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「血は繋がっていなくとも皆私の子供」海外養子縁組記録を保管し続けた“混血児の父”

登録:2017-05-13 05:08 修正:2017-05-13 08:29
11日「養子縁組の日」 
1073人の海外養子縁組記録を保管してきた 
「混血児の父」ソ・ジェソンさん 
国内で養子縁組忌避され2015年にも374人が海外に

 戦争は人生の軌跡を丸ごと変えてしまう。仁川(インチョン)甕津郡(オンジングン)徳積島(トクジョクト)に住むソ・ジェソンさん(88)もそうだった。大学(国立釜山水産大学、現釜慶大学)に進学したが、戦争が勃発し、軍に徴集され、仁川上陸作戦にも参加した。4年後に除隊してから故郷の徳積島に戻ってみると、島は避難民で溢れかえっていた。島の人口は1万人を超えており(現在1500人)、子どもたちが多かった。親を失った孤児たちの泣き声が島中に響いた。10日、徳積島西浦里(ソポリ)で会ったソさんは「1955年頃、この町に1000人以上の子どもがいた」と話した。

仁川市徳積島にあるソ・ジェソンさんの一部屋は彼が米国などへ養子に送った混血児童たちの記録で埋め尽くされている=パク・ギヨン記者//ハンギョレ新聞社

 ソさんは大学への復学を諦めて島に残った。それから4・19革命が起き、町の人たちは自由党所属の里長を引き下ろしてソさんを新しい里長に選んだ。里長を経て、面の書記として働いていたソさんに「西海離島のシュバイツァー」と呼ばれたチェ・ブンド(Benedict Zweber)神父が訪ねてきた。ドイツ系米国人のチェ神父は1962年から、西海(ソヘ)にある22の公所(本堂より小さな聖堂)を管轄する延坪島(ヨンピョンド)本堂の主任神父だった。チェ神父はカトリック信者であるソさんの事務室まで来て彼を説得し、6カ月後、ソさんは公務員を止め、チェ神父と共に戦争孤児の面倒を見始めた。ソさんが妻と共に徳積島に立ち上げた孤児院の「ソンカジョン」では、戦争や台風、疾病などで両親を失った子ども約20人が生活していた。その後、ソさん夫婦は、仁川富平(プピョン)山谷洞(サンゴクドン)の「聖ウォンソンシオの家」を運営することになり、1997年に閉鎖されるまで院長として100人を超える子どもたちの面倒を見てきた。1600人以上の子どもたちがここを経て、米国やカナダなどに養子縁組された。

 米軍基地がある仁川富平は混血児童が多かった。親がないうえ、混血の子どもたちは「見えない人間」、「悩みの種」だった。行く所のない子どもたちは国外で里親を探すしかなかった。そのように海外に養子に出された子どもたちが、いつからかソさんを再び訪れ始めた。小学校の時、米国に養子に出されたホン・ソンジェ、ソンホン兄弟が1982年に初めて彼を訪れた。「兄弟がそれぞれ他の家庭に養子縁組されたが、ある日、生みの親を探しに来ました。最初は子どもたちの記録に名前と基本的なものだけを書いておいたが、それでは駄目だと思いました。(成長して生みの親を探しにくるかもしれない子どもたちのために記録を)きちんと残しておかねばと思って、あれこれ付け加えていきました。血は繋がっていなくとも、みな私の子どもだから」。ソさんが見せてくれた古い書類綴じには子どもたちの写真や名前、性別、生年月日、住民番号、本籍、住所、保護者の連絡先、特異事項、養子縁組されたところの住所などが書き込まれていた。養子に出された子どもたちの生年月日を基準に1957~1996年の間、1073件に達する。

ソ・ジェソンさんが自宅で保管している養子縁組された混血児童たちの記録パク・ギヨン記者//ハンギョレ新聞社

 仁川移民史博物館は昨年ソさんの記録で展示会(「もうひとつの移民、海外養子縁組」特別展)を開いた。ソさんの記録は保健福祉部傘下の中央養子縁組院が昨年すべて電算化(スキャン)した。中央養子縁組院は国外に養子に出された人たちの「ルーツ探し」を助けるため、まだ残っていたり、廃業した児童保護施設のアナログ記録を集めて電算化する作業を行っている。昨年まで21の機関から約3万9000件を集めた。ソさんは「聖ウォンソンシオの家」運営をやめてからも、記録を個人的に保管しており、中央養子縁組院側に提出した。中央養子縁組院関係者は「個人がこれほどの規模の資料を保管してきた事例はソさんが唯一だ」と話した。

 昨年末現在、海外に養子に出された人は17万人規模である。中央養子縁組院の記録物の電算化は、来年を目途に完了する予定だが、昨年だけでも自分の生みの親を探してほしいという要請が1600件ほど受付された。「所在の把握に成功するのは1000件程度だが、実際生みの親と会う場合は15%程度に過ぎない」と養子縁組院関係者は伝えた。韓国は養子縁組された児童の人権を強化するハーグ国際児童養子縁組条約加盟国だが、依然として「児童輸出国」の不名誉を抱えている。韓国よりも1人当たりの国民所得が低いマレーシアやバングラデシュ、パキスタンのような国も国外への養子縁組をしないが、韓国では2015年にも、養子縁組された1057人のうち374人(35.4%)が海外に養子に出された。5月11日は2005年に政府が定めた「養子縁組の日」だ。保健福祉部は13日、ソウル世宗大学の大洋ホールで養子縁組の日記念行事を開く。ベルギーに養子に出された世界的に有名なギターリスト、デニス・スンホ・ヤンセンス(Denis Sungho Janssens)氏などが出席する。

徳積島/パク・ギヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/794532.html 韓国語原文入力:2017-05-12 20:12 
訳H.J(2347字)

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