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[ニュース分析]「王毅イニシアチブ」北朝鮮核問題の突破口になるか

登録:2016-02-19 03:07 修正:2016-02-19 07:06
中国、朝鮮半島の非核化と平和協定の同時推進を提案
王毅・中国外交部長//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の4回目の核実験・ミサイル発射に対する国連安全保障理事会(安保理)の制裁決議をめぐる交渉が大詰めを迎えた状況で、中国政府が“制裁決議以降”はもちろん、年末の米国大統領選挙の結果まで念頭に置いた戦略的布石を打った。「王毅イニシアチブ」がそれである。王毅・中国外交部長は17日、オーストラリアのジュリー・ビショップ外相との会談後に開いた記者会見で、「中国は6カ国協議の議長国として、(朝鮮半島の)非核化の実現と停戦協定を平和協定に変えることを、同時に推進するための協議を提案する」と述べた。

1.「6カ国協議の9・19共同声明が核問題の根本的解決策」

 王毅部長の提案は、内容だけを見れば、朝鮮半島問題と関連した中国政府の長年の基本的な見解と変わらない。重要なのは提案時期だ。1月6日の北朝鮮の4回目の核実験後、中国政府が「非核化と平和協定に向けた交渉の同時推進」を初めて公式的に言及したからだ。王毅部長は、提案の趣旨が「早急に対話復帰の突破口を見つけることにある」とした上で「このような考え方が(朝鮮)半島の核問題を根本的に解決するのに役立つ」と強調した。仁済大学のキム・ヨンチョル教授は「北朝鮮核問題は、朝鮮半島の冷戦体制の産物であるため、冷戦体制を克服する代案を出さなければ、核問題も解決できないという意味」として、「6カ国協議の基本精神に立ち返ろうという呼びかけ」と分析した。

2.北朝鮮を対話の場に導くための折衷案

 王毅部長の提案は、形式的には韓米と北朝鮮の公式見解を折衷したものだ。韓米は「北朝鮮が先に核を放棄する真の意志があることを証明してから、対話と交渉」を、北朝鮮は「平和協定を締結してから非核化を協議」(2015年12月3日に外務省報道官談話)をそれぞれ主張しており、平行線をたどっている。ただし、韓米政府が最近、朝米関係の正常化や朝鮮半島の平和体制の議論に触れない現実からすると、王毅部長の提案は、実際は北朝鮮寄りのものと言える。北朝鮮の追加核実験・ミサイル発射を防ぎ、6カ国協議を再開するためには、北朝鮮の主張にもっと耳を傾けるべきという判断によるものと分析される。

6カ国協議「9・19共同声明」が根拠 
王毅部長「北朝鮮核問題の根本的な解決法」を強調 
韓国「非核化が先」と反対したのに 
米国は直ちに拒否せず 

クリントン元国務長官の「包括構想」に通じる 
米大統領選挙の結果によっては急進展する可能性も 
強硬基調、韓国にはブーメランとなる恐れも

3.北朝鮮制裁に「オールイン」する韓国が取り残される恐れも

 韓国政府は否定的な反応を見せた。チョ・ジョンヒョク外交部報道官は18日の定例ブリーフィングで、「北朝鮮が挑発を中断し、非核化に向けた真の意志を見せるのが優先されるべきだ」と述べた。米国政府は、まだ公式的な反応を示していない。米国がすぐに拒否しなかったことに注目する必要がある。6カ国協議に参加した経験がある政府関係者は、「米国が北朝鮮に対し、制裁だけを進めるという見通しには現実性がない」とし「米国は、ある程度時間が経てば、平和協定の問題を真剣に取り上げる可能性がある。韓国政府が無条件的に北朝鮮に対する制裁と圧迫に「オールイン」(すべてをかけること)したら、情勢の流れの中で、一人で取り残される恐れがある」と話した。

4.2009年のヒラリー・クリントン「包括的構想」を思い出そう

 中国政府も韓米政府が即刻受け入れることを期待していない雰囲気だ。 「適切な時期に具体的な協議を行ってほしい」という王毅部長の発言は、「すぐではなくても大丈夫だ」という意味に読み取れる。それよりは、安保理制裁決議と北朝鮮の労働党大会(5月初め)の後に「朝中首脳会談→ヒラリー・クリントン米国大統領に当選」への経路を想定した中長期的な布石と見るべき(チョン・セヒョン朝鮮半島平和フォーラム常任代表)との指摘が多い。

 米国の大統領選挙で有力候補に挙げられるヒラリー・クリントン氏は国務長官だった2009年2月13日のアジア協会の演説で、北朝鮮が核を放棄する「真の準備」ができているなら、「両国関係を正常化し、停戦協定を平和協定に替えると共に、エネルギーと経済支援を行う用意がある」と提案した。

 彼女は北朝鮮の3回目の核実験直後の同年7月、アセアン地域フォーラム(ARF)で、この構想が有効であることを再確認した。今回の大統領選挙に合わせて2014年に出版された自伝『難しい選択』で「イランの場合と同様に、受け入れられる提案を出して出発した」とし、自らの2009年構想が北朝鮮に送った「招待状」であることを強調した。

5.5月の党大会後に朝中首脳会談?

 中国政府としては、朝中首脳会談を成功させ、習近平主席が金正恩労働党第1書記を相手に経済協力の拡大などをテコに、「核実験・ミサイル発射にモラトリアム(猶予)を宣言、核凍結に関連する初期措置、6カ国協議への復帰」などの約束を取り決め、オバマ米政権と一定の議論を経て、クリントンの当選を前提に、次の米政権の発足とともに「非核化と平和協定をめぐる協議の急進展」を狙ってみようと判断したと思われる状況だ。 6カ国協議の過程に詳しい元高官は「王毅部長の提案は、9・19共同声明を履行しようということ」とし、「9・19共同声明は、北朝鮮によるすべての核兵器・プログラム放棄と朝米関係の正常化、朝鮮半島における平和体制樹立などを網羅する点で、皆の利益に合致する。朴槿恵(パククネ)政権の前向きな態度が必要だ」と述べた。

イ・ジェフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: :2016-02-18 21:41

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/731127.html 訳H,J

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