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韓江氏が『菜食主義者』でアジア初のブッカー賞受賞

登録:2016-05-18 01:27 修正:2016-05-18 07:20
叙情的な文章で「人間の暴力性」を考察 
世界の文学人を魅了
英国ロンドンのビクトリア・アンド・アルバート博物館で16日夜開かれたブッカー賞授賞式で2016年インターナショナル部門の受賞トロフィーを持つ小説家の韓江氏//ハンギョレ新聞社

インターナショナル部門の審査委員長 
「作品の素晴らしさと驚くべき翻訳の結合」 
「韓国文学作品世界化に大きな進展」との評価 
翻訳家の養成などの課題も抱えることに 

申京淑(シンギョンスク)氏の盗作などで低迷した韓国文学 
韓江(ハンガン)氏の受賞で読者取り戻せるか注目

 ノーベル文学賞、ゴンクール賞と共に、世界の3大文学賞とされるブッカー賞(The Man Booker Prize)インターナショナル部門を韓国の小説が受賞したのは、韓国文学のグローバル化の大きな進展といえる。この小説の英訳出版を支援した大山文化財団のクァク・ヒョファン常務(詩人)は17日、ハンギョレとの電話インタビューで「1992年に設立された大山文化財団と2001年に設立された韓国文学翻訳院の支援が成果を上げている証拠」としながら、「若く有能な翻訳人材が続々と登場しており、今後、より多くの成果が期待される」と語った。

 キム・ソンゴン韓国文学翻訳院長も「ノーベル賞に象徴される文学のグローバル化に大きな進展を収めた快挙」と評価した。キム院長は「ブッカー賞のインターナショナル部門が原作者と翻訳者の両方に賞を与えるという点で、特に翻訳者のデボラ・スミス氏の素晴らしい翻訳を高く評価する」としながら、「川端康成のノーベル賞受賞の陰にエドワード・サイデンステッカーという有能な翻訳者がいたように、韓国文学にもついにデボラ・スミスが現れた」と話した。ブッカー賞インターナショナル部門のボイド・トンキン審査委員長が「非凡なバランスとウィットを兼ね備えたこの作品の素晴らしさは、作家とデボラ・スミスの驚くべき翻訳によって同時に実現された」と評価したことからも、翻訳の重要性が窺える。

 だがクァク・ヒョファン常務は、「今回の受賞は新たに現れた肯定的な信号にすぎず、韓国文学のグローバル化における全面的な変化を意味するものとは言えない」とした上で、「翻訳者をもっと体系的に育成する必要があり、韓国の作家と世界の作家たちとの交流の枠組みをさらに拡大しなければならない」と助言した。

韓江氏の小説『菜食主義者』英語版//ハンギョレ新聞社

 一方、2007年に初めて出版された『菜食主義者』は、ブッカー賞候補に上がったというニュースが流れてから、約4万部の売れ行きを記録し、受賞が決定した17日だけで教保文庫とインターネット書店アラジンでそれぞれ4千部前後が売れると共に、イエス24でも前日に比べて38倍もの販売増となった。

 韓江氏のブッカー賞受賞は、昨年の申京淑氏の盗作事件で衝撃と低迷に陥った韓国文学が、読者の信頼と愛情を取り戻すきっかけとしても注目される。今年1月、米国の週刊誌「ニューヨーカー」は、「政府の強い支援を受けて、韓国がノーベル文学賞を受賞できるだろうか?」という企画記事で、文学や読書には興味を持たず、ノーベル賞のような対外的な成果だけにこだわる韓国社会の雰囲気を皮肉った。韓江氏の受賞のニュースが伝えられた17日午前、詩人のアン・ドヒョン氏は「実に喜ばしい出来事だ」としながら、「この際に、本を読む韓国人が増えたというニュースも聞きたい」と所感を語った。

チェ・ジェボン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-05-17 19:30

https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/744266.html 訳H.J

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