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ソウルの大型書店「教保文庫」の変身には理由がある

登録:2015-12-04 00:04 修正:2015-12-04 06:28
「本を売る」書店を超え「本を読む」空間を 
創立者の哲学、新装なった教保文庫光化門店
教保文庫は店内のあちこちに本を読める小さなテーブルとソファを用意した。読みたい本を選んで図書館やブックカフェのように気楽に本を読める空間になった =教保文庫提供//ハンギョレ新聞社

 オンライン コミュニティに掲載された「ある大型書店の運営方針」というタイトルの文がネチズンの間で話題になっている。

 掲載された文に書かれた大型書店の運営方針によれば、すべての顧客に親切で、小学生にも必ず尊敬語を使うこと▽本を1カ所に立ち止まって読むのを絶対に止めたりしないこと▽本をあれこれ抜いてみるばかりで買わなくても睨んだりしないこと▽床に座ってノートに本を書き写していても制止したりしないこと▽時々本を盗んで行っても泥棒扱いして侮辱したりせずに、人目につかない所に連れていき優しく言い聞かせること、などの内容が並んでいる。

 3日、ハンギョレが確認したところ、この大型書店とは「教保(キョボ)文庫」であることが分かった。 この運営方針は教保文庫の創業者である故シン・ヨンホ氏の自叙伝『道がなければ道を作って進む』の247ページに詳細に記録されている。

 自叙伝によれば「毎日のように教保文庫の売場を見て回ったシン・ヨンホは、5つの指針を整理して社員に伝え、これを実践させた」と書かれている。 また「この5つの指針は本が汚れたり無くなったりしても必ず守るように言った。 そのために社員はとても苦労したが、訪ねてくる顧客にとっては教保文庫は完全な開放型書店であり本の天国になった」と説明した。

教保文庫は店内のあちこちに本を読める小さなテーブルとソファを用意した。 読みたい本を選んで図書館やブックカフェのように気楽に本を読める空間になった =教保文庫提供//ハンギョレ新聞社

 チン・ヨンギュン教保文庫ブランド管理チーム代理は「教保文庫の開店初期の1981年に創立者が強調した運営方針が今になって話題になっているが、私たちもこのような内容が事実か確認するのに時間がかかった」として「このような指針はほとんどが口頭で伝えられたし、新しい内容というよりは常に守ってきたこと」と明らかにした。

 自叙伝によれば、創立者シン・ヨンホ氏は「本がたくさん読まれるように読者たちと出会える広場を作らなければならない」と考えた。 彼が書店を運営したかった理由は「青少年をはじめ各界各層の読者たちが願う本と出会える場所を作りたいという思いから始まった」とのことだ。

 「本を売る」書店を超え「本を読む」文化空間を作りたかった創立者の経営哲学は、先月17日に新装なった教保文庫光化門店でも確認できる。

 ソウル鍾路(チョンノ)区の教保文庫光化門店には、先月17日から長さ11.5メートル、幅1.5~1.8メートル、重さ約1.6トンの大型テーブル2台が書店の中央に置かれている。 5万年前に水没していた巨大カウリ松で作った読書テーブルで、100人の読者が座って本を読むことができる。

 教保文庫はまた、店内のあちこちに本を読める小さなテーブルとソファを用意した。 読みたい本を選んで図書館やブックカフェのように気楽に本を読める空間になった。 チン・ヨンギュン代理は「オフライン書店の役割は書店に来て本を読みゆっくり過ごす文化を体験できるようにすること」とし「店舗の空間デザインをする時、読者がゆっくりできるように考えて整えた」と明らかにした。

 大型書店の変身に読者はどう反応しているだろうか? オンラインとオフライン空間で反応は多少交錯していた。先月26日、教保文庫光化門店で会った会社員オ・ジヨンさんは「書店での読書が楽になって、オフライン書店を頻繁に訪ねるようになった」と話した。さらに「静かに本を読む雰囲気を作ってくれて、余裕をもって本を読めて素晴らしい」と説明した。

 だが、オンラインのコミュニティでネチズンたちは「書店で新しい本を購入をする消費者の立場としては困る時がある」として「必要な本を買いに来たのに、他の人が読んだ跡が残っていれば本を買いたくなくなる」とコメントした。 また別のネチズンは「書店が図書館のようになれば、出版社と作家が損害をこうむることになる」と指摘した。

 このような憂慮に対してチン代理は「オフライン書店では顧客の手が触れた本をなくすことはできない」として「本を読む空間が多くなって問題になっていることはなく、売場を訪問する読者たちは基本的に新本を扱うエチケットが良い」と話した。 さらに「漠然とSNSで飛び交っている指摘を確認したが、実際に憂慮するほどのことはなかった」として「実際に書店や出版社の売上を脅かす水準ではなく、一部の出版社はテーブルの上に本を置きたがっている」と明らかにした。 そして「本を読める空間をより多く確保することがオフライン書店が進まなければならない方向」と強調した。

 最後に教保文庫は「今月10日頃に工事が終われば400席以上の本を読む空間ができる」とし「全国に14ある店舗でも今後導入する予定」と付け加えた。

パク・スジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/720218.html 韓国語原文入力:2015-12-03 16:21
訳J.S(2274字)