イ・ジョンヒョン元大統領府広報首席のKBS(韓国放送)への報道介入で波紋が広がっているが、地上波放送3局のうち、事件を報道したのはSBSだけだった。しかしSBSも当初から積極的に報道したわけではなかった。その過程であった記者の集団提案による「緊急提案権」が光を放ち、注目を浴びている。同局はイ・ジョンヒョン元首席とキム・シゴン元KBS報道局長との通話記録が公開された先月30日、午後8時のニュース番組「8ニュース」でその内容をニュースの最後に「マスコミ労組、イ・ジョンヒョンーキム・シゴンの通話録音公開」という字幕とともに30秒の短信記事で処理した。SBSの現場記者と記者協会は「理解できないニュース編集」だとして、大統領府首席が直接放送局に電話をかけ報道内容に介入する内容が音声録音を通して生々しく現われているのだから、主要ニュースとして扱うべきだと要求したが、結局短信の配置を超えることができなかった。
翌日の今月1日、報道局所属の労組員たちは今年3月に労使合意で報道準則に規定された緊急提案権を初めて発動させた。SBSの緊急提案権は、不公正報道に対する積もりに積もった不満から実効性を考慮して作られた制度だ。SBSは再許可問題で他の地上波放送より編成規約や公正性担保のための報道準則など制度整備が比較的よくできているという評価を受けて来たが、公正性を損なう言動が繰り返され制度が無力化されると、現実に可能な方案として記者10人以上が集団提案した場合、編集会議でそれを受け入れるという条項を報道準則に盛り込んだ。この緊急提案権により、この日のメインニュースに「セウォル号報道に介入し問題化…野党、聴聞会推進」という 1分46秒分量のレポートが音声とともに配置された。
全国言論労組のユン・チャンヒョンSBS本部長は「朴槿恵(パククネ)政権になって言論の自由が萎縮し、特に去年初めから露骨な政権偏向報道や意味のない大統領動静報道が溢れている。編成規約にも報道実務者が編集会議に参加することができるとされているが、実効性は落ちる。これを突破するために、緊急な状況で均衡が崩れたり常識的な記事が削られたりした場合に適用可能な制度として緊急提案権を導入した」と述べた。
SBS内部では公営放送が公正報道ができない状況下で、これが放送されて幸いだという安堵感とともに、急変するメディア環境の中で地上波放送の危機意識も伺われる。SBS労組のイ・デウク公正放送委員長は「MBCとKBSが公正報道ができないなかでSBSの報道が特に目立つようになり、役員や幹部が外圧を非常に意識しているようだ。内部構成員は地上波放送の公正性の失墜で競争力が落ちる点に不満が高い」と言った。
SBSは来週、社長と労組委員長など労使代表が参加する全体編成会議を開き通話記録の波紋の縮小報道などについて議論する予定だ。労組側は、大統領府など政権を監視・批判する記事より政府の発表記事を書き取るのが中心で権力の顔色を伺っているとして、一戦交える構えだ。
韓国語原文入力:2016-07-07 18:26