「大統領選出馬示唆」のマスコミ報道に
「拡大解釈」としながら否定せず
「政府職を制限」し、多国間・超党派を強調した
国連憲章・総会決議は紙切れに
潘基文(パンギムン)国連事務総長が25日に行った大統領選出馬を示唆する発言をめぐり、政界とマスコミに波紋が広がっている。任期をまだ7カ月残す現職の国連事務総長の「政治的な動き」をどう理解すべきだろうか。潘氏の任期は年末の12月31日までだ。
国連は予め、こうした状況の妥当性を判断する根拠となる規定を憲章と総会決議に盛り込んでいる。国連は、憲章第1条で、国際世界の平和と安全の守護、平等・自決の原則の尊重、差別なき人権と基本的自由権の尊重・奨励などの「目的」を実現するため、「各国の活動を調和させる中心」を自任している。また、国連事務総長は、国連の「首席行政職員」(97条)として、「国際公務員としての地位を損なうおそれがあるいかなる行動も慎む」(100条)と、国連憲章に明示されている。
要するに、国連と国連事務総長は、特定の国の利害に流されない多国籍・超党派的に行動しなければならないという「自己制限」の規定だ。国連が創設された直後の1946年1月24日、国連事務総長の任期や報酬などと関連し、全会一致で採択した決議11(Ⅰ)号で、「事務総長は多くの(国連加盟国)政府の機密を共有する親しき友であるため、事務総長が保有しているこのような機密情報が多くの政府を当惑させる状況(his confidential information might be a source of embarrassment to other Members)を考慮する必要がある」とした上で、「事務総長は、そのような(政府)の役職(any governmental position)に付くことを慎むべきだ」と強く勧告したのも、そのためだ。決議の趣旨からして、「政府職」とは、厳密には任命職、広くは選出職まで含むものと言える。
これに先立ち、潘氏は25日の夕方に済州(チェジュ)ロッテホテルで行われた寛勲クラブの招請懇談会で「大統領選挙候補に名前が挙がっている。出馬する意向は(あるのか)?」と問われ、「来年1月1日になると韓国人に戻る。その時によく考えてから決心し、皆さんにアドバイスを求めるかもしれない」と答えた。潘氏は誤解されるかもしれないと思ったのか、「大統領になるようなことは、以前には考えたこともない」と付け加えた。「以前」は、大統領になろうとは思っていなかったが、今はそうでもないということだ。ソウルで発行される総合日刊紙は26日付1面で、この問答に基づき「潘基文、大統領選挙出馬強力示唆」と一斉に報じた。ある懇談会の参加者は、「予想をはるかに上回る発言に質問した人がむしろ驚いたほどだ」と評した。
事態が大きくなっているのに、潘氏は26日、自分の前日の発言が「失言」だと一歩も退くことも、正面から否定することもしなかった。潘氏は26日、コン・ノミョン、ソン・ミンスン元外交部長官、チュ・チョルギ元外交安保首席、イム・ソンナム外交部第1次官など、元・現職外交部高官との朝食会で、マスコミの報道について「拡大解釈」だと短くコメントしたと、ある参加者が伝えた。「間違った解釈」という否定ではない。ただ「少しやり過ぎた」ということだ。吟味してみる必要がある反応だ。
しかし、潘氏の25日の発言は、国連憲章と総会決議11(Ⅰ)号の自己制限の規定からして、最高位の国際公務員の職分を逸脱したものだ。外交部の高官は26日、「当惑している」としながら、ため息をついた。彼は「韓国外交が育てた最高の外交官(のイメージ)が傷つくかもしれないと思うと心配でならない。外交部が政争の中に巻き込まれるのも怖い」と話した。
イ・ジェフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力: 2016-05-26 19:21