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[寄稿]弱者の北朝鮮を強者の韓国が怖れる必要はない

登録:2015-11-16 01:57 修正:2016-03-26 15:49

 恐れは弱者の印となる。1945年8月28日、毛沢東は国民党の首都だった重慶を訪ねた。大長征を経て延安に入り以来10年ぶりの外出。毛を乗せた飛行機には、中国駐在米国大使のパトリック・ハーレーが乗っていた。飛行機の撃墜を恐れていた共産党がハーレーの同乗を求めたからだ。毛沢東と蒋介石による初の国共党首会談で、恐れは共産党のものだった。以降、蒋介石の国民党は腐敗と無能で自滅したが、当時毛沢東は宴会で「蒋介石総統万歳」を叫んだ。

 70年が経った昨年11月7日、習近平主席と馬英九総統が会った。2回目の国共党首会談であり、分断以来、初めての首脳会談でもある。習主席と馬総統の握手は、国民党政権が発足してから8年間、眩いほどに変化した両岸関係を反映している。ただし、この場面はドラマの始まりではなく、終わりだ。これからは歴史の舞台から国民党が退場する番だ。来年1月の総統選挙では、民進党が勝利を収めることになるだろう。21世紀の国共合作は「事実上の統一」を成し遂げたが、光によって生まれた影に気づいていない。あまりにも早く近づきすぎたことで芽生えた台湾の人々の恐れという影を。

 力があれば交流と協力を主張する。しかし力がなければ、近づくことが怖くなる。台湾は国内総生産(GDP)の40%を中国に依存しており、全体の輸出に占める中国の割合も40%を超えた。中国が咳をすると、当然、台湾はインフルエンザにかかる。最近、台湾の輸出が減り成長率が下落したのは、中国の景気が後退したからだ。もちろん他の選択肢はない。民進党政権になっても中国への依存構造は変わらない。

 台湾独立の主張が増えたわけでもない。まだ多くは統一でも独立でもない、現状維持を好む。ただし、両岸関係のスピードに対する恐れが民進党支持につながった。確かに両岸協力の成果は不公平だ。ほとんどの製造業が中国本土に移転したことで、若者の失業も増加した。昨年、台湾の大学生は1カ月近く議会を占拠し、中国とのサービス協定締結に反対すると共に、両岸関係のスピードを落とすことを求めた。ひまわり革命は台湾の政治地形を変えた。お金で愛は買えなかった。国共合作は弱者の恐れを想定していなかった。

 両岸関係が私たちに示唆するのはそう単純なものではない。統一のプロセスは、私たちが考えているよりもはるかに複雑だ。ただし、恐れを成す主体が入れ替わった朝鮮半島の現実は異常だ。明らかに政治と経済、あるいは軍事と外交のすべての面を考えても、弱者は北朝鮮なのに、関係の変化を恐れているのは、むしろ韓国の方だ。強者が交流の扉を開き、弱者が閉めようとするのが国際社会の常識なのに、南北関係では逆だ。経済交流だけではない。価値でも理念でも思想でも、力のある人の印となるのは自信なのに、むしろ恐れている。

キム・ヨンチョル仁済大学統一学部教授//ハンギョレ新聞社

 再び国内政治で「北朝鮮に対する恐れ」が復活している。大統領の「統一に備えた思想の確立」という発言や、ある国会議員のいう「赤化統一に対する備え」の背景には、単に国定教科書を作ろうとする政治的な戦術だけではなく、北朝鮮に対する恐怖が横たわっている。繰り返される“従北”攻勢も、裏を返せば「大衆の北朝鮮に対する恐怖」を刺激することだ。一方では、北朝鮮崩壊論を信じながらも、他方では、北朝鮮を恐れている精神状態は、正常な人が到底理解できるようなものではない。民主化以降の民主主義を否定する人たちには、その期間中に開いた南北間の力の差が見えていない。切ない時代錯誤だ。

 古い理念の井戸から出てきて、青い大空を眺めてみてほしい。国際社会の視線も意識しなければならない。強者なのに、なぜ弱者のようにドアを閉めようとするのか?南北関係の現在地を確認して自信を持ってほしい。力があるのに、なぜ恐れるのか。北朝鮮を恐れる必要はない。民主主義は、はるかに強い。

キム・ヨンチョル仁済大学統一学部教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-11-15 18:48

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/717496.html 訳H.J

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