裁判所が日本軍「慰安婦」被害者たちの名誉を毀損した疑いで裁判にかけられた『帝国の慰安婦』の著者である世宗大学の朴裕河(パク・ユハ)教授(60)に無罪を言い渡した。
25日、ソウル東部地裁刑事11部(裁判長イ・サンユン)は「検察が起訴した同書の35カ所の表現のうち2カ所で『朝鮮人日本軍慰安婦の中には自発的な意思によって慰安婦となった人がいる』という名誉毀損的事実の適示に当たる表現があるが、これは“慰安婦”集団を指すものであって、それをもって告訴人たちを被害者と特定することはできない」として、このように述べた。
裁判所は「同書の内容全体をみれば、主な著述の動機が『韓日両国の相互信頼の構築を通じた和解』という目的から始まっており、『慰安婦』被害者たちの社会的評価を低下させようという目的があったとは見られないため、名誉毀損の故意も認められない」と判断した。裁判所はさらに、「同書は、朴教授が主流の見方とはことなる立場から自分の主張を開陳する学術的性格を持った教養書であり、朴教授の見解に対する判断は、学問と社会の場で市民と専門家らが相互検証や論駁を経る過程で行われるべき」としたうえで、「公開討論と世論形成に向けて表現の自由を幅広く保障しなければならない」と付け加えた。
裁判所は、検察が名誉毀損の容疑で起訴した35カ所の表現のうち、30カ所は朴教授の意見表明であるため、名誉毀損に該当せず、「日本や日本軍が、公式的な政策を通じて朝鮮人女性たちを強制連行し、日本軍慰安婦にしたことはない」と表現した3カ所は事実の適示に当たるが、名誉毀損には当たらないと判断した。
判決直後、傍聴席にいた「慰安婦」被害者ハルモニ(おばあさん)のイ・ヨンスさん(90)は「有罪にしなければならないのに、これはいけません」とし反発した。「慰安婦」被害ハルモニ側の法律代理人であるヤン・スンボン弁護士は「事実適示なのか、意見表明なのかが名誉毀損の判断において重要だが、裁判所は35カ所のうち5カ所だけを事実の適示と判断した。納得がいかない。本に対する裁判所の理解が足りないようだ」として「検察が控訴すれば、反論資料を追加で提出する」と話した。