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[寄稿]でたらめな次期韓国型戦闘機事業の決定(下)

登録:2015-11-07 11:56 修正:2015-11-07 11:59
10月19日、国会国防委員会でハン・ミング国防部長官(左)とチャン・ミョンジン防事庁長(右)が出席し議員の質問に答えている=イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

防衛事業庁と国防科学研究所が
大統領に報告した「韓国型戦闘機」
米国からの技術移転失敗が
国科研のビジネスチャンスに
防事庁長は朴大統領と大学同期生
戦闘機は雑に作れるものでない
1千個の複眼「電子式レーダー」など
部品開発とシステム総合が難関
米国でも20年前後かかるのに
雲をもつかむような計画

■ 目標を逸脱した怪物戦闘機

 外国の事例を見れば、米国のノースロップ・グラマンの場合、F-35戦闘機に装着する電子式レーダーのTRモジュール開発に2年、試験用試製品開発に8年、試験飛行7年、初飛行に2年など、実際の航空機装着にまで19年が必要とされた。ヨーロッパのセレックス社の場合は期間がさらに伸び、ユーロファイター戦闘機に電子式レーダーを装着するのに合計21年の開発期間が必要とされ、その開発費用も2兆~3兆ウォン(約2千~3千億円)に達する。

 ところが国科研の場合、これら世界的企業に比べ技術的レベルがはるかに劣る状況で、今後10年以内にレーダーを開発すると大言壮語する有様であり、その開発費用については規模さえ提示していない。李明博(イ・ミョンバク)政権当時の未来企画委員会の調査によれば、国科研が自主開発した技術は13.5%に過ぎず、ほとんど業者にサービスを与えて開発させる、一種の管理機構だ。韓国型兵器システムの開発で多くの不良兵器開発の汚名を着せられた国科研が、今までの在り方に対する省察と反省もなく、新たな挑戦をするといっても信じられるわけがない。もし国科研の意図通りレーダーの開発が推進されれば、既存の戦闘機開発の予算ではとうてい満たすことができず、もう一つの国策事業を追加する結果をもたらす可能性が高まる。結局、韓国型戦闘機事業は、戦闘機開発の事業なのかレーダー開発の事業なのか分からない状況に陥るほかない。このような実状を西江大学電子工学科の70年度入学生同期生が果たして正しく理解しているのか気がかりでならない。

 韓国型戦闘機の問題点はレーダーだけではない。戦闘機にさほど詳しくない人たちからさえ「今後10年以内にステルス性能と双発エンジンに加え最先端レーダーを装着した韓国型戦闘機を作る」とする政府高官の話を信じられないでいる。そんなに早く高性能戦闘機を作りだした国は地球上のどこにも存在しないためだ。世界16位の航空産業を持ち、ようやく高等訓練機を開発できた韓国が、イスラエル、日本、台湾も途中で放棄した国産戦闘機開発を今になって始めようという。米国、中国、ロシア、ヨーロッパ連合とフランスの他に、21世紀に入り戦闘機開発を推進している国はスウェーデンだ。1940年代から航空機を作ってきた歴史を持ち韓国より技術力が優秀なスウェーデンが15年かけ開発した戦闘機のグリペン(Gripen)は、単発エンジンに軽量の小型機だ。その上、多くの核心技術を海外に依存しており国産化率は50%にもならない。

 政府が構想する韓国型戦闘機は空軍の強力な要求により、当初作ろうとした単発エンジンの戦闘機でなく双発に性能が変更された。F-35のような戦闘機のエンジンは性能が優れ、あえて双発にする必要がない。そこへステルス機能まで追加されたのだが、現実には、韓国軍はステルス機能を決めるレーダー反射面積(RCS)の比率がどの程度の時をステルス機とするのか、その基準もデータもなしにステルス機能を追加させていた。さらに最先端レーダーと赤外線標的追跡装置(IRST)まで加えた、まさに豪華版高性能戦闘機だ。こうした性能の追加は、それぞれ異なる機関により、それぞれ異なった時期に個別的に成立した。戦闘機に対する戦略的な評価と判断を下せる専門家集団が構成されることもなく、強力な機関の影響により、その都度、性能が変更されてきたのだ。その結果が、ミドル級の中型戦闘機を導入するという当初目標のレベルをはるかに上回る“怪物戦闘機”だ。

■ 戦闘機は現実の空を飛ばねばならない

 防事庁は無分別な性能変更に対する統制力を発揮できないまま、国防部と軍の顔色を伺う消極的な業務遂行で一貫した。大型事業に対して事業団さえ構成せず、防事庁の1チームだけに国策事業を担当させ、多くの事業管理責任をシステム総合業者に転嫁してきた。米国との交渉でも業者に責任を押し付け、技術移転の拒否通知という災難になんら対策も打てず直面することにもなった。さらに防事庁は、高性能戦闘機開発で国産化目標を65%に設定するさらなる欲を出した。電子式レーダー、赤外線標的追跡装置、光学映像追跡装置(EOTGT)、電波かく乱装備などの核心技術を国産化すれば、その比率はさらに高まる。しかし韓国のミドル級戦闘機にはこのような高性能は必要とされない。しかも、その超現実的な戦闘機開発に策定した予算はわずか8兆ウォン(約8400億円)。フランスのラファールやユーロファイターの開発にそれぞれ1000億ドル以上が必要とされた事実と比較しただけでも、あまりにも非現実的だ。

 このような非現実性を除去し、韓国の能力に見合った韓国型戦闘機を保有するためには、今すぐにも事業再検討の機会を設けるという認識を共有しなければならない。今回の大統領府決定の問題点は、韓国型戦闘機に対する多様な代案を検討する余地をなくしてしまったところにある。事業の困難が日々積み重ねられる状況で、無謀な目標にばかり固執するのではなく、戦闘機に要求された性能を調整して現実的な代案をすべて比較してから意志決定をしても遅くない。そうした再検討の最後の機会をなくしてしまった大統領府の決定が残念でならない。

キム・ジョンデ「ディフェンス21」編集長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-10-31 10:49

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/715323.html 訳Y.B

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