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確実な弾劾事由だけを集中審理…憲法裁「弾劾審判ファーストトラック」を検討

登録:2016-12-11 23:42 修正:2016-12-12 07:27
12日午前、裁判官会議で議論 
弾劾に同調する憲法学者らは 
「核心事由だけをかいつまんで審理… 
来年1月末、全部の結論も可能」 
朴大統領の代理人 
「審判の日」遅延戦術を予告
朴槿恵大統領弾劾訴追案が可決され弾劾審判を進める9人の憲法裁判官に関心が集まっている。左からソ・ギソク、アン・チャンホ、イ・ジンソン、イ・ジョンミ憲法裁判官、パク・ハンチョル憲法裁判所長、キム・イス、キム・チャンジョン、キム・イルウォン、チョ・ヨンホ憲法裁判官//ハンギョレ新聞社

 国会の朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾案可決以降、大統領府に向かっていたろうそく集会の市民らの「直ちに下野」の叫びが、今は憲法裁判所に向けた「早急な罷免判決」に集中している。大統領が自ら辞任することを求める主権者らの巨大な政治的要求が、憲法裁という司法手続きによって縮小・遅延されてはならないということだ。そのため弾劾に同調する憲法専門家らは、憲法裁が弾劾訴追の事由一つひとつに取り組むよりは、選択と集中による「弾劾審判ファーストトラック」を要求する。憲法裁判所内部でも「国政の空白最小化」のため、確実な弾劾事由から集中審理し、弾劾可否の決定を最大限前倒しにする方法を考えている。

■朴大統領代理人の「遅延戦術」防ぐ

 「被請求人である大統領朴槿恵を罷免する」、「この事件の審判請求を棄却する」

 9日に国会で弾劾案が可決された朴槿恵大統領に対する憲法裁の弾劾審判の選択肢はこの二つだ。朴大統領とセヌリ党の骨髄である親朴槿恵系、法律的防衛を担う代理人団は、最大限憲法裁の審理を遅延させ「審判の日」を遅らせることが目標だ。いまは国民の怒りに揺れているが、今後政権交代に対する反感を持った保守層や老年層、大邱(テグ)・慶尚北道地域を中心に支持率が一部戻れば、国政逆転の契機を模索することができるという腹案だ。大統領府が11日「大統領の“血の涙”」を公開したのも、同情票集めと無関係ではない。当面朴大統領側代理人に選任されたチェ・ミョンソン弁護士は先月、野党が主催した「弾劾訴追案作り緊急討論会」に大韓弁護士協会法制理事の資格で出席し、「最終決定時点で国政支持率が20~30%ほど上がれば、憲法裁で弾劾を決定するのは難しいだろう」、「来年下半期に持ち越されればあえて弾劾決定をしないだろう」、「検察の公訴状だけ出た段階であり、事実関係の確定に相当な時間がかかるだろう」と主張した。

 しかし憲法裁の内外では、高度の政治性と憲法的判断が必要な弾劾審判を、「事実関係」だけを強調して厳しい証拠主義が要求される刑事裁判の手続きに置き換えようとする意図を強く疑う指摘が出ている。延世大学のイ・ジョンス教授(憲法学)は「迅速な審理で国政の空白と混乱を防止することが憲法裁に与えられた役割だ。ところが政界などでは、弾劾訴追事由が多く審理が長引く可能性もあるという主張をしきりに拡散させている」と懸念した。イ教授は「2004年の新行政首都事件の時、憲法裁は9つの基本権侵害請求趣旨のうち、国民投票権侵害の一つだけを判断して違憲を宣言し、残り8つは判断しなかった。すでに侵害が確定したため、残りの請求の趣旨は判断をしなくても請求人側に不利なことがないためだ」と説明した。

 棄却決定をする時は、請求人側が主張した内容を一つひとつ漏れなく確認してこそ「判断の遺脱」が生じない。2004年、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領弾劾当時の憲法裁の議論過程をよく知る憲法学界関係者は「盧大統領と朴大統領弾劾審理を比較するのは適切ではない」とした。盧元大統領の弾劾棄却決定には訴追日から63日かかった。当時、盧元大統領は中央選挙管理委員会から選挙中立義務違反「警告」を受けたに過ぎなかったが、朴大統領は訴追当時、すでに14の憲法条項違反はもちろん、職権乱用・強要・公務上秘密漏えいの容疑の共犯として立件された被疑者の身分だ。そのため、盧前大統領の時には「棄却」のために一つひとつの弾劾訴追事由を消していく「消去法の審理」だとすれば、今回の朴大統領の弾劾審判は最も確実な弾劾事由から一つずつ積み重ね、「弾劾ベースライン」を越えた瞬間に審理を中断し罷免を決定すれば良いということだ。イ・ジョンス教授は「今回も憲法裁に意志があるなら、重大な憲法違反事由だけでも弾劾を決定することができる。残りは検察や特検捜査でまだ確定されていない事案であるため判断しないとし、棄却すればよい」と指摘した。賄賂罪など事実関係が複雑で立証に時間がかかる「法律違反」事項に対する処罰は、特検チームに任せ、憲法裁は選挙で選出された大統領が委任された権力を私有化して壟断した「憲法違反」の事項を集中審理すべきだということだ。

 このような理由から、弾劾の事由は十分だとみなす憲法専門家らは「訴追事由のうち明確で重要なことだけをかいつまんで集中的に審理すれば、パク・ハンチョル憲法裁判所所長退任(1月31日)以前にでも罷免可否を決定することができる」と主張する。

 この日、チェ・スンシル国政壟断事件の検察特別捜査本部が捜査を終え、朴大統領とチェ・スンシル氏が事実上国政を「共同運営」した証拠を挙げ、「弾劾審判ファーストトラック」はさらに追い風を受けることになった。憲法裁は12日午前10時、裁判官会議を開き、集中審理方式などを決定する。憲法裁関係者は「国政空白の問題を憲法機関である憲法裁が放置することはできないのでは。むやみに審理を長引かせることはできない」とし、迅速な審理と判断の必要性を示唆した。

日曜日にも出勤した所長と主審:パク・ハンチョル憲法裁判所長(左写真)と朴大統領弾劾審判の主審であるカン・イルウォン憲法裁判官が11日午前、ソウル鍾路区齋洞の憲法裁判所に出勤している/聯合ニュース

■裁判官9人で同時多発証拠調査が可能

 大企業の総帥など証人が数十人に及ぶ中で、その都度弁論期日を決め、裁判官9人が同時に証人尋問などを行う場合、証人が欠席したり、朴大統領側代理人の遅延戦術に巻き込まれ審理期間が延びる恐れがある。法曹界ではこれを防ぐため、憲法裁判官9人が証拠調査をそれぞれ分担する方法も可能だと指摘している。憲法裁判所法(第31条)は、当事者または証人尋問など証拠調査を「必要と認める場合、裁判官のうち1人を指定して行うことができる」と規定している。これを積極的に活用し、同時多発的な証拠調査で証人尋問期間を大幅に縮めることができるということだ。法曹界の高位関係者は「憲法裁はさまざまな事件を同時に担当する裁判所とは異なり、弾劾審判事件一つだけを集中的に審理することができる。弁論期日を毎日押さえて証拠調査を行えば、基本的な事実関係の把握は一週間あれば可能だ」とした。

 憲法裁判所内部では、一部の証人たちの場合、国会の国政調査特委聴聞会の陳述をもって証人尋問に替える案も検討しているという。

キム・ナムイル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/774198.html 韓国語原文入力:2016-12-11 21:50
訳M.C(3080字)

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