朴槿恵(パククネ)政権が北朝鮮の核実験・ミサイル発射への対応として、相次いで発表した超強硬対応策が、朝鮮半島情勢を崖っぷちに追い込んでいる。高高度防衛ミサイル(THAAD<サード>)配備を巡る議論を始めたことが、中国、ロシアとの関係、特に韓中関係の対立を致命的に深める“自殺的な対策”なら、南北関係を陰で支えている開城(ケソン)工業団地(開城工団)の全面中断決定は、公団参加企業と協力企業を経済的没落へと追いやる“自殺的な制裁手段”といえる。
北朝鮮ミサイル開発の資金源断ち
国際社会の制裁導く目的にすぎず
経済・安保ともに南側に大きな被害
「緊張高揚…4月の総選挙用」の疑い
THAAD協議で韓中の葛藤を大きくする
政府の二つの決定は、朝鮮半島情勢と南北関係にさらなる対立を誘発する導火線に火をつけたも同然の危険極まりない選択だ。THAAD配備に向けて議論を始めたのは、北朝鮮の核実験・ミサイル発射に対する国際社会の団結した対応の鍵を握る、中国の協力を引き出すどころか、韓中の対立を煽りかねない沼に韓国政府が自ら足を踏み入れたことを意味する。開城工団の全面中断は、ますます不安定になる朝鮮半島情勢を管理する最小限の安全弁さえ自ら除去しようとする決定だ。何よりも、開城工団全面中断の決定は、1988年に盧泰愚(ノテウ)政権の南北交流協力開始以来、これまで苦労して築いてきた南北関係を「関係ゼロの時代」に戻すという点で、南北関係を30年近く後退させる措置でもある。
朴槿恵政権が開城工団の全面中断決定を通じて狙うのは、大きく分けて二つだ。第一に、開城工団の運営を通じて、北朝鮮側が得る賃金収入などが核やミサイルなど大量破壊兵器(WMD)の開発に使われないように遮断するということだ。第二に、開城工業団地全面中断という「身を削る決断」(統一部当局者)を通じて、国際社会の対北朝鮮制裁を主導しようということだ。
しかし、政府のこのような論理とアプローチは、北朝鮮の1〜3回目の核実験とミサイル発射に伴う国連安全保障理事会の再三の対北朝鮮制裁決議にも、「開城工業団地は、大量破壊兵器の開発と無関係な正常な経済協力事業」としながら、開城工団を制裁対象から排除してきた政府の論理を自ら覆すもので、大きな波紋を呼ぶものとみられる。
開城工団の全面中断が対北朝鮮制裁の手段になれるのかも、議論の対象になっている。開城工業団地の累積生産額が32億(3兆56億ウォン=約2935億2000万円)ドルだが、賃金収入など、北朝鮮側への累積現金流入額は5億6000万ドル(6160億ウォン=約601億4000万円、ホン・ヨンピョ統一部長官)程度だ。単純に比較しただけでも、4〜5対1の割合で韓国側への打撃のほうが大きい。仁済大学のキム・ヨンチョル教授は「開城工団の全面中断は、対北制裁手段ではなく、公団に参加している韓国側の124社と約5000社の協力企業の生計手段を断ち切る自殺的な手段」だと評価する。
安保的側面から見ても、平和に反する選択という指摘が多い。元高官は、「李明博(イミョンバク)・朴槿恵政権の時期に南北の間で断続的交戦など、軍事的衝突があったが、開城工団がある西部戦線では、何の衝突もなかった」とし「開城工団は西部戦線を緩衝地帯にした平和事業でもある」と述べた。
朴槿恵政権のTHAAD配備に向けた議論の開始と開城工団全面中断の決定は、朴大統領が「民生再生のための立法を促す千万人署名運動」にまで参加し、強調してきた「経済再生」にも反するとの声もあがっている。THAAD配備に向けた議論が韓国にとって最大の貿易国である中国との対立を煽っており、開城工団全面中断の決定が行き場のない工団参加企業と協力企業の生計基盤を崩す措置という点で、そういえるという指摘だ。朝鮮半島平和フォーラムのチョン・セヒョン常任代表(元統一部長官)は、「朴槿恵大統領が、北朝鮮の反発を誘導し、南北間の緊張を高めることで保守勢力の結集を狙う、4月の総選挙に向けた対策」と批判した。
韓国語原文入力: 2016-02-10 19:24