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朴槿恵大統領の“不通”に外信記者も怒り 年頭会見で外信排除

登録:2016-01-25 22:52 修正:2016-01-26 15:30

「産経支局長事態」で対立深まる 
取材行き詰まったアジア総局、“脱韓国” 
大統領府、司令塔不在で方向失う 
「否定的報道は国家の信頼に打撃になる」

国内メディア中心の朴槿恵政権のメディア政策//ハンギョレ新聞社

 朴槿恵(パククネ)政権の“不通”イメージが、国内政治を越えて外信記者社会でも深刻な問題として浮上した。新年早々、差別と冷遇に対する外信記者たちの不満が露わになった。外信は、言論の自由が過度に制限された軍事政権時代に、韓国の状況を世界に伝えることで、韓国の民主化に力を貸した存在でもある。朴槿恵政権の外信軽視が進むにつれ、国家の信頼性に悪影響を及ぼしかねないという懸念の声があがっている。

 現在韓国で活動する外国人記者は270人だ。ソウル外信記者クラブ(SFCC)に登録されているメディアは、全世界から91社ある。日本のメディアが23社で単一国家では最も多く、北米が24社、ヨーロッパと中国がそれぞれ13社、台湾と香港が7社、中東とロシアがそれぞれ3社、その他が5社などだ。

 ソウル駐在の外信記者は、朴槿恵政権発足後、韓国での取材が非常に難しくなったと訴える。国内メディアの記者たちとは随時様々な接触を行っているのに、外信とは不通で、政府側の情報が確認できないなど冷遇が深刻な状態だという。歴代政権では、大統領府だけでなく、主要省庁も外信報道官を任命してブリーフィングをするなど、積極的に海外メディアと活発に接触してきた。取材活動が円滑になったことを受け、米有力紙ワシントンポストは、アジア総局を日本から韓国に移した。今では韓国銀行などでも、外信報道官のポストが消え、ワシントンポストのアジア総局も再び姿を消した。セウォル号事故当日の朴大統領の足取りをめぐる疑惑を報じた産経新聞の前ソウル支局長の起訴後、外信が相次いで「言論弾圧」だと批判したことで、韓国政府との対立が深まった。

 朴大統領の年頭会見に関しても、大統領府と韓国メディアを批判する声がツイッターなどのSNSを駆け巡った。ロイター通信のジェームズ・ピアソン特派員は、会見前にツイッターを通じて「朴槿恵大統領の記者会見で、事前承認された質問」というツイートと共に、質問の順序、メディア、要旨が盛り込められた事前質問紙を掲載した。アイルランドのジャーナリストのジョン・パワー氏は、「韓国の大統領の答弁のために質問を事前に提出してもらった。外国メディアは排除された」とし「記者会見で参加する記者たちが、大統領のために質問をあらかじめ提出するのがジャーナリズムですか?」とコメントした。

 最近は、現場で外信業務を支援する文化体育観光部傘下の海外文化広報院とも、外信記者証をめぐり対立が生じた。これまで1年ごとに更新される外信証は、ソウル外信記者クラブ事務局から会員の変更データを一括でまとめて広報院の外信支援センターに伝えると、発行してもらえることになっていた。ところが、広報院が先月、事前協議もなく、出生地や学歴、経歴、著述など、従来よりもはるかに強化された個人情報を要求するメールを外信記者たちに直接送ったのだ。広報院では外信の取材がより円滑に行われるようにするためのものだと説明したが、外信証なしでは政府省庁の出入りもできず、「査察レベルの個人情報の収集」、「外信の飼いならし」という会員たちの抗議電話が殺到した。院長が遺憾表明をすることで一段落したが、韓国政府の外信政策に対する不信感はさらに高まった。

 「産業タイムズ」ソウル支局長のオム・ジェハン・ソウル外信クラブ会長は、「外信政策は外交よりも重要かもしれない。外信に対する冷遇と不通は頂点に達しており、メディア外交における大きな損失だ。朴槿恵政権がメディア外交の重要性を認識していないのは残念だ」と話した。

 外信記者らの要求は、政府へのアクセスにおいて国内メディアと同等な待遇だ。政府が主要政策や方向を発表する際には、その背景などに関する説明が重要だが、国内の記者たちには別途のブリーフィングが行われるにもかかわらず、外信は徹底的に無視されているという。報道資料も要約だけが英語で配られている。分野別に担当記者がいる規模の大きい報道機関とは異なり、特派員1人がすべての分野をカバーする中小メディアの場合、資料が整っていないと、偏向したり、誤った記事が出る可能性も高い。後の祭りとして釈明のための報道資料が頻繁に出されるのも、そのためだ。

 にもかかわらず、大統領府には外信業務を総括指揮するシステムがない。広報首席室所属の外信報道官は、参事官級(4級)だ。外交部で課長級が交替で務めるポストとされており、外信マインドが足りないという評価を受けている。外信記者たちは、現在の大統領府の外信報道官が誰なのかも知らない。ソウル外信記者クラブ会長とも昨年4月に1回会っただけだ。

 外信政策が一貫していない点も問題とされている。英米系の外信記者は「経済危機の兆しが見られない限り、当局は外信を積極的に管理しない。政権によって外信に対する姿勢に違いがあるだろうが、一貫性がなければ、グローバル人脈を維持できない」と指摘した。

 キム・ソンヘ大邱大学教授は「現政権は、国際世論はどうであれ、国内世論だけうまく制御すればよいと考えており、外信を全く意識していない」とし「国際世論市場でオピニオンリーダーの役割を果たす外信の否定的な報道は、極めて速いスピードで広がり、国の信頼度に打撃を与える可能性がある」と診断した。

ムン・ヒョンスク先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-01-25 20:14

https://www.hani.co.kr/arti/society/media/727816.html 訳H.J

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