北朝鮮の10・10労働党創建70周年行事は、金正恩(キム・ジョンウン)党第1書記の執権以後に疎遠になった朝中関係復元の転換点になるものと展望される。 中国は党序列5位の劉雲山政治局常務委員を派遣し、和解の手を差し出したし、北朝鮮もこれに積極的に応じた。
金正恩第1書記は10日の閲兵式で、主席団のすぐそばに並んだ劉雲山常務委員と対話して時々笑う姿を演出するなど両国間の友好を誇示した。 前夜には金第1書記と劉常務委員が平壌(ピョンヤン)の百花園招待所で会合し、両国間の高位級対話拡大、多様な交流協力促進などに合意した。 劉常務委員はこの日「中朝の伝統的友情は先代指導者が残した貴重な財産であり、これを一層大切にして疎通と協力を強化し長期的に活発な発展を成し遂げよう」という内容が込められた習近平中国国家主席の親書を伝達した。 金第1書記は「習主席が劉常務委員を送ったことは深い友情を示したもの」とし「両国の伝統的友情を継承しよう」と応じた。
北朝鮮と中国の関係は、金正恩第1書記が執権して以来2012年の北朝鮮による相次ぐ長距離ロケット発射や翌年の第3回核実験、チャン・ソンテク処刑などを経て関係が冷え込んでいた。 北朝鮮と中国間の高位級交流も2013年5月にチェ・リョンヘ労働党書記が金第1書記の特使資格で訪中した後に事実上中断された。
朝中関係を復元する試みは北朝鮮と中国の相互の必要によるものと分析される。 中国では米国がアジア再均衡戦略を強化する中で対北朝鮮関係の悪化を放置してはならないという意見が少なくなかった。 北朝鮮も経済的支援をはじめとする中国の協力が不可欠だった。 北京のある外交消息筋は「中国としては米国が中国を経済的に牽制する環太平洋経済パートナーシップ協定(TPP)を妥結したことに対応して朝中関係の改善という対応カードを持ち出したようだ」として「今後、高位層の交流や中国の対北朝鮮支援など経済協力が再開されるものと見られる」と話した。
北朝鮮と中国とは今回も北朝鮮の核問題と関連しては異見を露出した。 劉常務委員が「朝鮮半島平和安定」、「非核化」、「対話と交渉を通した問題解決」という朝鮮半島政策3原則に言及し「6カ国協議の早期再開を願う」と話したが、金第1書記は非核化問題に特別な立場を示さなかった。 ただし、金第1書記は核威嚇などを行わないことにより中国に配慮を示した。
注目される点は、劉常務委員が「朝鮮半島平和安定」を「非核化」より先に論じたことだ。 中国は2013年2月の北朝鮮による第3回核実験以後、ほとんど例外なく「朝鮮半島非核化」を「朝鮮半島平和安定」より先に言及しており、中国が北朝鮮核問題解決を北朝鮮の体制安定より優先視しているのではないかという解釈を生んでいた。イ・ヒオク成均館大教授は「中国が北朝鮮の体制安定、協力に関して新たな信号を送っていると解釈できる余地がある」と話した。
今後の朝中首脳会談の可能性を占う見解も出ている。 ヤン・ムジン北韓大学院大教授は「北朝鮮と中国の間で相互高位級交換訪問、経済協力拡大などが行われ、血盟関係が復元されるならば自然に朝中首脳会談も議論されるのではないか」として「早ければ来年上半期にも金正恩第1書記の訪中が議論されることもありうる」と展望した。 いわゆる「非核化なき首脳会談」の可能性だ。 しかし、依然として北朝鮮の核問題が朝中首脳会談の障害物になるだろうという見解もある。 ある外交消息筋は「核問題に進展がなければ金第1書記の訪中を占うには時期尚早で、過去2年間に積もった感情のわだかまりが高位級交流の一回や二回で解消されるとも思われない」として、慎重な展望を示した。
朝中関係の復元は南北関係にも影響を及ぼすと見られる。 政府はこの間、中国をテコにして北朝鮮を圧迫する戦略を駆使してきたが、今後はそのような戦略は修正が必要になると見られる。 イ・ヒオク教授は「朝中関係の改善を前提に外交戦略を新たに立てなければならない」として「北朝鮮の変化を導き、朝鮮半島の安定に引っ張っていかなければならないという習近平主席の考えは韓国も共感できるだけに韓国政府も積極的に取り組まなければならない」と話した。