議論の多い THAADの朝鮮半島配備を
対北朝鮮制裁の効果的手段に包装
開城工団中断措置の拡声器の役割ばかり
「兵器開発使用」の主張は検証せず
北朝鮮が7日に長距離ロケットを打ち上げると、韓米日3カ国は北朝鮮に対して独自の制裁を行なうことに合意した。 特に韓米両国は米国の中国牽制措置として疑われてきた「高高度防衛ミサイル(THAAD)配備協議の開始を直ちに発表し、ついに韓国政府は10日、南北経済協力の象徴である開城(ケソン)工団の稼動を全面中断した。 韓国のメディアは旧正月(2月8日)連休から神経をとがらせて関連報道を一斉に流している。
「2016総選挙報道監視連帯」は13日、「北風」(国民に北朝鮮の脅威を感じさせ危機感を持たせる動き)放送報告書を出し、「2月5日から11日まで地上波3社を含めた8放送局の最近の北朝鮮関連報道姿勢を点検したところ、客観的状況分析より、漠然と朝鮮半島の緊張状況ばかりを浮彫りにすることに汲々としている」と批判した。 批判と監視は失踪し、政府の強硬一辺倒の政策を一方的に「中継」してばかりいるというわけだ。
北朝鮮が長距離ロケットを打ち上げた7日に韓米両国がTHAAD配備協議を始めると、地上波3社は「北朝鮮の挑発でTHAAD配備論議が始まった」としてTHAADを対北制裁の核心手段であるかのように報道する姿勢を見せた。MBC(文化放送)は7日、「韓国軍はTHAADが配備されても北に対してのみ運用すると明らかにした」、「射程距離3000キロくらいの北朝鮮のスカッド、ノドン、ムスダンミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルを迎撃することができる」と報道した。KBS(韓国放送)は8日、「THAADは北朝鮮にだけ核兵器があって韓国には核兵器がないという核戦力不均衡状態を逆転させることのできる会心のカード」と伝えた。
しかしTHAADは射程距離5000キロを超える大陸間弾道ミサイルなど長距離ミサイルを迎撃するための防衛システムで、北朝鮮だけでなく中国とロシアを全般的に牽制するための米国の軍事戦略と関係が深い。費用と効用性などについてもさまざまな疑問が提起されている。しかしながら、こうした部分に焦点を合わせた報道は見当たらなかった。
政府の開城工団中断措置についても地上波3社は、「開城工団に流入した資金が核兵器と長距離ミサイルの高度化に使われた」という政府の主張を事実と断定するように報道した。KBSは11日、「これまで開城工団を通じて(南から北に)支給された現金は6160億ウォン(約600億円)だが、北朝鮮が核とミサイル開発にかけた額が3兆ウォンほどなので、約5分の1に当たる。北朝鮮の勤労者に支払う給与が金正恩(キムジョンウン)の統治資金を管理する労働党39号室に流入するものと言われている」と報じた。MBCは14日、「北朝鮮の年間外貨収入規模はおよそ40億~50億ドルとされているが、大部分が開城工団の資金のように労働党書記室に上納されるか或いは…」 などと報じた。
一方、開城工団閉鎖に関し、北朝鮮を圧迫する実効性は足りず、逆に南側にもっと大きな悪影響を及ぼす「自害的措置」になるという批判が起きているが、地上波ではこれを「野党の反発」程度にのみ扱った。SBSだけが10日、「北朝鮮全体の対外貿易で開城工団収入の占める比重は微々たるものであるから、当面北朝鮮経済に及ぼす打撃は大きくないだろう」という展望を出しただけである。
この他にも、8日、北朝鮮警備艇が北方境界線を侵犯し、韓国軍の警告射撃を受けて帰った事件について、KBSがコンピューターグラフィックまで使って戦闘場面を描くなど、とりわけ緊張感を浮彫りにする報道をして「過度に国民の不安感を刺激した」という批判も出された。
総選挙報道監視連帯は報告書で「政府を牽制して均衡ある情報を提供しなければならない放送が、むしろ戦争を仮定して対決態勢を促す水準にまで出るなど、いわゆる『北風煽り』の音頭をとっている」と指摘した。
韓国語原文入力: 2016-02-15 19:51