本文に移動
全体  > 文化

[インタビュー]ソウル初の子供専用「奇跡の図書館」開館

登録:2015-08-24 17:08 修正:2015-08-25 10:01
道峰区奇跡の図書館マ・ヨンジョン館長
道峰区奇跡の図書館マ・ヨンジョン館長=ハン・スンドン先任記者 //ハンギョレ新聞社

 「この国のすべての子供は明るく、正しく、自由に育つ権利を持っています。子供たちは差別と不平等に苦しめられない権利、遅れをとらない権利、不当に抑圧されない権利を持ちます。よい子供たち育てることは社会の責任であり義務です。 『奇跡の図書館』プロジェクトは、非営利民間団体『本を読む社会つくり国民運動』(本を読む社会文化財団)が2003年から始めた子供専用図書館の建設事業です。 この事業は民間団体と地方自治体間の民官協力方式で進行されています」

 7月30日に開館した「道峰区(トボンク)奇跡の図書館」はそのようにして建てられた12館目の子供専用図書館だ。 2003年11月に順天(スンチョン)を皮切りに提川(チェチョン)、鎮海(チネ)、西帰浦(ソギポ)、済州(チェジュ)、清州(チョンジュ)、蔚山北区(ウルサンプック)、錦山(クムサン)、富平(プピョン)、井邑(チョンウプ)、金海(キメ)に建てられ、道峰図書館はソウル地域で初の奇跡の図書館でもある。

 ソウル市道峰区が土地と建設費をまかない本を読む社会文化財団が設計、監理した道峰奇跡の図書館を訪れる人が異口同音に言う最初の言葉が殆ど「素晴らしい!」という感歎詞だ。

 北漢山(プッカンサン)から流れる水が集まる中浪川(チュンナンチョン)と水落山(スラクサン)が見渡せるソウル道峰区マドゥル露の住宅街の一画に作られた道峰奇跡の図書館。企画段階を含めて4年余の作業の末に開館したこの図書館のマ・ヨンジョン館長(34、写真)は一日一日がやり甲斐に満ちているように見えた。「楽しいです。つまらなかったらできません」。1500平方メートルの敷地に建てられたこの図書館は、1・2階の床全体がオンドルになっている。 子供たちは本棚と閲覧室と遊び場と中庭のような庭園が融合したこちらで、素足でどこにでも座ったり横になってごろごろしながら本を読んだり遊んだりできる。 一般図書館にとっては忌避対象になりがちな1~3歳の赤ちゃんも歓迎だ。子供たちと一緒に来た父母たちが休みながら談笑を交わす空間も別にある。 サークル活動室、読書室、青少年と大人の閲覧空間も別にある。子供たちの仮眠室・授乳室もあり、大学路(テハンノ)の小劇場にも劣らない子供・青少年専用劇場まである。

室内の床全体をオンドルに
子供たちの仮眠室・授乳室まで

「中南米パナマ大の資料室での経験が
図書館運営に大きく役立つ」

「韓国の図書館環境が改善され
司書の待遇と認識も良くなることを期待」

 「ゆっくりと本を読み考えられることを基準にすれば、この図書館の受入能力は100~150人程度でしょう。 ところが今は見物に来られる方々まで含めて一日200~300人にもなります。 新築マンションのモデルハウスみたいだという声も聞きます」。マ館長は開館初期のためだとして、少しすれば本来の姿になるでしょうと話した。来館者が珍しがり誉める理由の中には「普通に暮らしてきた四角に定形化された固い生活環境とは違う、多様な形の多彩な空間のおかげ」もあるようだと話した。 市民団体や出版社などが後援・協力・支援する多彩で素朴な企画展も開かれる。

 蔵書は1万4千冊余。「子供図書が全体の90%、青少年・成人図書が10%程度を占めています」。本は今後も購入を続け補完してゆく予定だ。 月~金曜日は午前9時から午後6時まで、週末は午前9時から午後5時までで、火曜日は休館する。

 マ館長は道峰区で生まれ育った。「この図書館作りを見て、私も将来ここで仕事をすべきか考えました」。 2000年に図書館学科(当時の名称は文献情報学科)に入り13年間ごしで大学院まで卒業したが、その期間の半分以上を近隣の道峰1洞の小さな子供図書館長、韓国国際協力団(KOICA)が支援する海外派遣勤務など、図書館業務実体験をして過ごした。「2007~2009年の3年間、中南米のパナマに派遣され、そちらの中心大学であるパナマ大人文学部資料室の電算化とリモデリング作業をしたが、とても満足な体験であったし、私の人生の転換点でした」。厳しい競争に勝ち抜いて一人ぼっちで行った20代の彼女が見たそちらは余りにも異なる世界だった。「びっくりしたのは、そちらの3~5億人にもなる中南米の人々が同じ言語(スペイン語)を使って、メキシコやスペインにあたかも国内のように自由に旅行や留学をして仕事をしているという想像を越える現実でした。その広大な地域には事実上国境はありませんでした。 それを体験して、私たちは驚くほど孤立していたんだな、世界がこのように互いに連結されているんだということをその時はじめて悟りました」。公募過程を経て希望を叶えた三人姉妹の末っ娘であるマ館長は、あらゆる事を一人で克服したパナマ派遣の経験が今になって図書館運営にも大きな力になっていると話した。「韓国の図書館の一般的水準は非常に後れています。 ここだけでなく地域全体の図書館の環境が改善されるよう願います。特に司書の待遇と彼らに対する社会的認識がより高くなることを期待しています」。約40億ウォンの図書館建設費を賄った道峰区庁が運営資金の大部分も工面しており、運営は道峰区施設管理公団が受け持っている。

 道峰区には奇跡の図書館を含めて子供図書館が3館ある。マ館長は比較的自然環境が良く相対的に物価も安い道峰区に引退者をはじめとする老年層人口の流入が増えているとし「その方々が家に閉じ込もって余生を寂しく過ごすのでなく、外に出てきて子供たちに本も読んで互いに話も交わし、自分たちの人生を社会と結びつけられるよう図書館が役割を拡張していく」と抱負を語った。

ハン・スンドン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/705615.html 韓国語原文入力:2015-08-24 09:11
訳J.S(2539字)

関連記事