事業主が提供する交通手段で通勤する最中に起きた事故だけを労働災害と認定する労働災害補償保険法(労災保険法)の条項に対し、韓国の憲法裁判所は憲法に反するものだと決定した。自家用車や公共の交通手段による通勤で起きた事故も、労働災害と認定しなければならないという趣旨だ。(憲法裁判所の今回の決定で)国会が来年12月31日までに関連法条項を改定しなければ、この条項は効力を失うことになる。
憲法裁判所は30日、自転車で退勤中に交通事故に遭った労働者が、勤労福祉公団から受けた療養不承認処分に対し、「労災保険法第37条」が平等の原則に反するとして提訴した憲法訴願事件で、過去の合憲決定を覆して裁判官6対3の意見で憲法不合致(違憲)の決定を下したと30日明らかにした。労災保険法第37条は、通勤交通事故のうち「事業主が提供した交通手段やそれに準ずる交通手段を利用するなど、事業主の支配管理のもとで通勤中に発生した事故」だけを業務上の事故として認めている。
憲法裁判所は決定文で「徒歩や自己所有の交通手段、一般交通手段などを利用し通勤している労災保険加入勤労者(非恩恵労働者)は、事業主が提供する交通手段を利用して通勤する労災保険加入勤労者と同じ労働者なのにもかからわらず、業務上災害と認定されていないという点で差別的な扱いが存在する」と明らかにした。さらに「彼らを区別して扱う合理的な根拠がないのに、非恩恵労働者に経済的不利益を与え、合理的な理由なく恣意的に差別することになるので、憲法上の平等原則に反する」と判断した。
特にアン・チャンホ裁判官は「労働現場で労働災害による障害・疾病などで『人間の尊厳に相応する生活に必要な最小限の物質的な生活』が脅かされる国民には、より積極的に保護措置がなされなければならないことを憲法が要請している」として、2013年に同じ条項に対し合憲から憲法不合致へと意見を変更した理由を明らかにした。