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[ニュース分析]高まるコリアリスク...安保危機が経済にまで波及か

登録:2016-02-18 02:21 修正:2016-02-18 14:48

中国「THAAD配備の代償払うべき」 
非公開的な“貿易報復”の可能性高く 
現実となった場合は日本が受恵国になる可能性も 

株式市場で中国資金の離脱が加速 
債券広がる場合は、家計と企業を“直撃”

開城工業団地の閉鎖など、国家信用に悪材料 
対立の長期化した場合「格下げ」の懸念も

 北朝鮮の核実験と長距離ロケット発射、これに対応した政府の開城工業団地(開城公団)の閉鎖と高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の協議が重なったことで、「経済安保」危機の可能性を懸念する声が高まっている。すでに世界的な景気低迷と国際金融市場の不安などで弱まった国内経済に、地政学的リスクまで高まると、泣き面に蜂の韓国経済がより悪化する恐れがあるからだ。

■中国による貿易報復の可能性 

 幸いに、最近の南北間の緊張はまだ実体経済と金融市場に大きな衝撃を与えてはいない。しかし、専門家たちは、対立局面が長くなったり、緊張がさらに高まることがあれば、「経済安保」も大きな危険にさらされる可能性があると指摘している。特に朝鮮半島へのTHAAD配備に強く反発している中国の対応は、韓国経済を揺さぶる“台風の目”になりかねない。

 中国の官営メディア、環球新報は17日付の社説で、朝鮮半島へのTHAAD配備を取り上げ「中国は朝鮮半島の最悪の状況に対する周到な準備をしなければならない。中国は北東アジア方面への軍事配備を強化する必要がある」と主張した。王毅・中国外交部長は「項荘舞剣意在沛公」(項羽の甥の項莊が剣舞を舞う内心は劉邦を殺すことにある)という故事成語まで使って、米国が朝鮮半島へのTHAAD配備で中国を狙っていると、批判を重ねた。

 専門家たちはTHAAD配備が現実となった場合、中国が貿易報復に出る可能性が高いと予想している。実際に中国は、2010年に中国が反体制派に分類した劉暁波氏にノーベル平和賞を与えたノルウェーからのサーモンの輸入を、2012年に尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる日本との領土紛争が起きた際には希土類の輸出を、それぞれ中断した。

 韓国金融研究院のチ・マンス研究委員は17日、「中国は、領土紛争などの非経済的な紛争の場合は、可視的な措置ではなく、非公開的な方法で紛争相手国を圧迫する傾向がある。 2012年の中日領土紛争以降、日本の対中国輸出が大幅に減少し、その反射利益として韓国の対中輸出が大幅に増えた状況を思い出すべきだ」と述べた。

 中国が「見えざる手」を使って、韓国の対中輸出にブレーキをかけることもあり得るということだ。具体的には、韓国と対中輸出品目が70%ほど(金額ベース)重なる日本に取引先を移すこともできる。チ研究委員は「日本がTHAAD配備を韓中対立の最大の受恵国になる可能性もある」と述べた。

■THAADに伴う中国資金の離脱への懸念

中日の領土紛争を前後にした韓日の対中国輸出の増減率(資料:韓国貿易協会)//ハンギョレ新聞社

 昨年末から国内株式市場に投資された中国系資金の離脱が急激に進んでいる。金融監督院の資料によると、中国系資金の国内株式市場からの離脱量(売り越しベース)は、昨年11月に172億ウォン(約15億9500万円)から12月には5885億ウォン(約546億5500万円)に増え、今年1月にも4762億ウォン(約441億8500万円)に達した。これは、中国の経済不安による資金移動の性格が強い。このような状況で、最近の韓中の対立と地政学的リスク要因まで反映されると、中国系資金の離脱が加速する可能性もあるというのが大方の分析だ。

 特に、株式に比べて比較的に安全な資産とされる債券市場で、中国系資金の離脱が本格化した場合、その影響ははるかに大きくなる。国債など、主要債権の金利が上がり、債務水準が高い家計と企業の財務健全性が脆弱になる恐れがあるからだ。中国系資金の国内債券保有額は17兆4000億ウォン(約1兆6145億円)で、米国(18兆ウォン=1兆6717億7000万円)に続いて2番目に多い。ハイ投資証券のパク・サンヒョン・チーフエコノミストは「THAAD関連の対立が金融市場に及ぼす影響」と題した報告書で、「中国の外国為替市場の不安が続く中、中国系資金が国内市場から離脱する確実な名分がある状況で起きた地政学的リスクが、中国系資金の離脱の触媒として機能する可能性がある」と指摘した。

■緊張悪化時の信用格付けも危険

 最も懸念されている部分は、地政学的リスクがさらに高まり、国際格付け会社が韓国の国家信用格付けを引き下げることだ。国の信用格付けが下がると、中国系だけでなく、全体的な外国人資金の離脱と、これによる金融市場の混乱が避けられなくなる。まだ幸いなことにムーディーズとフィッチなどの主要格付け会社が韓国の信用格付けを調整する意向を示していないが、事態が長期化したり、突発事態が起きると、事情が変わってくる可能性もある。仁済大学のキム・インチョル教授(統一学部)は、「南北分断と北朝鮮の核実験がすでに国家信用度の評価に反映されているリスクだとすれば、開城工団の閉鎖とTHAAD配備問題は、新たに追加されるべき深刻なリスク要因」と指摘した。東国大学のコ・ユハン教授(北朝鮮学)は、「開城工業団地の閉鎖でも国内金融市場が落ち着いているのは、緊張が早いうちに取り繕わされた前例による学習効果のおかげだ。しかし、現局面の突破口がなかなか見つからないと、早期解決への期待感が崩れ、市場が大きな衝撃を受ける可能性もある」と懸念を示した。

キム・ギョンラク、イ・ジェフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-02-17 19:23

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/730829.html 訳H.J

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