしさを感じると語った。彼は「在韓米軍が韓国の世論を意識し、外交交渉過程で拒否する名分が見当たらず、環境保護協定に合意したものの、積極的に守ろうとしない」とし、「韓国政府も関連規定を根拠に米軍側の責任を問うことには消極的だ」と指摘した。
このような限界にもかかわらず、中央政府でなく地方政府レベルで住民の権益を守ろうとする動きがここ1~2年間で目立っている。昨年8月、京畿道議会がヤン議員の代表発議で「在韓米軍基地環境事故の予防および管理条例」を制定し、口火を切った。さらに12月には「在韓米軍駐留地域など被害防止および支援に関する条例」も新設した。京畿道平沢(ピョンテク、2016年11月)と釜山市南区(2017年2月)も相次いで環境条例を作った。京畿道当局はこのような条例の執行を担当する供与区域環境チームを立ち上げた。
京畿道議会が条例の制定に先頭に立ったきっかけは2015年5月、烏山(オサン)在韓米軍基地内の炭そ菌の流出事態だった。ヤン議員は「最悪の危機状況で地方政府は積極的に対応するどころか、現状把握すらできなかった。上位法のSOFA環境協定を根拠に、関連規定を作る必要があると判断した」と明らかにした。彼は「地方議会が米軍関連条例を制定できるのかを詳しく調べた後、草案を作って環境部や外交部と協議したが、環境部は『外交部と協議すべき』と押し付けて、外交部の方は可否について明確に答えず、国防部は『協議対象ではない』と見向きもしなかった。中央政府がSOFA規定で確保された韓国側の権利さえまともに行使せず、消極的態度を示した」と批判した。
6月末現在、国内の各地方自治体の在韓米軍関連条例は合わせて9つだ。そのうち工事入札や基地周辺住民への支援などに関する条例を除いた5つが、米軍駐留と移転による住民の被害防止と権益保護に関する積極的な内容を盛り込んでいる。例えば、京畿道東豆川(トンドゥチョン)の「米軍再配置関連活動の支援条例」(2015年10月)は「市長が米軍基地返還の遅延によってもたらされる地域発展の阻害および地域経済の恐慌事態などの解決に向けた住民活動に費用を支援」できるようにした。「住民活動」には市民運動や国会と中央政府の支援の提案、米軍供与地の返還および開発要求、低迷している地域経済の活性化に寄与する事業などが含まれる。
京畿道には在韓米軍供与地の87.0%が集中している。米軍の再配置による返還対象面積は全国の96.1%を占める。住民の権益を制度的に保護するための条例制定を主導しているのもそのためだ。問題は、自治体条例が法令体系上の下位法であり、中央政府と米軍の協力なしに、独自にできることがほとんどないという点だ。まだ条例の適用分野が「環境」分野に限られており、義務条項さえも現実的制約により守られていないからだ。
例えば、京畿道環境条例は「道知事はSOFA環境分科委員会を通じて在韓米軍基地の環境情報の提供を積極的に要請しなければならない」(第7条環境情報の共有)と規定した。「環境情報」とは「環境安全施設の現状、定期点検の実績、環境の移行実績、環境への悪影響最小化プログラム、各種生物化学ノートなどを含む」ものとされている。ところが、京畿道はいまだに韓国政府と在韓米軍のいずれからも関連情報を得られていない。京畿道米軍基地供与区域環境チームの関係者は「環境条例制定後、実務チームを構成して中央政府と米軍側に環境情報の共有を要請したが、『平常時の情報共有に協力することは難しい』と言われた」と話した。自治体中心の予防的管理は不可能であり、事故が起きた後になってようやく収拾に参加できるということだ。
にもかかわらず、専門家らは地方自治体の動きの意味を高く評価し、注目している。民主社会のための弁護士会(民弁)の米軍問題研究委員長のハ・ジュヒ弁護士は「日本の沖縄県の在日米軍基地反対闘争でも見られるように、米国は世論を重要視する」とし、「地域住民たちが積極的に権益を要求し、地方自治体がこれを根拠に直接問題を提起するのは、中央政府が米国と交渉する上で大きく役立つ」と話した。
京畿道は議会が条例を制定する前の2002年、官軍協議体を構成し、在韓米軍基地関連の苦情を共同協議すると共に、解決策を講じてきた。京畿道行政2副知事と米軍2師団長が共同議長を務める「韓米協力協議会」がそれだ。韓国側からは京畿道9つの市・郡副市長や副郡守、陸軍大佐級の責任者など21人が、米軍側から2師団と8軍司令部などの将官と佐官級の高級将校21人がそれぞれ参加し、年間数回の本会議と実務会議を開く。
今年4月に開かれた本会議では東豆川のキャンプ・モービルの早期返還、平沢米空軍弾薬庫の早期移転および軍用機騒音の低減対策、抱川(ポチョン)自走砲射撃場の跳弾(砲弾が岩など硬い物体にぶつかって、他の方向に飛ぶこと)遮断防止壁の設置などを案件として取り上げ、現在、協議を進めている。キム・ドングン京畿道行政2副知事は「地域社会と在韓米軍が協議会を通じて問題を共有し、相互理解を深めて、解決策を模索していくというのが大事だ」と話した。彼は「米軍側が防御的姿勢を示すと、我々が(問題の現場や情報に)接近するのはほぼ不可能だ」としたうえで、「以前は米軍側が韓米協力協議会を儀礼的なものとして捉えていたが、協議を重ねるうちに互いに対する理解が深まり、米軍も積極的な態度に変わっていることを感じる」と話した。
しかし、すべての問題を自治体レベルで解決できるわけではない。キム副知事は「現在、京畿道韓米協力協議会は両方がそれぞれ与えられた権限の範囲内で最大値まで進んできたと思う。その範囲を超えるためには、(中央政府レベルで)法令と制度の改善が必要だ」と話した。