「朴槿恵政権が地方自治体の飯の種を断つと言うなら、私も絶つ」
イ・ジェミョン城南(ソンナム)市長には「生来の喧嘩早い人」 の体臭が感じられる。 226カ所の地方自治体長の一人に過ぎないのに、韓国社会の主要懸案に顔を出さない所はない。挑戦と応戦を避けない。先制攻撃のやれる、相手の弱点に食い込み相手の攻撃を利用して反撃する“返し技” にかけては定評がある。 しかし今までの“リング”は主にネット上の仮想空間だったが、今回は実戦だ。「朴槿恵(パククネ)政権が地方自治体の飯の種を断つと言うなら、私も絶つ !」と書いた旗を掲げてソウル光化門(クァンファムン)広場の真ん中でハンスト座り込みを始めて9日目だ。 太い雨脚が座りこみ場のテントに叩き付ける15日午後、イ市長に会った。
教育費・基礎年金など予算は出さず
事業だけ押し付けて 4兆7千億の負担
責任取るどころか自治体間の争い誘導
城南は増税なしでも福祉拡大を実施
政府の誤りを照らす鏡
-ハンスト実行の理由は?
「これまで政府が地方自治体に教育費だの基礎年金制だのを押し付けて約 4兆7千億ウォンを負担させた。これは政府も認める金額で、返すと言っていた。 しかし約束を守っていない。 だから全国の226の地方自治体のうち220カ所が、政府の支援なしではすぐにも不渡りになる状況にある。残りの6つの自治体は京畿道の水原(スウォン)、華城(ファソン)、高揚(コヤン)、龍仁(ヨンイン)、果川(クァチョン)、城南だ。いずれも政府補助を全く受けずに自らの歳入だけで運営している。 ところが政府がこの6つの自治体から 5千億ウォンを取り上げ、他の地域に分配すると言うのだ」
―裕福な都市が貧しい都市に分けてやるのは良いことでは?
「それがほかでもない政府のフレームだ。 地方財政が困難になった根本的理由は政府の無差別絨毯爆撃のためだ。予算は出さずに事業ばかり押し付けた結果生じた問題なのだから、政府が責任を負うべきなのに、自治体同士の争いを誘導している。 6つの都市が豊かに暮らしながら他の都市のことをほったらかしにしているかのようにごまかしている。これまで地方自治制度に対する朴槿恵政権の体系的かつ執拗な攻撃があったが、今、最後の総攻勢が進んでいる。特に城南市のように政府の言うことを聞かない自治体は、根本的に手を入れようというわけだ」
―城南のイ・ジェミョン市長が目の上のタンコブの存在だと?
「私の判断では、中央政府の運営と城南市の運営が極端に対比される。 政府は小細工を弄した増税をしながらも、借金は150兆ウォン増えて福祉は縮小された。 これに反して城南市は、数千億ウォンの借金を返した上に、増税は全くなしで福祉は大幅に拡大した。城南市は政府の失政を照らす鏡だ。それだけでなく、私は中央政府にあれこれ苦言を呈した。「予算というのは意志と哲学の問題だ」「政府にお金がないのではなく泥棒があまりにも多いのだ」 等々。 悪い政府の立場から見れば強硬で善良な地方政府の存在が煙たいのだ。私もおとなしくしていないで強く出た。この国は非正常な社会で私が頭になる可能性はないから、しっぽをつかんで胴を揺さぶるのが私の役目だと考えた。 城南市の変化を通して大韓民国の変化を作り出そうというのだ。 市長の仕事だけやろうと考えて市長をするのではない。税金というものはこのように使うものだ、権限というものはこのように行使するものだ、ということを見せてやりたかった。それがあの人たちには気分が悪かっただろうけれども、私はわざと気分を害するようにやった 」
―あまりに極端な方法で闘うという見方もあるが。
「誤りを正すということは、最も過激な方法でやる必要がある。 強盗を捕まえるのに、おとなしい方法で捕まえることができるか。 『強盗だあ!』と大声を張り上げて初めて、隣でも気付いて一緒に捕まえてくれる。 もちろん対話ができれば当然妥協する。だがこの社会は不法不正があまりにも多い」
―地方財政の根本的な解決策は何だと思うか?
「応急対策としては、貧しい自治体に与えた損失 4兆7千億ウォンを原状回復させなければならない。 根本的には、地方自治体が国の事業の40%を処理しているが、地方税の比重が20%にしかならないから結局財政自立度は50%にしかならない。 残りは政府が出しながら好きなように統制する。だから国税として取り立てて分け与えるのではなく、地方自治体が直接税金を徴収する方式に変えるべきだ。 与党も政府も言葉では全て認めているが、絶対にやらない。 統制権を喪失するからだ」
市長の日程提出要求に対し
「大統領の 7時間」を取り上げたのは
国民に理解しやすくするため
大統領選の党内予備選、当選より過程が重要
サンダース候補が結局だめでも、意味があるではないか
―行政自治部がイ市長の日程提出を要求すると「朴槿恵大統領の7時間の日程を提出すれば私の90日間の日程も出しますよ」と反駁した。 朴大統領を引っぱり込んだのは戦略的意図があるのか?
「国民が一番理解しやすいからだ。 代議民主主義の下では、大統領も私も下僕であることには全く変わりない。 ところが下僕の階級について誤解がある。 中央政府は偉大で地方政府は取るに足らない存在だという誤った理解が … 。 これを破らなければならない。 私の政治的利益のために言うのではない。事件の本質を理解させるにおいて、大統領を例に挙げれば明確になる」
―喧嘩の才能がありそうだが。
「私の専門は“返し技”だ。 私のようなマイナー、反骨、アウトサイダーに主流世界が機会を与えるだろうか? 私たちには常に危機や攻撃だけがくる。 この攻撃を機会に替えるのでなければ、私たちには永遠に機会がない。私が初めに心に決めたことがある。危機の中に機会がある。それをよく見つけ出して切り返せば、国民という審判が判断する。 ハンスト座り込みも単に城南市の1000億ウォンを守るのに止まるのではなく、政府の地方自治体に対する攻撃に打ち勝って地方財政を正常化するということだ」
―最近ハンギョレの紙面を通して、大統領選の党内予備選に挑戦する意思を明らかにした。
「大統領選の党内予備選は必ずしも当選に意味があるのではなく、過程自体が重要だ。 公正な秩序、公平な機会を享受する常識の通る世の中を作るという私の意思を提示し知らせる機会でもある。 そのような意思が他の候補者にも受け入れられて国家の議題として採択されるなら、それだけでも意味がある。アメリカのバーニー・サンダースも『民主党候補になれなければ意味がない』ということではなかったではないか。『99対1』のアジェンダを鮮明に提示することだけでも、途方もない効果を発揮した。 バーニー・サンダースと私は似ている点がたくさんある。彼の本の推薦の辞も私が書いた」
訳注:イ・ジェミョン城南市長は 6月7日に光化門広場で政府の「地方財政改編案廃止」を主張してハンスト座り込みを始め、十日後の6月17日、「共に民主党」のキム・ジョンイン代表の訪問後、ハンストを中断し入院した。イ市長は「今後党で責任を持ってこの問題(地方財政改編)を解決するから、党を信じてハンストを中断してほしい」というキム代表の説得で座り込みを終わりにしたものと言われる。 その間野党議員はイ市長の座りこみ場を訪ねて応援のメッセージを送ったが、政府はこれと言った反応を見せなかった。
イ市長のハンストは終わったが、イ市長の提起した問題はまた解消していない。どのような形にしろ、この“闘い”は続くものと思われる。
韓国語原文入力:2016-06-15 21:25