交差点で起きた自動車事故を想定してみよう。誰の過失で、どのように事故が発生したかを明らかにするのに、あまり時間はかからない。交差点のあちこちに設置された監視カメラ(CCTV)や車のブラックボックスの映像を分析したら、簡単に事故の原因を突き止めることができる。
昨年4月16日、全羅南道珍島(チンド)付近の海上で沈没したセウォル号の場合はどうだろうか。もちろん海の上に監視カメラがない。しかし、セウォル号は大型客船であるため、船の内部や船体と海の境界を向けられたカメラが設置されており、合わせて64個の画像が記録される。この映像は完全な形で残されていたら、沈没事故当時、セウォル号に何が起こったのかを把握できる。ところが、事故の原因究明に役立つ映像は残されていない。より正確に言えば、映像記録装置が復元されたら、残っているはずの映像なのに、沈没の原因を明らかにするのに役立つ決定的部分だけが抜けている。“ミステリー”といわれるのも、そのためだ。ハンギョレTVの時事探査番組である「キム・オジュンのパパイス」68回は、映像記録装置(DVR:Digital Video Recorder)の引き揚げの過程における釈然としない点に焦点を当てている。セウォル号の真実を追跡したドキュメンタリー『インテンション』を制作しているキム・ジヨン監督はパパイスに出演して、正式には事故から2カ月が過ぎた6月22日に引き揚げられたことになっているDVRが捏造された可能性を指摘した。
■なぜ決定的なシーンは映っていないのか
パパイスにレギュラー出演中のキム・ジヨン監督は、最近の放送分で監視カメラとDVRに関する疑問点を提起してきた。第一は、セウォル号が沈没する前の時間帯であるため、復元されたら、残っているはずの映像もないという点だ。
例えば、海が最もよく映っている23番チャンネルは、事故前日の15日の夜9時50分頃から録画が中断された状態で、黒い画面に「SEARCH MODE」という文字だけ出てくる。セウォル号が何の問題もなく、通常の速度で運行していたのかがわかる窺える他のチャンネルも似たような状態だ。また、珍島VTS管制映像を見ると、セウォル号の速度が朝7時02分頃、30秒間20.7ノートと0.7ノートの間を3回も行き来する、徐々にスピードが上がって下がる、船にはあり得ない記録が現れるが、これを確認できるチャンネル3つのデータも空の状態だ。それだけでなく、復元された映像は、は、監視カメラ上朝8時30分59秒(実際の時刻8時46分頃)以降には、もはや記録されていないのに、船員たちの陳述によると、その以降にも監視カメラが作動したのではないかという疑念を抱かせる部分がある。操舵手のパク・ギョンナム氏が海警救助ボートが機関室を先に向かう映像を見て不満を表したという陳述だ。
■DVRはいつ引き揚げられたのか
問題の映像は、6月22日、海軍が引き揚げた映像記録装置であるDVRを復元したものだ。しかし、引き揚げを巡っても、不確かな部分が一つや二つではない。まず、セウォル号沈没事故から4日目の4月19日、中央日報の関連記事によると、「捜査本部は監視カメラ(CCTV)画面を確保して、イ船長の容疑をすべて確認した」という部分が登場する。救助作業を進めながらも、事故の原因を究明しなければならない事故本部は、主な証拠になるかゆもしれない映像を確保するために、映像記録装置であるDVRを確保するために努力した可能性がある。
海軍がDVRを引き揚げた当日、バージ船からこれを目撃したという4・16記録団のイム・ユチョル監督はパパイス(68回)に出演して、霧が立ち込めていたにもかかわらず、犠牲者の家族が見守らない中で、引き揚げ作業が行われた点▽2カ月以上海水に浸かっていたにもかかわらず、DVRがきれいだった点▽DVRを引き揚げたとされる海軍SSU隊員の釈然としない証言と、彼の作業過程が映ったカメラに具体的なDVR引き揚げシーンが撮られていない点などについて疑惑を提起した。
韓国語原文入力: 2015-10-02 20:33