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「基礎年金」支給で生活保護費が減る…韓国の低所得高齢者に届かない2万円

登録:2016-04-26 00:20 修正:2016-04-26 06:38
高齢者基礎年金施行日の2014年7月1日、貧困老人基礎年金保障連帯のメンバーらがソウルで行われた記者会見で、大統領への訴文を前に礼をして哀訴するパフォーマンスをしている=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

所得額に反映させ生活保護費から控除
20万ウォンを抜いて支給…貧困解消に力不足
野党3党、全額保障するよう法改正を推進
セヌリ党は現行制度維持の立場

 「月に20万ウォン(約2万円)を受給できれば新しい服を一揃いでも買って着たい」

 ソウル上渓(サンゲ)洞の永久賃貸住宅に住むパク・ミョンヒさん(70)は、政府から生活保護費を受給して細々と暮らしている基礎生活受給者だ。 ゆとりのない所得にいつも悩みながら生きている。 食費を減らすために安いおかずを探し歩かなければならない。 服も教会で信者たちからもらって着ているので、からだに合う服はほとんど無い。 パク氏の通帳には毎月20日に生活保護費が27万ウォン、25日には基礎年金20万ウォンが振り込まれる。 月に47万ウォン(約4万6千円)が所得の全部。 2年前に基礎年金が導入されたが、彼女の所得は一銭も上がらなかった。 以前は生計給与だけで47万ウォンを受け取っていたが、基礎年金を受け始めると生活保護費がその金額(20万ウォン)だけ削られたためだ。 パク氏は「区庁に行って生活保護費と基礎年金を別々に受給できるよう何度もお願いしたが、それはできないと言いました。 大統領が老人に20万ウォンずつ支給すると言ったのに、なぜ私たちのような貧しい人にはくれないのか分からない」と話した。 彼女は「今回野党が生活保護受給者にも同じように20万ウォンずつ支給すると言った公約を必ず守って欲しい」と付け加えた。

 与小野大の政局となり、4・13総選挙で高齢者貧困問題を緩和するために出てきた基礎年金拡大の公約が現実化するか注目を集めている。

 基礎年金は朴槿惠(パククネ)大統領が大統領選挙で、すべての高齢者に月20万ウォンを支給すると約束して導入された制度だ。 だが、すべての高齢者ではなく所得下位70%の高齢者にだけ、それも20万ウォン均等支給ではなく国民年金加入期間などと連係して差別支給することにして、高齢者貧困の解消には力不足という批判が絶えなかった。

専門家「生活保護費を大幅に引き上げるべき
基礎年金と生活保護費は別々に支給すべき」

 基礎年金拡大のための公約は大きく二つに分けることができる。 まずすべての高齢者に対して基礎年金の支給水準を高める内容だ。 もう一つはパク氏の事例のように、生活保護受給対象の老人たちが基礎年金の恩恵を受けられない現行制度を直して、受給できるようにするということだ。

 前者と関連して共に民主党は、2018年までに基礎年金を月額30万ウォンに上げると公約した。 現在の基礎年金額は月額20万ウォンだが、これは韓国の1人の最低生計費(今年基準で約64万ウォン)の3分の1にも至らない水準だ。 これに対して最低生計費の半分である30万ウォンに引き上げようということだ。 また、短期的に今年までは所得下位70%の高齢者に20万ウォンを均等支給(現在は国民年金などと連繋させて差別支給)するという公約だ。 国民の党は国民年金受給者に対する減額の廃止を、正義党は直ちにすべての高齢者に20万ウォンを均等支給し長期的には月額30万ウォンに引き上げる方案を出した。

 後者と関連しては野党3党が同じことを約束している。 生活保護需給対象の高齢者にも基礎年金20万ウォンを保障しなければならないということだ。 現行の国民基礎生活保障制度により支給されている生活保護給付は、最低生計費基準額(基準中位所得の29%)から当該個人の所得認定額を控除した金額が支給される。 換言すれば基礎年金として受給した20万ウォンが所得認定額に算定され、生活保護給付から20万ウォンが控除されるということだ。 結果的に最も貧しい高齢者が基礎年金の恩恵を受けられていないわけだ。 そのために基礎年金は「支給しておき後から奪い取る年金」という汚名まで着せられた。 野党3党は基礎生活保障所得認定額を算定する際に基礎年金を除くよう国民基礎生活保障法を改正すると約束した。

 この公約は全体的な基礎年金額の引き上げ方案(30万ウォンに引き上げれば6兆4千億ウォン=約6200億円が必要)に比べて必要とされる財源規模が相対的に大きくないうえに、すでに国会でも関連法の改正案が審議されたことがあるため、現実化がより易しいという観測が出てくる。 昨年11月、国会保健福祉委員会の法案審査小委はパク・ウォンソク議員(正義党)とイ・モクヒ、ヤン・スンジョ議員(共に民主党)が出した国民基礎生活保障法・基礎年金法改正案を審議したことがある。 当時は政府与党の反対で議論が漂流している状態だ。

 セヌリ党は基礎年金額の全体的な引き上げ方案に反対するのはもちろん、生活保護受給者と関連しても現行制度を維持することが望ましいという立場だ。 政府与党側の反対論理は、国民年金や失業給与も所得として算定されるので、基礎年金だけを例外とするのは困難ということだ。 基礎生活保障制度は基礎年金を含む所得認定額が最低生計費に至らない場合にのみ生計費として支援する「補充性原則」により運用されるという論理だ。 セヌリ党の政策担当者は「著しく貧しい高齢者に対しては生活保護給付を増やす方向で政策を組むことが正しい」と主張する。

 基礎年金額の全体的引き上げよりは財政負担が小さいが、それでも年間数千億ウォンの財政の追加投入が必要という点も政府としては負担になる。 基礎年金の恩恵を受けられない貧しい高齢者たちは昨年9月基準で38万8419人に達する。 福祉部の推計資料によれば、基礎年金をこれらの高齢者にも追加支給する場合、年間約7660億ウォン(35万人追加支給時)の予算が追加でかかる。

 だが、韓国の高い高齢者貧困率を考慮する時、政府与党が「補充性原則」を必ず守らなければならないとしていることに対する反論も少なくない。 経済協力開発機構(OECD)に提出された資料(2012年基準)によれば、韓国の高齢者貧困率は49.6%で最悪の水準だ。 韓国以上に高齢化速度が速い日本は19.4%、OECD平均は12.6%にとどまる。 「私が作る福祉国家」のオ・ゴンホ共同運営委員長は「政府が主張する補充性原則は絶対的なものではない。 高齢者生計給与費を大幅に引き上げる改善措置が取られない限り、基礎年金を生活保護給付とは別に支給しなければならない。 それでこそ基礎年金法の趣旨に符合して、貧困高齢者の実質的生活改善にも真に役立つ」と主張した。 政府は障害者年金、障害児童手当、児童保育料、養育手当、国家有功者および参戦有功者手当は世帯特性別支出要因と認められるとし所得算定から除いている。

 このような主張は野党の力が高まった新しい政治地形で一層声が高まるものと見られる。 福祉部基礎生活保障課のパク・ジェマン課長は「第19代国会の審議過程では与野党間の異見が大きかった。 今後出てくる第20代国会の日程により再議論はありうる」と話した。 「貧困老人基礎年金連帯」をはじめとする市民団体は、第20代国会で野党が公約履行のための共同立法に速やかに乗り出すことを求めている。

ファン・ボヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/741201.html 韓国語原文入力:2016-04-25 21:43
訳J.S(3119字)

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