「国政壟断」事件主犯のチェ・スンシル氏(拘束)が先月19日から最近まで9回にわたり開かれた裁判で一貫して「知らぬ存ぜぬ」戦略を使っている。しかし、証言をした人物らは大半がチェ氏の容疑を認める趣旨の証言をし、チェ氏が窮地に追い込まれているというのが法曹界の大方の評価だ。
チェ氏に適用された容疑は、職権乱用権利行使妨害・強要・強要未遂・詐欺未遂の疑いだ。このうち裁判で勝敗を分ける部分は、ミル・Kスポーツ財団への募金の強制性が立証できるかどうかだ。現在まで法廷に出た証人らは概ね検察側に軍配を上げていると言える。全国経済人連合会(全経連)のイ・スンチョル常勤副会長は19日の公判で、「アン・ジョンボム元大統領府政策調整首席が企業の拠出金の規模を決めて通告した」と証言した。続いて全経連のイ・ヨンウ社会本部長は「チェ・サンモク当時大統領府経済金融秘書官が、ミル財団への拠出の意思を明らかにしない企業に腹を立てた」という趣旨で陳述した。これは「企業の自発的募金」という大統領府とチェ氏の釈明に相反する証言だ。
ミル・Kスポーツ財団の運営過程に大統領府が積極的に介入したという証言も出てきた。Kスポーツ財団のノ・スンイル部長は25日の公判で「財団スタッフの履歴書を大統領府に送り、検証は大統領府がしたものと聞いている」とし、同財団のチョン・ドンチュン前理事長も「Kスポーツ財団の設立は朴槿恵(パク・クネ)大統領が行ったと思う」と証言した。
一方、証人らがチェ氏と大統領との関係を情況から推測して証言しているものが多く、検察もチェ氏と朴大統領との直接通話の根拠をまだ提示できていない部分は、チェ氏側に有利な部分だ。
検察が裁判所にチェ氏と朴大統領との関係を情況証拠を中心に提示したのは、複雑な意思伝達の構造のためだという指摘が多い。起訴状と証人たちの証言を総合すると、チェ氏がチョン・ホソン元秘書官に指示をすると、チョン元秘書官は朴大統領にこれを報告し、朴大統領はこれをアン・ジョンボム元首席に伝え、アン元首席が全経連などに指示をするという構造だ。チェ氏と朴大統領の直接の関連証拠が出てくるのは容易でないということだ。
ユン・ボクナム弁護士(民主社会のための弁護士会)は「検察が証拠を多く提出すれば犯罪が証明されたような錯視効果が起こる恐れがあるが、刑事裁判は厳格な犯罪証明を要求する。今まで数多く出てきた証拠は法理的に問い詰めれば効力を失いかねない」と分析した。一方、ソウル地域のある部長判事は「大統領府で起きた事の特性上、共謀体系が複雑であらざるを得ない。たとえチェ氏とアン元首席が直接連絡しなかったとしても、チェ氏から始まった指示が大統領を経て、結局全経連側に伝わったことが立証されれば、職権濫用の犯罪が成立する可能性がある」と話した。