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[記者手帳]THAAD配備地域発表は「拙速に次ぐ拙速」

登録:2016-07-13 23:39 修正:2016-07-14 07:22
発表15分前「ひとまず取り消し」…取材陣の抗議で「予定通りに」 
米国「両国の大統領選挙に影響」と要求し説明会日程に乱れ
韓民九・国防部長官が13日、ソウルの国防部コンベンションセンターで慶尚北道星州に在韓米軍のTHAAD配備に抗議するため上京した星州住民の前で頭を下げ挨拶している=イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 政府の在韓米軍の「高高度防衛ミサイル」(THAAD<サード>)配備地域の公式発表を10分後に控えた13日午後2時45分頃、国防部ブリーフィングルームでは抗議の声が上がった。「15時の発表はひとまず取り消し」という国防部関係者の突然の通知に対し、記者たちが「延期か、取り消しか」と問い詰め、抗議の声が相次いだ。騒動から8分後に再び当初の計画どおり発表することにした。だがTHAAD配備と関連して、この間一貫して右往左往し続けた韓国政府の拙速さを改めて確認させるハプニングになった。

 THAAD配備の決定過程は、終始一貫して混乱の連続だった。何よりも北朝鮮の核とミサイルを名分とした米国のTHAAD配備要求の言いなりになった結果と言える。

 朝鮮半島へのTHAAD配備の必要性について、2014年6月当時、韓米連合司令官だったカーティス・スカパロッティが初めて挙論して以来、今年はじめまで韓国政府の公式見解は「3ノー」だった。朝鮮半島へのTHAAD配備に関して「要請も、協議も、決定もない」とのことだった。ところが今年初め、北朝鮮の4回目の核実験から一週間後の1月13日、朴槿恵(パククネ)大統領が新年対国民談話記者会見で、THAAD配備の検討に公式言及した。結局、北朝鮮のロケット発射当日の2月7日、韓米両政府は「在韓米軍THAAD配備公式協議」を宣言したが、僅か5カ月でTHAAD配備地域を確定すると予想した人は政府内外にも殆どいなかった。当初大方の観測は、どれほど早くても10月に開かれる韓米例年安保協議会(SCM)でTHAAD配備地域が決定されるだろうという程度であった。

国防部がTHAAD配備地域を公式発表した直後の13日、ソウルの国防部コンベンションセンターで「THAAD星州配備反対汎国民非常対策委員会」のイ・ジェボク委員長が血書を掲げて抗議している=キム・ポンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 あわててTHAAD配備を推進した結果、政府の準備不足がそのまま露呈した。政府は8日「THAADを韓国国内に配備することを決めた」と発表したが、実際に配備する地域は「数週間以内に」発表するとして「拙速疑惑」を本格的に見せ始めた。当初、国防部はTHAAD配備の決定と同時にその地域も発表する計画だったという。しかし、THAAD配備決定の発表を急ぐあまり、すでに内定し関連内部手続きを踏んでいた配備地域の発表は別にせざるをえなかったとのことだ。

 政府のこうした不明瞭な動きは論議に油を注いだ。THAAD配備地域を巡る多くの憶測、京畿道平沢(ピョンテク)、烏山(オサン)、慶尚北道漆谷(チルゴク)、忠清北道陰城(ウムソン)、全羅北道群山(クンサン)、慶尚南道梁山(ヤンサン)など、候補地として名前の上がった地域の住民の激しい反発が起きた。THAAD配備地域として慶尚北道星州(ソンジュ)が既定事実化された状況で、政府と軍当局が混乱を放置しているという批判も強い。国防部は「韓米実務調査団の報告書作成が完了していない」として非公開の方針を強調したが、結局「数週間以内にTHAAD配備地域決定」ではなく、僅か5日で配備地域を公式発表せざるをえなくなった。

 そのため、配備地域の発表前に住民たちを対象に説明会を開こうとしていた国防部の計画も狂った。住民説明会は発表当日に準備不十分な状態で行われた。この日政府は、国防部のファン・インム次官と国務調整室、行政自治部、合同参謀本部の各当局者を星州に派遣し、THAAD配備説明会を開く予定だった。だが、星州郡のキム・ハンゴン郡守と星州郡議会のペ・ジェマン議長が上京し、国防部を抗議訪問することになると星州訪問計画を取り消した。政府は公式発表のタイミングをひとまず先送りしてでも住民に先に会おうとしたと見られる。国防部国防政策室のリュ・ジェスン室長は「星州から上京して午後4時頃に到着するのに、3時に発表をすれば具合が悪いのではという意見があい混乱をきたした」と話した。しかし、結局住民説明会は公式発表後に行われた。政府の拙速な動きは、米国に催促されて言いなりになった結果と見られる。米国政府は今年末までにTHAAD配備を確定できなければ、THAADの配備が難関に直面するだろうと判断したという観測が多い。今年末に米国大統領選挙が行われるうえに、来年初めには韓国でも大統領選挙政局が本格化し、THAAD配備可否が熱い政治争点に浮上せざるをえないためだ。

キム・ジンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/752225.html 韓国語原文入力:2016-07-13 20:15
訳J.S(2063字)

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