土曜日の14日午前11時、ソウル市麻浦区(マポグ)望遠洞(マンウォンドン)のあるカフェでは、それぞれ離れてぽつんと座った6人が無言で本をめくっていた。ある人は軽くソファーに身を任せて、またある人は腰をまっすぐ伸ばしたまま、夢中になって本を読んでいた。穏やかな音楽とコーヒーやお茶を入れる音以外には何も聞こえないカフェで、彼らは「黙読パーティー」を楽しんでいた。
「黙読パーティー」は、米国やニュージーランドなどで「サイレント・リーディング(silent reading)」、「スロー・リーディング(slow reading)」という名で広がった「沈黙の中で本を読むパーティー」である。黙読パーティーは、集中して本を読みたい人たちに携帯電話や騒音から離れ、読書に夢中になる時間を与える。韓国でもこのようなニーズに合わせて、書籍関連のスタートアップや書店などで定期的にカフェやバーを貸し切り、「黙読パーティー」を開いている。「家で本を読む時は、携帯電話や他のことで完全には集中できませんでしたが、1週間に1度、決まった時間に本が読めるのが気に入って、もう10回くらい参加した」。工学博士のパク・ジュンヒョンさん(33)は、黙読パーティーの長所として、「他のことに邪魔されず本に集中できる時間」を挙げた。図書推薦サービスのスタートアップ「フライブック」が2014年12月から毎週土曜日午前に開いているこの黙読パーティーでは、参加者たちが自己紹介することもなく、静かに本を読んだ後、本をテーマに話し合ってから解散する。フライブックのキム・ジュンヒョン代表は、オフラインで本を読む人たちに会ってみたいと思っていたところ、外国で活発な「サイレント・リーディングパーティー」に着目し、黙読パーティーを開始した。
従来の読書会と異なり、“宿題”がない点も魅力に挙げられる。同日、黙読パーティーに参加して13回目という会社員のチャン・ジュホさん(30)は「通常、読書会では決まった本を事前に読んで来て話し合う。いつも気に入った本が選べるわけでもなく、仕事もあるので、そのような会に参加するのは宿題のように感じられた」としたうえで、「それぞれ読みたい本を読んで、読んだ本について話したり、関連した漫画や映画の話もできるのがいい」と語った。 同日、アモス・オズの小説『わたしのミハエル』を読んだチャンさんは、「ウェブトゥーン『番人のワルツ』にもこの本の話が登場するが、一緒に比較しながら読むといいかもしれない」と、パーティー参加者たちに本を紹介した。
“花金”の午前零時から7時間にわたる「徹夜黙読パーティー」を楽しむ人たちもいる。京畿道高陽市(コヤンシ)にある漢陽文庫は、昨年3月から月に1度「深夜徹夜黙読パーティー」を開いている。本屋近くのカフェと協力し、金曜日から土曜日に日付が変わる夜12時から朝7時まで4人かけの座席に1人で座って本を読む自由を与える。参加費は1万ウォン(約970円)だ。書店側は予め参加者たちが読みたい本のリストの申請を受けて、黙読パーティの開催日にカフェに申請を受けた本を何冊か用意しておく。漢陽文庫のキム・ミネ室長は「地域住民10~12人が参加しており、黙読パーティーの常連さんもできた」と話した。
「1泊2日のおひとり様黙読パーティー」もまもなく実現する見込みだ。ソウル麻浦区(マポグ)上岩洞(サンアムドン)にある書店ブック・バイ・ブックは25日から約20平方メートル(6坪)のワンルームで一人で“読書旅行”をする時間と空間を提供するという趣旨で、「一読一泊プロジェクト」を開始する。ブック・バイ・ブックのキム・ジンヤン代表は「参加費5万ウォン(約4800円)で事前予約を受けているが、すでに3カ月先まで予約が埋まった」とし、「静かな空間で騒音に邪魔されずに本を読みたい人たちが、そんなに多いということを感じる」と話した。