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[ニュース分析]軍需用品目の制裁が焦点…北朝鮮の空軍・ロケット開発に打撃

登録:2016-02-27 00:32 修正:2016-02-27 07:26
イラン制裁で効果があった「第三者制裁」援用 
中国の対北朝鮮交易拠点である遼寧省丹東港が最近、北朝鮮船舶に対する入港禁止措置に入った。写真は丹東港の鉱物専用埠頭 =瀋陽/連合ニュース

原油・労働者送出など核心は除く 
石炭、鉄、金、希土類など輸出禁止 
主交易国の中国が民生用と判断すれば 
石炭、鉄鉱石は制裁対象から外されることも

 「過去20年間で国連安保理次元の最も強力な制裁だ」(サマンサ・パワー国連駐在米国大使)

 「戦争と侵略に対する処罰を別にすれば安保理の経済制裁としては最も強力。安保理次元のいかなる制裁もこれほどの強度と包括的内容が含まれたことはない」(韓国外交部当局者)

 韓米両国政府は、北朝鮮の4回目の核実験とロケット発射に対応した国連安保理の新しい制裁決議案が、前例なく強力な内容を含んでいると強調した。 「最終制裁」を公言してきた韓国外交部当局者も26日、「我々が期待し予想したものより、はるかに強化された内容」と評価した。 そう言い切れる。 北朝鮮の鉱物資源貿易を禁止・制限する「特定分野制裁」が対北朝鮮制裁史上初めて導入され、北朝鮮を行き来するすべての貨物を「義務検索」することにしたのが代表的だ。

■中国政府の対応が制裁の実効性左右する公算

 安保理の新たな対北朝鮮制裁決議案の実際の圧迫効果を計るには、二つの要因を考慮しなければならない。 第一に、北朝鮮の対外貿易の90%ほどを占める中国の政府の判断と「履行意志」だ。 第二に、「この制裁決議案は北朝鮮の支配層(ruling elite)に焦点を合わせており、北朝鮮の一般住民に罰を与えようとするものではない」とパワー大使が強調した通り、「民生」と「人道的支援」分野を制裁対象から排除した事実だ。 「安保理制裁が北朝鮮人民の民生に人道的災難を招いてはならない」という中国政府の強力な主張が反映された結果と見られる。 中国政府が新たな決議案の内容をどのように解釈するかにより制裁の実効性が大きく左右されるという意味だ。

■中国の対北朝鮮原油輸出、北朝鮮労働者の国外送出遮断は外れる

 先ず韓米両国政府が「最終制裁」を訴え中国政府を圧迫してきた中国の対北朝鮮原油輸出の禁止、北朝鮮の主要外貨所得源に挙げられる北朝鮮労働者の国外送出遮断措置は、今回の制裁決議案に含まれなかった事に注目する必要がある。韓米政府が強調してきた対北朝鮮経済制裁の核心が相当部分抜けたわけだ。 中国専門家の成均館(ソンギュングァン)大のイ・ヒオク教授は「労働者の国外送出遮断は、北朝鮮が最も直接的に打撃を受ける領域だが、中国政府が北朝鮮の境遇と東北3省地域の北朝鮮労働力需要などを考慮し受け入れなかったものと見られる」と指摘した。

■史上初の特定貿易分野制裁

 パワー大使は「北朝鮮の石炭、鉄(鉱石)、金、チタニウム、希土類輸出を禁止または、制限する」と明らかにした。 「特定貿易分野」制裁だが、安保理のこれまでの対北朝鮮制裁決議には見られなかった新しい内容だ。 米国政府がイラン制裁で“強力な武器”として活用したイラン原油・自動車産業関連「第三者制裁」(セカンダリーボイコット)方式を援用したと見られる。

 だが細部を見れば、制裁の実効性が見かけほど強くない点もある。 ロイターは自ら入手した決議草案を根拠に、金、チタニウム、希土類は「輸出禁止」するものの、石炭と鉄(鉱石)については「民生用」(livelihood purposes)で、北朝鮮の核とミサイル開発に資金が転用されないならば制裁対象から除外されると報道した。 石炭は北朝鮮の対中国輸出筆頭品目だ。 石炭輸出が全面禁止されれば北朝鮮経済に相当な打撃が避けられない。 だが「民生用」は制裁対象ではないという但し書きを中国政府がどのように解釈し運用するかにより、「石炭輸出禁止」規定の実効性が変わる。

 北朝鮮の中国に対する石炭と鉄鉱石の輸出が急減傾向である点も考慮しなければならない。 韓国貿易協会統計によれば、北朝鮮の対中国石炭輸出は2014年-18.2%、2015年-6.3%と減少傾向にある。 鉄鉱石は2005年には対中輸出2位品目であったが、昨年は5大輸出品目にも入らないほど比重が低下している。 世界的な供給拡大にともなう価格下落と中国内需要の減少が重なったためだ。 石炭の場合、中国政府が深刻な大気汚染に対応し、石炭の使用を抑制する強力な政策を行っている点も考慮する必要がある。 他方で、中国東北3省地域を中心に北朝鮮の鉱物資源開発と関連した北中合作事業が活発な現実も念頭に置かなければならない。 このような事情を総合すれば、北朝鮮の「鉱物輸出禁止」の影響は制限的なものになる可能性が高いというのが多くの専門家たちの指摘だ。

■貨物検索の義務化

 韓米政府が強調するのが、北朝鮮を出入りするすべての貨物を「義務検索」(mandatory inspection)するという制裁だ。 パワー大使は「史上初」と繰り返し強調した。 決議案は国連安保理が2014年7月28日に制裁対象目録にあげた北朝鮮の「遠洋海運管理会社」(OMM)所属船舶31隻を制裁対象に名指しした。 だが、これもまた制裁効果が中国政府の判断と実行にかかっている。 北朝鮮の対外貿易の90%余りが中国貿易だ。 そして北朝鮮と中国の貿易の70%余りが新義州(シンウィジュ)・丹東(タンドン)の窓口でなされる。 北朝鮮の対外貿易の大部分は中国向け陸路貿易なのだ。 北朝鮮と中国の関係と、東北3省の対北朝鮮経済協力需要を考慮する時、中国政府が厳格な検索を実施する可能性は相対的に低いというのが一般的な展望だ。 韓国政府は開城(ケソン)工業団地閉鎖のために北朝鮮との陸路貿易がなく、5・24対北朝鮮措置ですでに北朝鮮を往来する船舶の韓国入港を禁止している。

■軍需品統制が強化される見込み

 とはいえ安保理の新しい対北朝鮮制裁決議案が「張り子の虎」であるわけではない。 仁済大のキム・ヨンチョル教授は「制裁は軍需品、一般経済、人道的分野の3つのカテゴリーから構成されるが、軍需品統制は以前よりはるかに強化されるだろう」と指摘した。 今回の決議案がロケット燃料を含む航空燃料の対北朝鮮輸出を禁止したことが代表的だ。 北朝鮮の空軍とロケット開発への影響は免れない。 国連加盟国に対し北朝鮮との貿易過程で軍事転用の恐れがある「二重用途品目の取引禁止」(キャッチオール制度)義務を強化したことも影響を及ぼす見込みだ。 ただし、この場合にも判断の主体が各国の政府なので、遮断効果が一貫できない可能性がある。 加えて北朝鮮が国外に設置した金融機関や北朝鮮に進出した外国金融機関に関連する「金融制裁」も大幅に強化されたと見られる。

イ・ジェフン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/732313.html 韓国語原文入力:2016-02-26 21:22
訳J.S(2952字)

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