会議前から北東アジア主要国の「外交戦争」と呼ばれたASEAN地域安保フォーラム(ARF)をはじめとするASEAN(東南アジア諸国連合)関連の連続外相会議が24〜26日、ラオスのビエンチャンで行われた。会議での争点は三つだ。南シナ海の紛争、北朝鮮核問題、高高度防衛ミサイル(THAAD)の在韓米軍配備の決定をめぐる議論である。
まず、南シナ海紛争について。会議は国際常設仲裁裁判所(PCA)が中国の南シナ海領有権の主張を無力化する判決(12日)を発表した状況を前提に行われた。中国は一応「防御」に成功した。 ASEANとASEAN地域フォーラム外相会議の議長声明には判決に関する記載が全くなかったことに加え、昨年のASEAN地域安保フォーラムでの議長声明の南シナ海に関する文言にあった「国際法を尊重」という表現が削除された。だが、二つの外相会議の議長声明には拘束力がない。象徴的な意味だけを持つ。一方、国際常設仲裁裁判所の判決は国際法の権威を持つ。だが「無効」を訴える中国政府を相手に判決内容の履行を強制する手段はない。
南シナ海をめぐる米中対決は膠着状況にある。膠着した局面を自らに有利なよう打開しようとする米中の動きが加速するばかりだ。ジョン・ケリー米国務長官は、ASEAN地域安保フォーラムが終わる前に、中国を国際常設仲裁裁判所に提訴した当事国であるフィリピンを訪問した。南シナ海での攻勢を強化させる行動だ。しかし、中国としても習近平国家主席が提示した「一帯一路」の戦略を成功させるべく推進するには、南シナ海で優越な地位を確保、維持することがカギとなる。盾と矛の争いは今後も続く。米中の東南アジア諸国を相手にした「説得・強圧外交」も熱くなるであろう。
次に北朝鮮核問題。北朝鮮の4回目の核実験などに対応し、国連安全保障理事会が決議2270号を採択したところであり、そもそも議論の対象ではない。ただ、米中が南シナ海やTHHAD問題で対峙する状況が、北朝鮮核問題にネガティブな影響を与えるかどうかに関心が集まった。ASEAN地域安保フォーラム議長声明の文案だけ見ると「影響なし」という評価もできる。しかも中国の王毅・外交部長は北朝鮮のリ・ヨンホ外相との二者会談で「中国政府の『朝鮮半島非核化3原則』(非核化、平和・安定の堅持、対話を通じた平和的解決)は変わらない」と強調した。だが、「影響なし」という評価は表面的だ。実際はすでに韓中関係の悪化と対北制裁の国際協力の亀裂の兆しが現実化していることが明らかだ。THHAD配備論争のネガティブな影響だ。王毅部長の「THAAD反対外交デモ」が代表的だ。王毅部長は韓国のユン・ビョンセ外交部長官を冷遇し、北朝鮮のリ・ヨンホ外相を目立って歓待する「外交デモ」で韓国への不満を強く示した。
いま北東アジアには暴風前夜の緊張が漂う。重要な行為者が「現状変更」をしようとしているからだ。北朝鮮が核実験、弾道ミサイル発射などで強く現状変更をしようとしているのに加え、米国が南シナ海、THHADを前面に出し、中国への牽制戦線を拡大・強化しようとしている。国際政治で「現状変更」の試みは、衝突に広がることも少なくない。
いま北東アジア情勢を規定する最も重要な対立線は米中の対立と衝突だ。東アジアの覇権を維持しようとする米国の「攻撃的防御」戦略と、東アジアの主導国として台頭する中国の「防御的攻撃」戦略の衝突でもある。覇権国(米国)が攻撃者になり、台頭国(中国)が防御する逆転した状況の展開は、北東アジア情勢の危険性と複雑さを加重させる。
韓国が生き残る道は、米中対立に流されず朝鮮半島の非核化を追求することしかない。ところが朴槿恵政権の選択は逆だ。THAADの在韓米軍配備の決定により、順調な韓中関係に波乱をもたらした。ここで米国の説得と圧迫による日本軍「慰安婦」被害者の問題に関する12・28合意を加えると、構図が明らかになる。多数の専門家が懸念している「韓国が日米同盟の下位パートナー化すること」だ。
隠れた雷管はもう一つある。8月下旬から2週間行われる乙支フリーダムガーディアン(UFG)の韓米連合演習がそれだ。リ・ヨンホ外相は「8月の黒い雲が押し寄せている」とし「朝鮮半島情勢が統制から外れることになれば、その責任は米国が負うことになる」と主張した。朝鮮半島の熱い8月が近づいている。
韓国語原文入力:2016-07-29 22:35