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[ルポ]「国が真っ二つだなんて…民心は弾劾賛成の方だ」

登録:2017-03-02 08:17 修正:2017-03-02 09:09
社会エディターが見た三一節の広場 

昼の世宗路を埋めた「弾劾反対」太極旗 
「苦労知らず育った子らが大人たちを無視する」 
彼らの共感は疎外感・戦争の記憶 
演壇に立った大統領代理人「ろうそくは闇の子」扇る 

午後遅く、世宗路には黄色いリボンをつけた太極旗 
セウォル号の焼香終えた50代は言う 
「歴史に恥じないためには弾劾を」
三一独立運動98周年を迎えた今月1日午後、警察車のバリケードを境にソウル世宗大通りの交差点と光化門広場でそれぞれ弾劾反対集会と弾劾を求める集会が開かれた=写真・共同取材団//ハンギョレ新聞社

 1日、ソウル光化門(クァンファムン)広場の方向へ向かう西小門(ソソムン)道、大邱(テグ)・忠清北道・全羅北道などの地域のナンバープレートをつけた大型観光バスからリュックサックを背負って太極旗を手にした人々が案内の旗を前に果てしなく降りたった。

 三一節の昼、世宗(セジョン)大通りには若者層もたまに見受けられたが、年配者が圧倒的だった。記念の自撮り写真を撮り、演説に拍手と歓呼を送る彼らの表情は多少興奮しており、時には決然としていた。光化門広場北側の世宗路小公園で開かれた愛国団体総協議会(愛総協)の集会から東和(トンファ)免税店前の韓国キリスト教総連合会の三一万歳運動救国祈祷会、続いて開かれた「大統領弾劾棄却のための国民総決起運動本部」集会まで、昼間の世宗大通りでは弾劾反対の声と太極旗の波で埋め尽くされた。彼らは2002年のワールドカップの時や2008年の狂牛病デモの時、この道を埋め尽くしていた主役ではなかっただろう。普段メイン舞台だったソウル市役所前広場から900メートル以上初めて「前進」した彼らの浮き立った雰囲気は、理解できなくもない。

 「喧嘩になると思って娘にはできなかった話を、全部記者に話すよ」。70代のある女性が言った。「夫は北からやって来て、苦労して子どもたちだけは立派に育てたが。いまは娘が私たちを変に見る。スマートフォンを見ていたらあやしいカカオトークを見ていると思って奪ってしまった。苦労を知らずに育った子どもらが大人たちを無視する。教育が間違っているからそうなんだ。南北も分かれたが、慶尚道と全羅道が分かれ、江南(カンナム)と江北(カンブク)が分かれ、世代も分かれて、こうして家族まで分かれなければいけないのか?」

三一独立運動98周年を迎えた今月1日午後、警察車のバリケードを境にソウル世宗大通りの交差点と光化門広場でそれぞれ弾劾反対集会と弾劾を求める集会が開かれた=写真・共同取材団//ハンギョレ新聞社

 家族と4回目に自発的に参加したという50代の男性は、「朴槿恵に(大統領選の時)投票しなかったが、タブレットPCの“真実”を知って黙っていられなかった。誰がお金をもらってここに来るのか。私もここに来れば10万ウォン(約1万円)ずつ支出する。ろうそくよりもっと平和的だ」と、マスコミが歪曲していると主張した。検察と特検で「誠実に調査を受ける」と何度も約束しながら、調査どころか憲法裁の最終弁論にも出席しなかった大統領については、誰も答えようとしなかった。

 疎外感と戦争に対する記憶とトラウマは、彼らが共有する最も大きな感情のように思えた。あるブースには、「左翼たちの魔女狩り、弾劾されれば皆死ぬ」という文句が書かれていた。いま広場に出てきている一部の年配の世代は、自分たちが苦労して培ってきた一握りの安定まで奪われるという被害意識に浸っているのではないだろうか。確かなのは、このような疎外感と恐怖を煽る者がいるという点だ。大統領代理人団のキム・ピョンウ弁護士が舞台に上がった。「私を老いて病気で糖尿病にかかった狂った弁護士と罵倒するが、老いて病気なのが罪ですか?」彼は続いて話した。「ろうそく(集会の市民)は闇がおりると赤い旗を振る闇の子たちです。彼らが太極旗を掲げるのを見ましたか? …われわれはろうそくに押される2等国民ではありません!」

 軍歌が鳴り響く愛総協集会場の隣にろうそく集会の舞台が見えた。前方には「ろうそくは力を抜かない」、「うわべはいらない」(詩人シン・ドンヨプの詩)などの筆文字が書かれた輓章を文化芸術家たちが準備中だった。ボランティアたちは、セウォル号のリボンを作ったり、太極旗に黄色いリボンをこまめにつけていった。セウォル号の犠牲者の焼香を終えたパク・ボプスさん(51)は「一部でしきりに大韓民国が真っ二つになったというが、これの何が真っ二つなのか。朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領から始まった盲信が、現在の弾劾反対勢力の感情ではないか。三一節なので歴史に恥じないようにという民心は、弾劾認容にあると思う」と話した。

 しとしとと雨が降る中、午後5時に始まった18回目のろうそく集会には、日本軍慰安婦被害者のイ・ヨンスさんが舞台に上がった。「25年間、雨が降ろうが雪が降ろうが日本の謝罪を要求するデモを開いた。今回の韓日慰安婦合意を導いた朴槿恵(パク・クネ)大統領を弾劾させ、ユン・ビョンセ外交部長官を解任させなければならない」と述べたク・スンイさんがアリランを歌い始めた。両手に黄色いリボンのついた太極旗とろうそくを持った市民たちが、雨具を着て冷たい地べたに座って歌うアリランが、がっちりと囲んだ警察車のバリケードと弾劾反対集会側の妨害の騒音を突き抜け広場に鳴りひびいた。ユン・ジェジンさん(56)は「競い合う様に集会を開いているから、今は二つに割れて見えるかも知れないが、民心は弾劾の方にある。弾劾案成立後、度々の世論調査でも確認されたではないか。それが常識だ」としながらも、「一部の年配世代たちを追い込むのではなく、理解して説得しなければならない」と話した。大韓民国に“2等国民”はいない。ただ、煽る者たちがいるだけだ。

キム・ヨンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/784772.html 韓国語原文入力:2017-03-01 22:24
訳M.C(2459字)

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